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避難所用SS投下スレ11冊目

62ウルトラ5番目の使い魔 21話 (7/11) ◆213pT8BiCc:2014/06/25(水) 02:38:08 ID:kt/u.sO.
 人間の街というものはよく燃えるものだ、と、ジョゼフは妙な感心をした。あの炎の下では、何十か何百かの人間が悲鳴を
あげてのたうっているはずだが、そんなものは数十リーグのかなたまでは届かない。もっとも、届いたとしてもジョゼフは
うるさいという感想以外は抱かないであろうことだけは確かといえるが。
 そうそう、うるさいといえば大臣の一人が血相を変えて飛び込んできたが、ジョゼフは適当に手のひらを振って追い返した。
わめいていた内容は聞かずともわかるので一字たりとも耳孔の通過を許可していない。
 そうこうしているうちにシェフィールドが新しいワインを用意してやってきて、ジョゼフは乾いていた喉をうるおすと、再び燃えている
街に目をやった。
「見てみろ、我がリュティスの街が稚児のたわむれに使う積み木のようだ。いやはや、なかなかの破壊力であるな。しかし、
なんとも醜い姿ではないか。あれがこの世でもっとも尊く美々しい教皇陛下の僕だとは、まったく世も末じゃないか」
「なかなかの破壊力でありますね。ですが、あれほどの数の怪獣をどこから呼び出してきたのでしょう?」
 シェフィールドの疑問は案外すぐに解決することになった。暴れる三匹の怪獣を食い止めようと、やっと出動してきた
竜騎士隊の姿が認められたとき、空を覆っている黒雲から数千、数万匹の虫の群れが舞い降りてきたかと思うと、それが
合体して同じ怪獣になってしまったのだ。その数二匹、合計して五匹。
「なるほど、あの雲は太陽をさえぎる以外にも使えるのか。おお、さっそく意気込んで出て行った竜騎士どもが蹴散らされているぞ。
簡単に作り出せる割にはなかなか強力な怪獣じゃないか」
「ですね。チャリジャが残していった、我々の残りの手駒の中で、あれより強力なものはありますが、もしも空を覆いつくしている
虫をすべて怪獣に変えられるのなら、話になりませんね」
「戦はなにをおいてもまず数であるからな。無尽蔵の数を相手に勝てるものはおらん。ははあ、なるほど、教皇め。ここで
圧倒的な力を誇示して、余に逆らうだけ無駄だと間接的におどしをかけるつもりだな。念の入ったことだが愚かだな、余は
進んでお前たちの暴挙に協力してやろうと言うのに」
 ジョゼフは呆れたようにつぶやいた。今言ったことは嘘ではない……世界を滅亡させるなどという、歴史上のいかなる王も
嗜んだことのない遊戯が目の前に転がっているというのに、ここで台無しにするのはもったいないではないか。廃墟に転がる
何万という屍を眺めて、無限の後悔を得られるか否かを試すまで、裏切る必要などないではないか。
「さて、街にもいい塩梅に火が回ってきたし、竜騎士どもも適当な数が落ちたな。そろそろ頃合かな、ミューズよ?」
「はい、今なら市民と軍の両方の視線を釘付けにできます。これ以上は、観客を減らす一方になるかと。ジョゼフさま」
「では行くか、主演俳優という柄でもないが、たまには自分の体を動かすのも悪くない」
 ジョゼフは背伸びをしながら立ち上がると、愛用の杖を持って歩き出した。その先には、シェフィールドが飛行用のガーゴイルを
用意して待っている。
 シナリオは確認するが簡単だ。暴れる怪獣をエクスプロージョンで吹き飛ばす、待機しているロマリアの手のものが伝説の虚無の
力だと騒ぎ立てる、英雄が誕生する。以上で終わりで、田舎劇場の三流脚本家でも書ける単純極まりない筋書きである。もっとも、
愚民を騙すにはこの程度の三文芝居で十分であろう。
 今頃はジュリオが手を回して、ジョゼフの登場するのを今か今かと待っているに違いない。お膳立てはすべて整った。
「シャルルよ、見ているか? 無能王と呼ばれているお前の兄は今日から英雄王だ。お前は王子だったころ、将来はガリアの
歴史に残る賢王になるとうたわれていたが、俺は英雄だ、英雄だぞ。どうだ、俺はすごいだろう? いくらお前でも、英雄には
なれなかったろう。だがまあ心配するな、いずれ世界の人間どもをみんなお前のところに家来として送ってやるから、そうしたら
お前は天国でハルケギニア大王でも名乗るがいい」


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