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避難所用SS投下スレ11冊目

7ソーサリー・ゼロ第四部-16:2014/02/25(火) 23:58:12 ID:Vx4DmjgA
三五九
 
 君はキュルケに向かって杖を投げるが、十本以上はあるため、ほとんどはからからと音を立てて床に落ちる。
 自分の杖を探せと叫ぶと、キュルケは戸惑いながらもすぐに従い、床にばらまかれた杖を次々と手にとって調べ出す。
 扉を向こう側から押す力はすさまじいものであり、すぐに君は弾き飛ばされ、尻餅をつく。
 戸口をくぐって、ガークの巨体が姿を現す。
 怪物は咆哮を上げると、手にした斧を振り上げ──ぱっと炎に包まれる!
 振り返ると、自分の杖を目の前に掲げたキュルケが立っている。
 笑顔を浮かべ、悠然としているように見えるが、その眼には激しい怒りの炎が燃えている。
 二人めのガークは、恐怖の表情を浮かべる。
 凶暴で怖いもの知らずの種族だが、仲間を松明のように燃やす≪火≫の魔法の威力と、キュルケの纏うただならぬ威圧感を前にして、
おじけづいたのだ。
 ガークはきびすを返して拷問部屋に戻ろうとするが、キュルケがそれを許さない。
「逃げられると思って?」
 一抱えほどもある巨大な炎の玉が飛び、怪物の背中に命中する。
 ガークの絶叫が通路にこだまするが、やがて静かになる。
 キュルケの魔法は、いつもより強力なように見える──非道な敵に対する怒りが、術の威力を増しているのだろう。
「敵はまだいるの? これだけじゃ物足りないわ」
 君はあと一人いるはずだと答え、黒焦げになったガークの死体をまたいで扉に近づき、拷問部屋を覗き込む。
 拷問頭の鬼は姿を消している。
 反対側の扉が大きく開け放たれており、そこから逃げ出したようだ。
 まずいことになった、と君は考える。
 鬼は衛兵らに、君たちが脱獄したことを報せるはずだ。
 すぐに大勢の敵が押し寄せてくるに違いない!
 とにかく急いでこの場を離れようと、キュルケを伴って廊下を進む。
 
 君は歩きながら、キュルケに手早く状況を伝える。
 ルイズとティファニアは敵に捕まり、どこか別の場所で取調べを受けているはずだ。
 キュルケと一緒に拷問にかけようとしなかったということは、敵はルイズの存在の重要性──≪虚無≫──に気づいているのだろうか?
 タバサがどこに捕まっているかは判らぬままであり、君は武器や所持品の大半を失っている。
 また、自分たちがどれだけのあいだ眠っていたかもわからず、ロンディニウム塔の外で敵に戦いを挑んだウェールズ皇太子たちの安否もつかめない。
「判っているのは、状況がきわめて危険だってことだけね」
 キュルケが肩をすくめる。
「でも、絶望的ってわけじゃないわ」
 そう言うと足を止め、君の眼をじっと見つめる。
「あなたがいるんだもの。強くて頼もしい、ルイズの≪使い魔≫さんが」
 輝くような笑顔を見せ、ふたたび歩き出す。二七二へ。


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