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避難所用SS投下スレ11冊目

716ルイズと無重力巫女さん ◆1.UP7LZMOo:2017/04/30(日) 22:06:04 ID:oww8q7tg

 一見すれば細長い木の棒の様に見えるソレは、ハルケギニアでは最も目にする機会が多い道具の一つ。
 ルイズを含めた魔法を使う貴族―――ひいてはメイジにとって命と名誉の次に大事であろう右腕の様な存在。
 彼女の目が可笑しくなっていなければ、少年の左手に握られている者は間違いなく―――杖であった。
 そして、それをいつの間にか手にしていた少年の顔には、自分たちに対する明確な゙やる気゙が見て取れる。
 正にその表情は、街中であったとしてもお前たちを魔法で゙どうにかしでやると決意がハッキリと見て取れた。

 レイム!マリサ!…デルフ!最初に気が付いたルイズが、二人と一本へ叫ぶと同時に、少年は呪文を唱えながら杖を振り上げ―――
「ちょっとアンタ、後ろでグチグチうるさ―――――…ッ!?」
『うぉ…マジかよ、ソイツの手を離せレイム!』
 彼の手を握っていた霊夢がその顔にハッキリとした驚愕の表情を浮かべ、デルフの叫びと共に手を放してその場から飛び上がる。
 まるで彼女の周りに重力と言う概念がないくらいに簡単に飛び上がった所を見て、ようやく魔理沙も少年が握る杖に気が付く。
「うわわ…!マジかよ!」
 今にでも振り下ろさんとしているソレを見て霊夢の様な回避は間に合わないと判断し、慌てて後ろへと下がる。
 振り下ろされた時にどれ程の被害が出るかは分からなかったが、しないよりはマシだと判断したのである。
 二人と一本が、時間にして一瞬で回避行動に移ったところでルイズも慌ててその場に伏せると同時に、

「『エア・ハンマー』!」
 天高く振り上げた杖を振り下ろすと同時に、少年の周囲を囲むようにして空気の槌が暴れ回った。
 威力はそれ程でもないが、地面や壁どころか何もない空間で乱舞する空気の塊は凶暴以外の何ものでもない。
「きゃ…っ!ちょ、ちょっと何しているの、やめなさい!」
「ったく!相手がメイジだなんて、聞いてないぜ!?」
 少し離れて場面に伏せていたルイズは頭上を掠っていく空気の塊に小さな悲鳴を上げつつ、当たる事がないようにと祈っている。
 対する魔理沙は場所が大通り以上に狭い故に綺麗に避ける事ができず、吹き荒れる風に頭の帽子を吹き飛ばされそうになっていた。
 多少不格好ではあったものの、帽子の両端を手で押さえながらも彼女はギリギリのところで『エア・ハンマー』を避けている。

 一方で、デルフと共に上へと逃げ場を求めた霊夢は既にルイズたちのいる路地を見下ろせる建物の屋根に避難していた。
 デルフの警告もあってか一足先に五メイル程上の安全圏まで退避した彼女の右手には御幣、そして左手には鞘に収まったデルフが握られている。
「全く、泣き落としが効かないと感じたら即座に実力行使…ガキのクセに根性据わってるじゃないの」
『まぁ追い詰められた人間ほど厄介なものは無いって聞くしな』
 土埃をまき散らし、空気の槌が暴れ回る路地を見下ろしながらも霊夢はため息交じりにそう言った。
 これからどう動くのかは決めていたし、あの小僧が土煙漂う中でどこにいるのかも分かっている。
『……言っておくが、子供相手に斬りかかるんじゃねぇぞ?』
「安心しなさい。相手が化け物ならともかく、人間ならちゃんと気絶だけで済ませるわ。ただ…」
 骨の一本や二本は覚悟してもらうけどね?そう言って霊夢は、タッ…と屋根の上から飛び降りた。
 狙うは勿論、今現在出鱈目に魔法を連発している少年である。
 自分から働こうとした盗みを咎められたうえで逆上し、こんな事を仕出かすのなら少しお仕置きしてやる必要があった。
 いくら人通りのない場所とはいえすぐ近くには通りを行き交う人々がいる、下手をすればそんな人たちにも危害が及ぶ。
 そうなる前に霊夢が責任もってあの子供を黙らせることにしたのだ、一応は彼を捕まえた当人として。


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