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避難所用SS投下スレ11冊目

684ルイズと無重力巫女さん ◆1.UP7LZMOo:2017/04/01(土) 00:48:09 ID:Meqm5SJY
 目が覚めた時にはあの女はおろか、自分がどこにいるのかも分からず…思い出そうにもその記憶そのものが抜け落ちている始末。
 暫し傍にあった大木に背を預けて思い出そうとしても、単に頭を痛めるだけで何の進展も無かった。
 そして彼女にはそれが恐ろしかった。呆気なく自分の頭から記憶が抜け落ちて行ってしまったという事実が。
 自分ではどうしようもできない゙不可視の力゙が自分の記憶を操っている――――そんな恐ろしい考えすら思い浮かべていたのである。

 その後はほんの少しの間、自分でもどうすれば良いのか分からない日々を過ごした。
 森を捜索していた兵士たちの話から、カトレアを含めタルブ村の人たちが何処へ避難したかを知った時も真っ先に行こうとは思わなかった。
 自分の頭から忘れてはいけない事が抜け落ちた事にショックし続けて、まるでを座して死を待つ野生動物の様に彼女は森の中で休んでいたのである。
 けれども、それから暫くして落ち着いてきたころにカトレアやニナ達の事が気になってきて、ようやく避難先の町へ行くことができた。
 最初はただ様子だけを遠くから見るだけと決めていたのに、結局彼女を頼ってしまい今の様な状況に至ってしまっている。
 カトレアは屋敷の傍で起こった騒ぎの事は知らなかったようで、ハクレイ自身もまだその事を―――その時の事を忘れたのも含め――話す覚悟は無かった。
 はぐらかす様子を見て離したくないと察してくれたのだろうか、出会った時以来カトレアもタルブでの事を話さなくなった。
 ニナはしつこく何があったのだと話をせがんでくるが、カトレアやその従者たちがうまいことごまかしてくれる。
 

「…けれども、いつかは話さないと駄目…なのかしらね?」
 水面に映る自分の顔を見つめながらもハクレイが一人呟いた時、ふとこんな状況に似つかわしくない音が鳴った。
 ―――……ぐぅ〜!きゅるるるぅ〜
 思わず脱力してしまいそうな間抜けな音が耳に入った直後、ハクレイは軽く驚きつつも自分のお腹へと視線を向ける。
 アレは明らかに腹から鳴る音だと理解していた為、まさか自分のお腹から…?と思ったのだ。
 恥かしさからかその顔を若干赤くさせつつも自分のお腹を確認したハクレイであったが、音を出した張本人は彼女ではなかったらしい。
「あ…あぅう〜…」
「ん?………女の子?」
 今度は背後から幼く情けない声が聞こえ、後ろへと振り返ってみると…そこには一人の女の子がいた。
 年はニナより三つか四つ上といったところか、茶色いおさげを揺らしながらじっと佇んでいる。
 まだ幼さがほんの少し残っている顔はじっとハクレイを見上げながらも、翡翠色の瞳を丸くしていた。
 服は白いブラウスに地味なロングスカートで、マントを身に着けていないからこの近所に住んでいる子供なのだろうか?
 そんな疑問を抱きつつ、自分を凝視して動かない少女を不思議に思いながらもハクレイはそっと声を掛けた。
「どうしたの?私がそんなに珍しいのかしら?」
「え…!あの…その…」
 見知らぬ、そして見たことない格好をした大人突然声を掛けられて驚いたのだろうか、
 女の子はビクッと身を竦ませつつも、何を話したら良いのか悩んでいると…再びあの音が聞こえてきた、女の子のお腹から。
 ―――――ぐぅ〜…!
 先ほどと比べて大分可愛らしくなったその音に女の子はハクレイの前で顔を赤面させると、彼女へ背を向ける。
 てっきり自分の腹の虫化と思っていたハクレイはその顔に微かな笑みを浮かばせると、もう一度女の子へ話しかけてみた。

「貴女?もしかしお腹が空いてるの?」
 彼女の質問に対し女の子は無言であったものの…十秒ほど経ってからコクリと一回だけ、小さく頷いて見せた。
 首を縦に振ったのを確認した後、彼女は女の子の身なりが少し汚れているのに気が付く。
 ブラウスやスカートは土や泥といった汚れが少し目立ち、茶色い髪も心なしか油っ気が多い気がする。
 ここに来るまで見た子供たちは平民であったが、この女の子の様に目で分かる汚れていなかった。


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