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避難所用SS投下スレ11冊目

711ルイズと無重力巫女さん ◆1.UP7LZMOo:2017/04/30(日) 21:56:03 ID:oww8q7tg
「―――…ッ!見つけたわよ、そこの盗人!!」

 揺るぎない意思を抱いた彼が改めて決意した時、後ろの頭上から゙アイヅの怒鳴り声が聞こえてきた。
 突然の怒鳴り声に少年を含めた周りの者たちは足を止めて、何だ何だと頭上を見上げている。
 吃驚して思わず足を止めてしまった少年は口の中に溜まっていた唾を飲み込み、意を決して振り返った。


「さっさと観念して、私たちのお金を返しなさい…この盗人が!」
 振り返ると同時に、袋の持ち主であっだアイヅ―――――博麗霊夢が上空から少年を指さしてそう叫ぶ。
 黒帽子に白いブラウス、そして黒のロングスカートという出で立ちで宙に浮く彼女の姿は、何ともシュールなものであった。



 一体何が起こったのか?それを知るには今からおおよそ、三十分程の前の出来事まで遡る必要があった。
 事の発端を起こしたとも言うべき霊夢がニヤニヤと笑う魔理沙と気まずそうなルイズを伴って、とある飲食店から出てきた所だった。  
 いつもの巫女服とは違う姿の彼女はその両手に金貨をこんもりと入れた袋を持ったまま、カウンターで嘆く店主に向かって別れの挨拶を述べた。
「じゃ、二千六百二十五エキュー。しっかり貰っていくからね?」
「に…二度と来るんじゃねェ!それ持って何処へなりとでも行きやがれ…この悪魔ッ!」
 余裕癪癪な霊夢の態度に店の主は悔し涙を流して、ついでに拳を振り上げながら怒鳴り返す。
 その様子を店内で見守っている客たちは、霊夢と同じ賭博場にいた者達やそうでない者達も関わらず、皆呆然としている。
 無理もない。何せいきなりやってきた見ず知らずの少女が、ルーレットでとんでもない大当たりを引いてしまったのだから。


 当初は彼女に辺りを引かせてしまったシューターが慌てて店主を呼び、ご容赦願えないかと霊夢と交渉したのである。
 何せ二千六百エキュー以上ともなるとかなりの大金であり、この店の二か月分の売り上げが丸ごと彼女に手に渡ってしまうのだ。
 ここは上手いこと妥協してもらい、二千…とはいかなくともせめて五百までで許してくれないかと頭を下げたのである。
「お、お客様…何卒ご容赦願いまして…ここはせめて五百エキューで勘弁して貰えないでしょうか?」
「二千六百二十五。――…それ以下は絶対に無いし、逆に言えばそこまでで許してあげるからさっさと換金してきなさい」
「れ…レイム。いくら何でもそれは欲張り過ぎの様な…」
「無駄無駄。賭博で勝った霊夢相手に交渉なんて、骨折り損で終わるだけだぜ?」
 しかし霊夢は絶対に首を縦に振る事はせず、交渉は平行線となって三十分近くも続いた。
 いきなりの大金獲得という現実に認識が遅れていたルイズも流石に店主に同情し、魔理沙もまた彼に憐れみを抱いていた。
 事実霊夢は店の人間が出す妥協案を聞くだけ聞いて無視しており、考えている素振りすら見せていない。

 店側は、何とかゴネにゴネて追い出す事も出来たが…そうなると客の信用を失うことになる。
 数年前から始めたルーレットギャンブルはこの店を構えている場所では唯一の賭博場であり、常連の古参客たちもいる。
 そんな彼らの前で、大当たりを引いた客を追い出してしまえば彼らも店の賭博を信じなくなるだろう、
 そうなれば人づてに今回の話が街中に知れ渡り、結果的にはこの店――ひいては今まで築き上げてきた信頼さえ失ってしまう。
 十五年前からコツコツと続けてきて、今日までの信頼を得ている店主にとっては、それは店の売り上げ金と同列の存在であった。
 しかし、今はどちらか一つを差し出さねばならないのである。二か月分の売上を目の前に少女に上げるか、風評被害を覚悟に追い出すか…?
 
 そして店主にとって、どちらが愚かな選択なのかハッキリと分かっていた。


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