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避難所用SS投下スレ11冊目

277ルイズと無重力巫女さん ◆1.UP7LZMOo:2016/11/30(水) 21:48:06 ID:p55OrQ4w
 ワルドは既にやる気十分な彼女を見ながら、呪文を詠唱して再度戦闘準備に取りかかった。
 訓練のおかげで口を僅かに動かす程度で詠唱できるようになった彼の杖に、風の力が渦を巻いて纏わりついていく。
 やがてその力は青白い光となって杖と同化し、光る刃を持つレイピアへとその姿を変える。
「『エア・ニードル』だ。一応教えておくが杖自体が魔法の渦の中心、先ほどのように吸い込む事はできんぞ」
 青白い光で自らのアゴヒゲを照らすワルドの言葉に、霊夢はデルフへ向けて「本当に?」質問する。
『まぁな、でも安心しなレイム。今のお前さんには『ガンダールヴ』が味方してくれている、だからお前さんの様な剣の素人でも遅れは取らんさ。……多分』
「私としては遅れをとるよりも勝ちに行きたいんだけど?…っていうか、多分って何よ多分って」
 喋れる魔剣のいい加減なフォローに呆れながらも、そんなデルフを構え直した直後―――――ー。
 
「それでは…ジャン・ジャック・フランシス・ド・ワルド、あらためワルド―――推して参るぞ」
 杖を構えたまま名乗ったワルドが、地面を蹴り飛ばして突っ込んでくると同時に霊夢もまたワルド目がけて突っ込む。
 黒と緑、紅と白の影がほぼ同時に激突する音と共にデルフの刀身と『エア・ニードル』を構成する魔力が火花を散らした。

(レイム…!)
 一方で、ワルドが気づかぬ内に目を覚ましていたルイズは二人の戦いをやや離れた所から眺める立場にいた。
 動きたくても未だにその体は言う事を聞かず、指すらくわえることもできずにどちらかの勝敗を見守る事しかできない。
(折角運よく目覚めたっていうのに、これじゃあ意味が無いじゃないの!)
 意識だけはハッキリしている歯痒さと、助けようにも助けに行けない悔しさを感じたルイズは何としてでも体を動かそうとした。
 まるで見えない腕に抑え込まれているかのような抵抗感に押しとどめられながらも、それを払いのけようと必死に体をもがかせる。
 他人が見れば滑稽に見える光景であったが、やっている本人の表情は真剣そのものかつ必死さが伝わってくる。

(動けッ!動きなさいよ…!今目の前に…ウェールズ様の、姫さまの想い人の仇がいるっていうのに…!)
 敬愛するアンリエッタに罪悪感の一つを抱かせ、その後もレコン・キスタにのうのうと所属していたであろうワルド。
 そして今はソイツに攫われた挙句に霊夢たちを誘き寄せる餌にされて、まんまと利用されてしまっている。
 今体が動くなら霊夢の手助けをしてあの男に痛い目を合わせられるというのに、ワケのわからない金縛りでそれが叶わない。
 体の奥底から、沸々と怒りが湧き上がってくる。沸き立つ熱湯が鍋から勢いよくこぼれ出すかのように。
(このまま何もできずに見てるなんて―――――冗談じゃ…ない、わよッ!!)
 積りに積もってゆく苛立ちと憤怒が彼女の力となり、それを頼りに勢いよく右腕へと力を入れた瞬間。
 杖を握ったまま金縛り状態になったその腕がガクンと震えた直後、不可視の拘束から開放された。
「…!」
 突然拘束から解放された右腕から伝わる衝撃に驚いたルイズは、思わずそちらの方へと視線を向けた。
 残りの手足と体より先に自由になった腕は、ようやっと動けた事を喜んでいるかのように小刻みに震えている。
(まさか、本当に動いたっていうの?)
 未だ半信半疑である彼女が試しに動かしてみると、主の意思に応えて腕はその通りに動く。
 腕の筋肉や骨からはビリビリとした痺れのような不快感が伝わって来るものの、動かすことの支障にはならない。
(一体、どういう事なの…?――――…!)
 先ほどの夢といい、ワルドの『スリープ・クラウド』から目が覚めた事といい、今自分の身に何が起きているのだろうか…?
 そんな疑問を頭の中で浮かばせようとするルイズであったが、動き出した右腕の゙手が握っているモノ゙を見た瞬間、その表情が変わった。


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