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避難所用SS投下スレ11冊目

664ルイズと無重力巫女さん ◆1.UP7LZMOo:2017/04/01(土) 00:07:08 ID:Meqm5SJY
 世の中、自分が決めた物事や予定通りに事が進むことは早々無い。
 スケジュール帳に書いている数十個もの予定を全てこなせる確率は、予定の数が多い程困難になっていく。
 特に旅行や帰郷のような現地に行くまで詳細が分からない様な行事なら、急な予定変更など頻繁に起こってしまう。
 単に都合が合わなかっただけなのか、はたまた始祖ブリミルがうっかり昼寝でもしていただけなのか…。
 とにかく、運が悪ければほぼすべての予定が駄目になることもあるし、その逆もある。 

 そして、カトレアを探すために霊夢達を連れて故郷へ帰ろうとしていたルイズは、急な用事でその帰郷を取りやめている。
 折角チャーターした馬車もキャンセルし、わざわざ確保してくれた駅舎の人たちに頭を下げつつ彼女は不満を垂れる仲間たちを連れて駅舎を後にした。
 町を後にしようとした彼女たちの足を止めたのは、アンリエッタ直筆の証拠である花押が押された一通の手紙。
 だがその手紙が、今のルイズにとってむしろプラスの方向へと働いた事を、二人と一本は知らなかった。
 
「一体全体どういう事なんだルイズ、何で今になって帰郷をとりやめたんだよ?」
 ブルドンネ街の熱気に中てられ、頭にかぶっている帽子を顔を扇ぐ魔理沙はいかにも文句があると言いたげな顔で前を歩くルイズに質問する。
 彼女たちは今、駅舎で預かってもらっていた荷物を全て持っている状態で、それぞれ旅行かばんを片手に大通りから少し離れた場所へと来ていた。
 ルイズはまだ片手に空きがあるものの、魔理沙は右手に箒を持っており、霊夢は背中に喧しいデルフを担いでいる。
 駅舎を出てからは空気を呼んでか黙ってくれているが、そうでなくとも何処かで休まなければ暑さでバテしまうだろう。
 思っていた以上にキツイトリスタニアの夏を肌で感じつつ、霊夢もまた黙って歩くルイズへと声を掛けた。
「っていうか、あの貴族は何だったのよ?何か私達が見てないうちに消えてたりしたけど…」
「それは私も知らない。ただ、姫さまがよこした使いの者だって事ぐらいしか分からないわ」
 霊夢からの質問にはすぐにそう答えたルイズは、自分に帰郷を中止させた手紙を渡したあの青年貴族の事を思い出す。

 いざラ・ヴァリエールへ…という気持ちで一番ステーションへと入ってすぐに、声を掛けてきた年上の彼。
 軽い雰囲気でこちらに接してきて、アンリエッタからの手紙を渡してきたと思ったら…いつの間にか姿を消していた。
 王宮の関係者なのはまず間違いないであろうが、魔法衛士隊や騎士とは思えなかった。
 まるで家に巣食うネズミの様に突然現れ、やれ大変だと騒ぐ頃には穴の中へと隠れて息を潜めてしまう。
 礼を言う前に消えた彼の素早い身のこなしは、素直に賞賛するすべきなのか…それとも怪しむべきなのか。
 そんな事を考えつつも、ルイズは手紙の最後に書かれていたカトレアの行方についての報告を思い出す。
 あの手紙の最後の数行に書かれていた報告文には、この街には既にいないと思っていた大切な家族の一員の事が書かれていた。
 もしもあの手紙が渡されずに、一足先にラ・ヴァリエールへと帰っていたら…当分会えることは無かったのかもしれない。
(この手紙に書かれている事が本当ならば、ちぃ姉様は今どこに…?)
 未だ再開できぬ姉に思いを馳せつつ、ルイズは大通りの反対側にある路地の日陰部分でその足を止めた。
 
 大通りとは違い燦々と街を照りつける太陽の光は、ここと大通りの間に建っている建物に阻まれている。
 そこで住んでいる者たちは悲惨であろうが、そのおかげで王都にはここのような日陰場がいくつも存在してた。
「ここで一旦休みましょう。後…ついでに色々と教えたい事があるから」
「そうか。じゃあ遠慮なく…ふぅ〜」
 ルイズからの許しを得て、手に持っていた箒と旅行鞄を置いた魔理沙は目の前の壁に背を任せる。
 ほんの少し、ひんやりとした壁の冷たさが汗ばむ魔理沙の服とショーツを通り抜けて、肌へと伝わっていく。
 それが彼女の口から落ち着いたため息を出させ、同時に暑さで参りかけていた心に余裕を作っている。
 一方の霊夢も背中のデルフを壁に立てかけ、左手に持っていた鞄を放るようにして地面を置くと、同じく鞄を置いたルイズへと詰め寄った。


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