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死者たちが集ってよもや話をするスレ

792強化外骨格「名無し」:2008/12/22(月) 23:40:42 ID:ylXpVM460
「川田君、どこ行っちゃのかな……」
 きょろきょろと辺りを見渡しながら、つかさは呟いた。
 ラノベの新刊のポスターにつられて、川田のそばを離れたのがまずかった。
 携帯を鳴らしてみるが――つながらない。
「う〜ん? トイレとか、かなぁ?」
 小首をかしげつつ、つかさは取りあえず足を止めた。
 この状況で動き回ったら、よけいにはぐれてしまいそうだ。
 ヒナギクや覚悟を呼ぶという手もあるのだが、邪魔をしては悪い気がする。
 せっかく、ヒナギクが勇気をだしたのに。
「ヒナちゃん、頑張れ!」
 小声でエールを送り、つかさはもう一度件のポスターに目をやった。
(この小説、確かお姉ちゃんが好きだったな……)
 大好きだった、どこへ行くのも一緒だったかがみ。
 次々と思い出が浮かんでくる。そして、その最期と最後の言葉も――

 小さく頭に痛みが走るのをつかさは感じた。

(アレ? えっと……)
 違和感がつかさの中で形になりかけた瞬間、
 眩しい光を浴びせられ、つかさは顔をしかめた。

「一枚お願いします!」

 声と共にまた光を浴びせられた。
(前にもあったっけ……。こんなこと)
 既視感と、そして強烈な懐かしさに囚われ、つかさは状況も忘れ、悲しげな笑みを浮かべた。
 二度あることは三度あるというが、今、目の前にいる男もなんというか、
「ザ・おたく」という感じの格好で、あの時と同じようなカメラを持っている。
 あの時。ゲームのナントカというキャラに似ているとか言われて、街で写真を何度も撮られた時。
 自分は、かがみが助けてくれるまで、震えながら顔を隠すことしかできなかった。

 でも、今は。

 笑みを消し、つかさは静かに男を見つめた。

「やめてください」

 短い言葉と静かな視線。睨むわけでも、怒鳴るわけでもない。
 けれど、その言葉と視線には、確かに「力」があった。
 気圧されるものを感じ、男はカメラを下げ、こそこそと立ち去ろうとする。
 その時、
「何やってんだ、お前?」
 極限まで圧縮された怒気が込められた声が響き、
 男は肩を誰かにつかまれたのを感じた。


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