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避難所用SS投下スレ11冊目

45SERVANT'S CREED 0 ―Lost sequence― ◆5QiruB7YUM:2014/06/25(水) 00:03:48 ID:dZuBnIhQ
 エツィオがそういうと、マザリーニは頷いた。

「そうそう、使い魔の方でしたな、ええと……」
「フィレンツェのエツィオ・アウディトーレ。以後お見知りおきを」
「どうぞよしなに。しかし人が使い魔とは、ずいぶんと珍しいこともあったものですな」
「おかげで毎日が刺激的ですよ、とくに彼女と過ごしているとね」
「結構なことです、しかし先ほど、フィレンツェの……とおっしゃっておりましたが、申し訳ない、どうも私の知らない地名のようだ。名前の響きからしててっきりロマリアの御出身かとも思いましたがそうではないようだ」
「ええ、猊下も御存じのとおり、私は彼女に『召喚』されるという形でここに来たのです。聞き覚えもないのも無理のないこと、どうかお気になさらず」

 人懐こい笑顔を見せて答えるエツィオに、マザリーニもまた笑みを見せた。

「なるほど、そうでしたな。以前魔法学院への行幸に御同行させていただいた際、いろいろと貴殿の噂を耳にしましてな、なんでもあの『土くれ』のフーケを捕えたのは貴方だとか」
「たいしたことはしておりません、すべて主人やその友人たちの尽力のおかげです。
まあ、残念ながらフーケには逃げられてしまったようですが」
「ははは、いや、お恥ずかしい限りです」

 牢破りの実行犯が目の前にいるとはつゆ知らず、マザリーニはばつが悪そうに苦笑した。
そんな彼に、エツィオは小さく首をかしげて尋ねた。

「しかし猊下、なぜこのようなところに? 貴方ほどの人であれば謁見を待つ必要はないと思うのですが」
「なに、私も貴方と同じです。旧友に再会する故と、陛下に追い出されてしまいましてな」

 困ったように笑いながらマザリーニは肩をすくめる。それからエツィオを見つめ「とは言え……」と呟く。

「そのおかげでこうしてあなたとお話ができる、またとない機会を得ることができました」
「私と……ですか?」
「ええ、今アルビオンが最も恐れているアサシンとお話できる、素晴らしい機会です」

 瞬間、エツィオの心臓が縮み上がった。
あまりに思いがけない展開に、さすがのエツィオも動揺を隠せなかった。

「猊下、おっしゃっていることが……」

 マザリーニは手を掲げエツィオの言葉を遮った。

「ご安心召されよ、あなたをどうこうしようというわけでありませぬ、ただ話をしたい、それだけです」

 それからマザリーニは、「ちょっと失礼」と立ち上がると、サイドボードから酒瓶を取り出し、ゴブレットを二つ持ってきた。

「本来ならば執務中の飲酒は御法度なのですが……、いかがですかな? このマザリーニ、とっておきのブランデーですぞ」

 そういいながらゴブレットにブランデーを注ぎ、エツィオに差し出した。
ゴブレットを受け取りながらもどこか表情の硬いエツィオに、マザリーニは、まずはついっと飲み干した。


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