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避難所用SS投下スレ11冊目

58ウルトラ5番目の使い魔 21話 (3/11) ◆213pT8BiCc:2014/06/25(水) 02:32:25 ID:kt/u.sO.
 ロマリアの陰謀に加担し、両用艦隊をロマリアに攻め入らせたことに後悔はない。無能王という蔑称はあくまで他人が勝手に
呼んでいるだけで、ジョゼフは自分のやることがどのような結果を招くのかを想像できない暗愚の器どころか、世界をゲーム盤に
見立てて遊ぶような悪魔的な頭脳を持っている。
「お前たちと組んだことを、余は今のところは正解だと思っている。このまま日が差さなければ作物は腐り、民は飢えで遠からず
死に絶えることになるだろう。たいした力を持っていると、褒めてやってもいい。しかし、どうにも地味で退屈だな。余としては
やはり英雄譚のように派手なほうがよい」
「できますとも、陛下にご承認いただければ、血沸き肉踊る最高の活劇が幕開くでしょう。どうです? エルフを相手に世界の
覇権を争ってみるつもりはありませんか」
「うわっはっはっはは! 馬鹿め、最初から誰にも勝たすつもりもないくせによく言うわ。お前たちに比べたら、余は公明正大な
善君だとよくわかる。だがまあいい、余と対局できる相手も耐えて久しい。勝ち目のないゲームで世界を道連れにするのも
また一興かもしれん」
「では、陛下」
「うむ、ガリア王国はロマリアの要請に応じて聖戦に全力で参戦する。ふはは、日ごろ始祖への信仰を口やかましく唱える
貴族どもは教皇様の勅命には逆らえん。自分で言い出したお題目どおりに死地に赴けるなら本望だろう」
 ジョゼフは何十万人という命を奪う決定をしたというのに、まるで夜店でくじを当てた子供のようにうれしそうにわらった。
あの日、ロマリアで起きた天使の奇跡と聖戦の開始はガリアにもすでに届いていた。だが、大臣たちが二の足を踏んでいる
うちに、ジョゼフは何のためらいもなく決めてしまったのだ。
 こうなってしまったら、聖戦に反対する者は異端者として罰せられる。ジュリオは満足というふうに、うやうやしく頭を垂れた。
「ご英断に感謝します。陛下のように理解あるお方がおられたことは我々にとってたいへんな幸福です。もうあと短いことと
思いますが、今後ともよろしくお願いいたします」
「なに、お前たちには借りがある。始祖の円鏡か、なかなか使えそうなおもちゃよな」
 そう言うとジョゼフはテーブルの上に目をやった。そこには、乱雑に詰まれた書類に混じって古ぼけた小さな鏡が置いてあった。
だが、一見すると町の古道具屋にでも行けば二束三文で手に入りそうなこの鏡こそ、始祖の祈祷書と同じ始祖の四つの秘宝の
ひとつであり、ロマリアに伝わっているものであった。
「それはお譲りします。わたくしどもにはすでに不要なものですが、陛下のお役になら立てるでしょう」
「フ、お前たちには虚無の力などは、大衆をその気にさせる奇跡だけ演出できればいいのだからな。だが、余がこれでさらなる
強力な虚無を身につけて、お前たちをもつぶしにかかったらどうする?」
 教皇たちは、ジョゼフが虚無の担い手であることをかなり前から知っていた。別に見せびらかしてきたつもりはないが、
何百年も前から虚無を研究してきたロマリアのこと、虚無の系統は始祖の血統から現れるという伝承を頼りに、その可能性の
ある人間をマークし続けていたのだろう。


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