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避難所用SS投下スレ11冊目

183ウルトラ5番目の使い魔 29話 (7/13) ◆213pT8BiCc:2015/07/13(月) 18:26:48 ID:KxOFlp2.
「うーん、やっと終わったぁ。まったく、めんどくさかったけど、この村の人たちってバカばっかりだったから助かったなあ。けど、これでこの村は私のものだね」
「え、エルザちゃん? あなた、なにを言ってるの?」
「んー? ああ、アリスおねえちゃんはまだわからないの。みんなが探してる吸血鬼はね、この私、エルザなんだよ。ほぉら、ね?」
 突然、人質の中から立ち上がり、鋭い牙を見せ付けて吸血鬼の正体を明かしたのは、村長の家で養女として育てられていたエルザであった。
 エルザは二年ほど前に、両親を亡くして放浪していたところを村長に拾われたという少女だった。よその人間を村に入れることに対しても、たった五歳くらいの幼女であるし、若くして子や連れ合いを亡くして家族のいない村長に気を使って、村人たちも気にかけず、最近は体が弱いそうなので家の中だけではあるが村の子供たちとも遊ぶようになり、大人たちもそんな彼女を可愛がるようになってきていた。そのエルザが吸血鬼だったのだ。
 本性を現したエルザは屍人鬼たちを操り、女たちを村長の屋敷に閉じ込めた。屋敷の周りは常に屍人鬼たちが見張り、逃げ出すことはできない。そして、ときおり女たちのなかからひとりずつ連れ出されていき、二度と戻ってくることはなかった。
 逐殺場の豚のように、檻の中で飼われて吸血鬼に食われるのを待つだけかと誰もが絶望していた。
 ところがである。あるときふと、村長の屋敷の壁の一部に痛んで穴が空くようになっているところが見つかり、見張りの屍人鬼も少なくなっているのが見受けられた。
 今なら逃げ出せる。しかし、壁の穴は小さくて子供しか潜れないし、屍人鬼の目をごまかして逃げ隠れするのも大人では無理だ。穴を潜り抜けられて、かつ遠くまで走れるだけの体力を持っているのは、子供たちの中でもアリスしかいなかった。
「アリスちゃん、ふもとの町まで行って、お役人さんにサビエラ村が吸血鬼に襲われたって知らせるの。そうしたら、きっと王国の軍隊が来てくれるわ。ごめんなさい、つらいだろうけど、あなたしか頼れる人がいないの。がんばれる?」
「うん、みんな待ってて。わたし、がんばってみる。だから、待っててね」
 こうしてアリスはひとりで村を抜け出し、助けを呼ぶためにひたすら走ってきた。しかし、途中で追いかけてきたアレキサンドルの屍人鬼に捕まって、そこへ一行が駆けつけてきたというのがこれまでのいきさつであった。
 
「お願い、助けて、助けてください、わたし、もう……うわぁぁぁっ」
 そこまでを話したところで、アリスはもう耐えられないとばかりにまた泣き出してしまった。
 無理もない。たった十二歳の少女が体験するにしては過酷過ぎる。ここまで話してくれただけでたいしたものだ。アリスはミシェルの腕に抱かれて泣き、一行の心に怒りの炎が灯る。とにかくこれで、敵の正体がわかった。
「なるほどつまり、そのエルザって吸血鬼が黒幕なわけだな。だが、五歳くらいの子供が吸血鬼なんて」
「吸血鬼の寿命は亜人の中でもかなり長い。見た目が子供でも、人間の年齢では老人くらいに歳を重ねていることなどざらだ。覚えておけ」
「なるほど、見た目が子供なら人間は油断しますしね。それにしてもひどいことを、まるで悪魔のような奴だ」
 ギムリが憤慨したようにつぶやき、水精霊騎士隊の仲間たちも同感だというふうにうなづいた。
 だが、感情に逸る少年たちとは反対に、銃士隊の仲間たちは納得できないというふうに考え込んでいた。


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