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避難所用SS投下スレ11冊目

438ウルトラ5番目の使い魔 53話 (6/14) ◆213pT8BiCc:2017/01/14(土) 21:06:29 ID:LzEFD1MA
「人間ってさ、できることよりできないことのほうが多いからこそ素晴らしいんだと僕は思う。誰かと仲良くしたいけどできないってのもそれさ。僕だって、サーシャはすぐ怒るし」
「九割方あんたが原因でしょうが」
 こつんとサーシャにこづかれて、ブリミルは照れたような表情を見せた。
「でもね、できないことがあるからこそ、できることを夢見れるし、できたときにそれを大切にできると思うんだ。今、人間と人間以外が分かれているとしても、だからこそ結ばれたときに強い絆が生まれるかもしれない。それはとてもうれしいことじゃないか」
「では、ではもう我々は、エルフとも誰とも、戦わなくてもよいのですか?」
「それは僕が決めることじゃあない。人間という種族だって善人がいれば悪人もいる。何より僕の子孫だって、君たちのような者もいればさっきの教皇のような連中だっているのは見てきただろう? 今のエルフがどういうものなのかは君たちが見て決めるんだ。それで、友とできるなら手を取り合えばいい。無理だと思うなら離れればいい。ただ、エルフと人間はそんなに遠いものじゃない。君たちは僕の子孫であると同時に、おそらくサーシャの子孫だ」
 えっ? と、ウェールズとアンリエッタだけでなく、話をじっと聞いていた人々も思った。
”自分たちが、エルフの子孫? 自分たちの中に、エルフの血が流れている?”
 すると、ブリミルとサーシャは少し恥ずかしそうに言った。
「まあ、正直に話すと、僕とサーシャはその……もう、付き合ってるんだ。実は」
「し、しょうがないじゃない。こんなマイペースで能天気な男、私が守ってあげなきゃどうなるかわかんないもの」
 それは単純に、若いカップルの姿そのものであった。
 だが考えてみれば当然のことだ。始祖ブリミルに子孫がいるということは、当たり前だが伴侶がいないといけない。ただ、それがまさかエルフだったとは、想像を絶していた。
「僕らだけじゃないさ。君らもさっき見たろ? 僕らのキャラバンでは、もう種族を超えた恋仲や夫婦はたくさんいる。遠い時間で、この時代では血が薄れてしまったかもしれないけど、種族そのものが変わりきるなんてことは早々ないよ。無理にとは言わないけど、勇気を持って手を差し伸べてみてほしい。それでダメなら別の誰かに握手を申し込めばいい。そうしてるうちに、いつか君の手を握り返してくれる誰かに巡りあえるだろう。少なくとも僕は、君たち子孫に無駄な血を流してもらいたいなんて思ってないよ」
「はい……始祖ブリミル、やはりあなたは偉大なお方です」
 感涙しているウェールズに、ブリミルは照れくさそうにするばかりだった。


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