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避難所用SS投下スレ11冊目

70ウルトラ5番目の使い魔 22話  ◆213pT8BiCc:2014/08/11(月) 01:25:35 ID:WGhDb4EY
 第22話
 必殺必中! 暁の矢
 
 岩石怪獣 ゴルゴス 登場!
 
 
「おめでたい子たちね。逃げたあなたがいずれ残ったふたりを取り戻しにやってくるのは明白。そちらの片足さんは少しは手こずりそうだったから、ずっと前から罠を張って待たせてもらっていたわ。おもしろいくらいにかかってくれたわね」
「きゅいいい、卑怯なのね。それに、あんたがバカ王様と組んでおねえさまを苦しめていたのね。ぜったいに、ゆるさないのね!」
「落ち着け、カッカしたら奴の思う壺だぞ。まあ、どうせ罠があるとは思っていた。さて、これだけ分が悪い戦いはキメラドラゴン以来だな。矢玉の数が足りればいいが」
 
 ジルとシルフィードは今、最大のピンチに立たされていた。
 キュルケとタバサの母を助け出すために潜入したヴェルサルテイル宮殿の奥深く、異様なまでにたやすく潜り込めたと思ったが、やはりそれは甘かった。
 牢獄には警備のガーゴイルがいるはずなのに、脱出のときにあれだけ苦労させられた奴らはまるで見えなかった。そして、牢獄にたどり着けたと思ったとき。
「赤いの! 助けに来てやったのね!」
「バカ! これは罠よ。早く引き返しなさい!」
「そんなことは当に見当がついているよ。ご丁寧に牢の前に鍵がぶらさげてあれば馬鹿でも疑う。とはいえ、ほかに方法もなかったようなのでね……ほら、来たぞ」
 ジルが牢の鍵を開けた瞬間、轟音が鳴って牢獄自体が崩れ落ちた。一同は、ドラゴンの姿に戻ったシルフィードの影に隠れて降り注いでくる瓦礫から身を守り、レンガ作りの貴人用の牢獄は積み木の建物のようにバラバラになった。
 空が見える。牢獄が崩れた粉塵が収まり、シルフィードの影から這い出たジルとキュルケはそう思った。タバサの母も、眠ったままで毛布にくるまれて無事である。
 しかし、無事であったことに、『今のところは』というただし書きをつける必要があることを一同は思っていた。
「囲まれてるな」
 ジルは、やっぱりなというふうにつぶやいた。隣ではキュルケが、まったくもう、とばかりにため息をついている。
 状況はまさに、一瞬にして最悪に陥っていた。たった今まで牢獄だった瓦礫の周りを、無数のガーゴイル兵が取り囲んでいる。数は見たところ、適当に見積もって三十体以上。どいつもこいつも剣や槍、長弓や斧などぶっそうな装備を身につけていた。
 それだけではない。ガーゴイル兵たちのすきまを埋めるように、狼の形をしたガーゴイルが凶暴なうなり声をあげて、鋭い牙をむき出しにしてこちらを睨んでいた。その数はこちらも三十体ほど、逃げる隙間などどこにもありはしない。
 そして、包囲陣を強いているガーゴイルたちのなかで一体だけ空を飛んでこちらを見下ろしているコウモリ型のガーゴイルから、あざける女の声が響いてきたのである。
「ウフフ、アハハ、ようこそ韻竜のお嬢さん。待っていたわよ」
 その声を聞いた瞬間にシルフィードの背中に悪寒が走った。この声の主は、シルフィードにとってジョゼフとイザベラに次いで憎むべき相手である。
 怒りの念がシルフィードの心にふつふつと湧いてくる。こいつらだけは許すことはできない。
 そして、この場に及んでジルとキュルケも腹をくくった。見え透いた罠だったが、どのみち遅かれ早かれこうならざるを得なかったのだ。
 シェフィールドの勝ち誇ったあざけりにシルフィードとジルが買い言葉を返し、続いて初対面となるジルとキュルケが視線を合わせた。
「ふぅん、シャルロットから話は聞いていたけど、あんたがあの子の友達か、なるほど……ふぅむ」
「なにあなた? 勝手に人の顔をジロジロ見て、失礼じゃありません?」
「いいや、感心しているのさ。これだけ長く閉じ込められて、なお狩人の目をしているのはなかなか根性あるね。これはあんたの杖だろ? ご丁寧に隣の部屋においてあったよ」
「それはありがとうございます。あの女、完全にわたしたちを舐めているわね。希望を持たせた上でなぶり殺しにしようという腹でしょうが、ふっ、ふふふ……このキュルケ・アウグスタ・フォン・ツェルプストーをバカにするとどうなるか、思い知らせてあげようじゃない!」
「ふっ、いい目だね。私はジル、しがない猟師さ。まあ、狩る獲物は少々ゲテモノが多いが、今回は格別だな。シャルロットはこんな奴らと戦わされてきたのか……いいね、あの子の怒りと悲しみ、私にも伝わってきたよ」
 キュルケとジルは背中合わせにして陣を組んだ。ふたりとも、出会ってまだ数分であるが、相手が信頼に足る人間だと感じていた。ジルはキュルケの熱い言葉にタバサが誇らしげに語っていた話と一致させ、キュルケはジルがタバサの本名をなんの抵抗もなく呼んだことで、ふたりのあいだに並々ならぬ信頼があるのだと読み取っていたのだ。


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