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避難所用SS投下スレ11冊目

61ウルトラ5番目の使い魔 21話 (6/11) ◆213pT8BiCc:2014/06/25(水) 02:36:47 ID:kt/u.sO.
「は……」
「これまでどおり余に仕えよ。そして、余よりも長生きしろ」
「は、えっ……?」
 シェフィールドは意味がわからなかった。ジョゼフの言葉を何度反芻しても理解できず、思わず呆けた顔になってしまう。
 するとジョゼフは、くっくといたずらを成功させた子供のように笑った。
「神の頭脳の異名のお前も意外と頭が固いものだな。簡単なことだ。余がこれからなにをどうするにせよ、勝とうが負けようが
余はあと一年も生きてはいまい。しかし、その果てに余がどんな形で最期を迎えるかは問題だ。世界最悪の大罪人として
後悔と絶望の中で死ぬのか、それともほかのなにかか……興味は尽きぬが、どんな形になるにせよ、それを見届ける役が
必要だ。お前は余の死に目に立ち会って、余がどんなふうに死んでいくのかを余に教えろ。そして、いずれあの世とやらで
まとめて聞かせろ……そのために、一分、一秒でも長く余より生きて見届けるのだ。どうだ? お前にしか頼めないことだ」
「はい……はい、ジョゼフ様」
 シェフィールドは涙声になっていた。失敗を重ねて、自己の存在価値をすらなくしかけていたのに、それどころか主人の
残りの人生にすべてを捧げろと言ってもらえたのだ。
「これに勝る光栄はありません。ジョゼフ様」
 
 と、そのときであった。彼らのいるグラン・トロワの床が揺れ、次いで街の方向に火の手が上がるのが見えた。
 
「ジョゼフ様、あれを」
「ほう、なるほど仕事の早いことだ。奴らめ、本格的にガリアを道具にするつもりらしいな」
 ジョゼフはあざけるように言った。
「怪獣だ」
 街では、巨大な一つ目を持つ甲虫のような怪獣が暴れていた。片腕が鎌になっており、それで建物を破壊し、さらに家々を
踏み潰しながら、またたくまに街の一角を火の海に染めている。
 しかも一匹だけではない。同じ姿をした怪獣がさらに二匹、計三匹で街を蹂躙していた。
「ロマリアの連中のしわざでしょうか?」
「ほかに誰がいる? 教皇め、確かに協力するとは言ったが気の早いことだ。せっかくの酒がこぼれてしまったわ」
 他人事のように、迷惑げにジョゼフはつぶやいた。
 空気を震わせて、およそ数十リーグはあるかなたから怪獣の暴れる振動が伝わってきてジョゼフとシェフィールドの顔をしびれさせる。
 ガラス窓が震え、テーブルの上に置いてあったワイングラスが床に落ちて赤い水溜りを作っていた。このワインは、産地がオークに
襲撃されて全滅したために、今ではもう手に入らない逸品ものの最後だったのに、もったいないことだ。
「代わりを持て」
 つまらなさそうにジョゼフは命じた。すぐさまシェフィールドが走るのを横目で見て、ジョゼフはテラスの手すりに大柄な体を寄りかからせた。
 眺める先では、三匹のグロテスクな容貌を持つ怪獣が彼の国の街を破壊している。普通なら、自分の国が壊されていくのを
目の当たりにした王は激昂するものなのだろうが、ジョゼフの心にはなんの機微もない。


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