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避難所用SS投下スレ11冊目

60ウルトラ5番目の使い魔 21話 (5/11) ◆213pT8BiCc:2014/06/25(水) 02:35:26 ID:kt/u.sO.
「なぜで、ございますか?」
「なぜ、とは?」
「なぜ、私を生かしたのでございますか? 私はあのとき、トリステインの虚無に敗れて死ぬはずでした。あの炎の熱さ、
皮の焼けていく感覚はしっかりと覚えています。事実、私は今日まで死線をさまよっていました。ジョゼフさまのご期待に
応えることができなかった負け犬の私めに、なぜでございますか!」
 シェフィールドは一気にまくしたてた。
 事実、彼女はあの戦いの最後に、確実に死んでいたはずであった。それを救ったのは、驚くべきことにジョゼフだった。
「ふむ、なぜかと問われたら一応答えねばならんか。とりあえず、新しく覚えた魔法を使ってみたかったからかな。
始祖の円鏡が教えてくれた、『テレポート』か。いろいろ役立ちそうな魔法だ」
 そう、ジョゼフは『テレポート』を使い、焼死寸前のシェフィールドを救い出していたのだ。ただし、ルイズの使った『テレポート』と
魔法は同じであるものの、跳ぶ距離がルイズの場合は見える範囲がせいぜいだったのに対して、ジョゼフはガリアから一気に
ロマリアへとケタが違う。また、再びガリアへと瞬時に戻ったことでルイズたちに存在をまったく気取られなかったことも含めると、
ジョゼフの才覚はルイズのそれを大きく凌駕していた。
 しかし、無傷ですんだわけではない。ほんの一瞬でも灼熱地獄に身をさらしたことは、ジョゼフの身にも少なからぬ痛みを強いていた。
魔法薬で治療してはいるものの、ジョゼフの体のあちこちにはまだ水ぶくれや腫れが残っており、痛みもかなり残っているはずだ。
「ご期待に添えられないばかりか仕えるべき主人に助けられるなど、私は役立たずの能無しでございます。いかなる罰をも
お与えください」
「ううむ、そうは言ってもな。正直、罰といっても何も思いつかんのだよ。余は命じた、お前はしくじった、ただそれだけのことではないか」
「お怒りではないのですか?」
「怒る? 俺がか? そういえば三年ほど、怒った覚えがないなあ。もっとも、怒れるほど余が感情豊かであれたら、世界を
灰にしようなどとは思うまいが」
 ジョゼフは自嘲げに言った。普通の人間なら持っていて当たり前なものを失ってしまい、それでも狂うことも壊れることも
できない、心に大きな虚無を抱えた人間のあがきを自分自身であざ笑う。そんな笑いだった。
「では、なぜお怪我を負ってまで私をお救いになられたのですか? 私のような非才の身、代わりを見繕われたほうが
よろしくありましょうに」
「ほほう、お前でもそこまで落ち込むことがあるのだな。うらやましい限りだ。もう一度正直に言うが、余はお前を怒ってなどおらん。
代わりをなどと言われても、次がお前より優秀である保障もないしな。なによりめんどうくさい」
 言葉を飾っている様子はなく、シェフィールドはジョゼフの言葉がすべて本音だと呑み込むしかなかった。
 要するに、自分はジョゼフにとって適当な駒であり、ゲームの上で必要であるから助けられた。一心に忠誠を尽くしても、
人格はどうでもよくて求められるのは能力のみ、それだけの価値なのだと、悲しげに目を伏せた。
 だが、ジョゼフはそんなシェフィールドの葛藤に気づく様子は見せないが、彼女に驚くことを告げた。
「だがまあ、そんなことよりも、余はお前に頼みたい仕事がある。お前にしか頼めないことだ」


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