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避難所用SS投下スレ11冊目

66ウルトラ5番目の使い魔 21話 (11/11) ◆213pT8BiCc:2014/06/25(水) 02:42:57 ID:kt/u.sO.
 イザベラの考えはシルフィードにはわからない。しかし、大切なことは、念願であった王宮への侵入方法が手に入ったということである。
「あいつ、本当におねえさまを助けるつもりなのかね……?」
 わからない……シルフィードの知っているイザベラは残忍酷薄で、タバサの不幸を知っても笑いこそすれ助けようなんて
絶対にしなかったはずだ。
 それでも、立ち止まることは許されない。今の自分たちには、あえて虎穴に飛び込むしか道はないのだから。
 
 イザベラの地図を頼りに、ふたりは下水道から迷路のように地下道を歩き、とうとう宮殿の真下に位置する終点にたどり着いた。
「ここだ、上がるぞ」
 暗い通路の行き止まりに、古びた鉄のはしごが十数メートルの高さにまで伸びている。その上はふたになっているようで、
人一人分くらいのすきまから地上の光がわずかに漏れてきている。
 ジルがまず、さびだらけのはしごを昇り始めた。それに続いて、シルフィードも昇り始める。
「うう、汚いはしごなのね。シルフィはきれい好きなのに」
「文句を言うな。シャルロットはきっと今頃、もっと大変な戦いをしているんだぞ」
「そ、そうね! おねえさまのためなら、ばっちいのくらいなんてことないの!」
 シルフィードは甘えてなんかられないと自分を叱りつけた。だがそれにしても、ジルはするすると猿のようにはしごを昇っていく。
とても片足が義足だとは思えない身軽さに、さすがはおねえさまのおねえさまだと信頼を深くした。
「出るぞ、これから先は私がいいと言うまでは一言もしゃべるな」
 天井のふたに手をかけてジルは言った。シルフィードは慌てて手で口を抑えようとして、はしごから手を外しかけてまた慌てて戻した。
 抜け穴のふた、多分外からはマンホールのようになっているのであろうそれを、ジルは力を込めて持ち上げた。
 パラパラと砂が降ってくる。そして、そっとすきまから顔を覗かせてあたりを確認し、素早く外に飛び出すと、シルフィードに
上がってこいと合図した。
”ここは……やった! 間違いなく王宮なのね”
 そこはヴェルサルテイル宮殿西花壇の水車小屋の片隅であった。ジルが注意深くあたりをうかがっているが、どうやら回りに
衛兵はいないようであった。
「案内できるか?」
 ジルの問いに、シルフィードは自信たっぷりにうなづいた。幸いなことに、ここからキュルケとタバサの母がとらわれている
牢はさして離れていない。王宮の地形は何度も空から見てバッチリ頭に入っている!
 シルフィードは駆け出し、ジルは辺りを警戒しながら小走りで続く。よくわからないが、今王宮の中は手薄なようだ。
”おねえさま、あなたの使い魔は立派にお役に立ってみせますなの。がんばるの!”
”おかしい。宮殿の中だってのに妙に人の気配がしない。いやな予感がする……思い過ごしならいいんだが”
 ふたりは走る。キュルケとタバサの母を奪還し、帰りは抜け道を使ってリュティスの郊外まで逃れる。
 あとは頃合を見てシルフィードで一気にトリステインに飛び込む。そうしたらもうガリアは手を出せない!
 
 
 だが、ふたりの計画が成功する可能性はこの時点で限りなく低くなっていた。
「ジョゼフ様、王宮に侵入者が……おや、これはこれは。シャルロット様の使い魔の仔竜ですよ」
「ほお、おもしろい。シャルルへのみやげ話がもうひとつできそうだな。遊んでやれミューズよ、なんなら殺してもかまわんぞ」
 
 
 続く


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