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避難所用SS投下スレ11冊目

533暗の使い魔 ◆q32nIpOrVY:2017/02/11(土) 22:56:16 ID:Z7JqIaTI
ニューカッスル最後の宴、その喧噪はどこまでも響き渡った。
それは敵の貴族派の陣営にも。
突き出た岬のニューカッスルを見下ろすように、その艦船は上空を浮遊していた。
大きさは、王軍のイーグル号のゆうに二倍はあろう。
要塞と見まごうほどの巨体のその船は、貴族派艦隊旗艦レキシントン号。
彼らが初めて、反乱を成功させた町の名だ。
この戦争も、この船の反乱から始まったのだ。
そんな貴族派にとって、最も重要ともいえるこの船に乗るのは、艦隊提督、そして。
「耳を澄ませたまえ。あの熱に」
静かで、落ち着いた声色が、傍らの影に語り掛ける。
二つの人影が、甲板で気流に晒されながら、岬の城を見つめていた。
「幾度か出会った光景ではあるが、卿はあれに何か感じるかね?」
宴の喧噪について、声がもう一方の影に語り掛ける。しかし返答はない。
もう一方、細身の影はただじっと黙して佇むのみ。その手に、身の丈ほどの得物を握りながら。
「なんだ。卿も言葉を失くしていたのか。残念だ」
声の主は、ややつまらなそうに呟く。
が、やがて吹き荒れる甲板が飽きたか、風が肌障りか、踵を返して歩き出す。
「私は一足先に戻るよ。卿は、そうだな……精々懸命に動き給え」
声の主は、静かに船内へと消えていった。
残された細身の影は、静かに甲板の縁へと立つ。
ゆっくり目的の城を見下ろし、そして天を仰ぐ。
夜も更け、輝く星空でも見えるかと思ったが、どうにも雲行きは悪いようだ。
分厚い雲が空を、星を、月を覆おうとしていた。
「闇夜か。有難い」
年若い声が、するりと甲板から落ちていった。
眼下に広がる居城では、いまだに賑やかな喧噪が鳴り響いている。
ニューカッスルの、長い長い夜が始まろうとしていた。






以上で投下完了です。
ありがとうございました。


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