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避難所用SS投下スレ11冊目

691ウルトラ5番目の使い魔 57話 (4/19) ◆213pT8BiCc:2017/04/13(木) 14:41:03 ID:esn0CqG6
「いやあぁぁぁっ! ブリミルーっ!」
 顔の間近まで迫ったグモンガにサーシャの絶叫が響き渡る。だが、そのとき突如突風が吹いてグモンガたちを吹き飛ばし、さらに巨大な影が射したと思うと、大きな手がサーシャを掴んでつるを引きちぎり、大空高くへと運び去っていったのだ。
 死地から一気に大空へと運ばれたサーシャは、冷たい風に身を任せながら、自分を手のひらの上に優しく乗せている巨大な青い鳥の姿を呆然と見上げていた。それは、才人やタバサも見知っている、あの優しく勇敢な大鳥の怪獣。
「リドリアス……」
 現代と過去で同時にその名が呼ばれた。何度となく世界を守るために共に戦った、今では戦友とも呼ぶべき怪獣。
 リドリアスはしばらく飛ぶと、安全な場所にサーシャを優しく下ろし、サーシャはリドリアスを見上げて、笑顔で声をかけた。
「ありがとう、助けてくれて」
 リドリアスは礼を言われたことに照れるかのように、のどを鳴らして穏やかな鳴き声を返した。それにサーシャも笑い返す。この時代のサーシャも、リドリアスのことは知っていたのだ。
 なりは大きいが、リドリアスはこれでも渡り鳥の一種であり、この星でも以前は普通に見られた存在だった。だがマギ族の起こした騒乱で数を減らし、今ではほとんど見られなくなっていたが。
「あなたも、厳しい世界の中で生き残っていたのね。こんな世界でも、ずっと」
 サーシャは、生き残っていたのが自分たちだけではなかったことに胸を熱くした。ところが、サーシャはリドリアスが片足をかばっているような仕草をしているのに気がつき、彼が傷を負っているのを見つけた。
「あなた、怪我してるじゃないの。待ってて、わたしが治してあげるから」
 リドリアスに駆け寄ると、サーシャはリドリアスの片足の傷に手をかざして呪文を唱えた。この者の体を流れる水よ、という文句に続いて魔法の光が輝き、リドリアスの負傷を癒していく。
「あなたも、いろんなところでつらい思いをしたのね。けど、まだ希望は残ってる。この世界はまだ、死に絶えちゃいない。そうでしょう……?」
 それはリドリアスに問いかけたのか、それともここにいないブリミルに問いかけたのか。あるいはその両方だったのか。
 リドリアスの傷を癒したサーシャは、ほかの怪獣が気がつく前に遠くに逃げなさいとうながした。しかしリドリアスはサーシャから離れる様子を見せなかった。
「わたしを守ってくれるっていうの? まったく、どっかの蛮人よりよっぽどナイト様ね。わかったわ、いっしょに行きましょう」
 そう答えると、リドリアスはうれしそうに鳴き、サーシャに顔を摺り寄せてきた。サーシャはリドリアスのくちばしの先をなでながら、優しくつぶやいた。
「そっか、あなたもひとりで心細かったのね」
 かつて、群れで飛ぶ姿も見られたリドリアスも、今ではこの一匹になってしまった。仲間もなく、凶暴な怪獣たちが跋扈する中で生きていくのはさぞつらかっただろう。
 けれど、もうひとりじゃない。これからは仲間だ、誰かがいっしょにいれば寂しくはない。


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