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避難所用SS投下スレ11冊目

64ウルトラ5番目の使い魔 21話 (9/11) ◆213pT8BiCc:2014/06/25(水) 02:40:20 ID:kt/u.sO.
「そこの横穴を入れば、今は使われていない水道跡に出られる。そこから、王宮内部の噴水につながる水道へ出られるはずだ」
「本当に、その地図信用できるのかね? あのわがまま王女のことだから、衛士隊の宿舎のまん前に出たなんてことになったら
冗談じゃすまないのね」
「……疑うということは、安全を保つ上で必要なことだ。だが、行動を起こすには信じないと始まらないよ。あのお姫様、イザベラ様だっけ?
私はそんなに悪い子には見えなかったけどね」
 
 そう、ふたりにこの抜け道を教えてくれたのは過去何度もタバサを苦しめてきたはずのイザベラだった。
 
 もちろん、イザベラのことを好いていないシルフィードはイザベラに力を借りようなどとは考えていなかった。出会ったのは偶然で、
施しのパンを求めて立ち寄った聖堂で、たまたま隣に並んだ黒いフードを目深にかぶった女性に、ジルがなにげなく声をかけたのだが。
「もし、さっきから顔を伏せられていますが、具合でも悪いのですか?」
「……うるさいね、ほっといてくれよ」
「んなっ! なんなのね、ジルがせっかく親切で言ってあげてるってのに! ん? お前……あっ! バ、バカ王女!」
 それがイザベラだったのだ。
 もちろんその後、シルフィードの大声で騒ぎになりかけ、慌てたジルがふたりを無理矢理に連れ出してなんとか事なきを得た。
 だが、突然わけもわからずに連れ出されたイザベラはたまったものではない。
「なんなんだいお前たちは! わたしをどうしようって言うんだ。人買いか? 身代金でもとろうってのかい!」
「キンキンうるさいのねバカ王女! おねえさまにこれまで散々ひどいことしておいて、ここで会ったが百年目なのね」
「おねえさま? 誰のことだい? わたしはあんたなんか知らないよ」
「タバサおねえさまのことなのね! あんたの悪行、わたしがきっちり思い知らせてあげるの」
「タバサ? そう、お前たちシャルロットの知り合いってことかい」
 それでシルフィードがイザベラと乱闘になりかけたのを、ジルがおさえたのは言うまでもない。
 しかし何故こんな街中に王女のイザベラが? ジルも、無能王の娘の悪い評判はしばしば耳にしていたが、実際に目にするのは
初めてというよりも信じられないのが大きい。そのため事情を納得するまでには少々時間がかかったが、要約するとイザベラの身が
危険になってきたということであった。
「こないだの両用艦隊の反乱くらい知ってるだろ。あれで、王権への信頼が一気になくなったのさ。それで、カステルモールの
奴が言うには、一部の貴族たちの中でとうとう王の暗殺まで持ち上がってるらしい。当然、王の娘のわたしも安全じゃないから、
プチ・トロワから逃げ出してきたわけさ」
 吐き捨てるようにイザベラは言った。普通に考えたら、王宮の中にいたほうが安全と思われるが、イザベラはそれを捨てていた。
今の王宮に、いざとなったときイザベラを本気で守ろうとする兵士がどれだけいるか? イザベラは少なくとも、兵士は主君に
無条件の忠誠と奉仕をおこなう人形ではないということを、今は知っていたのだ。
 権力あってこそ、人は人にかしづく。イザベラの横暴は、その権力を失ったときへの恐怖の反動でもあったかもしれない。
「わたしは嫌われ者で、家臣たちは本音ではシャルロットを好いていることくらい理解してるさ。カステルモールのやつくらいかね、
わたしの味方なのは……ま、そいつも各地の小反乱を抑えに出て行って、もう、宮殿でわたしの安全なとこはないのさ」
「あんたの父親、ジョゼフ王に守ってもらおうとは思わなかったのかい?」


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