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【遅れて来た】ここだけ魔術のある世界 置きレス進行スレ【本運用】

1セファルワイム市民:2017/06/15(木) 23:01:16 ID:awAfx0uU
前スレ
【試験】ここだけ魔術のある世界 置きレス進行スレ【運用】
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149【邪竜グォルズルグ】:2018/04/16(月) 01:27:39 ID:1UATkv8M
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
    ガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンッ!!
 
 
 
 
 
 
 
 
                                   .
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150【邪竜グォルズルグ】:2018/04/16(月) 01:27:55 ID:1UATkv8M
『な………!?』

邪竜は状況の理解に時間を要した!
突如として金属砲弾が襲来し、自身に直撃した上で激しい爆発を起こしたからだ!

邪竜は攻城兵器を知っているが、あれは巨大で目立ち精度も悪いものだ。
しかし今の砲撃は遥かに小さい武器から放たれ、しかも初撃から自身への直進コースで発射されたのだ!
咄嗟に回避行動をとったことで基幹部分への被害は免れたが、それでも左翼が激しく損傷した!

『まさか……!』

邪竜とて自身に放たれる光に気づかなかったわけではない!
むしろ、コヒーレンス光などという胡乱な存在を、闇の化身たる邪竜が察知しない筈がなかった!
しかし、邪竜はそれを攻撃または攪乱の一種と判断し、黙殺した!
光を当てることで闇の存在を苦しめようという作戦だろうと内心嘲笑っていたのだ!

しかしどのような方法であるかは見当もつかないが、紛れもなく今の砲撃と光には何らかの関連性がある!

邪竜は忌々しげに天使たちを見上げる。
自身は山神を吸収しきれておらず、それほど高空には昇れない。
あの害鳥どもはまるでそれを知っているかのようではないか……!


『おのれ…!』


だが息をつく暇もなく、第二波が来る!
紅蓮の炎を黒く染め上げながら迫り来る鬼火と、あきらかに尋常のものとは異なる4本の矢!
焔は紛れもなく神の一柱によって放たれたものであり、炎によって破壊されながらもなおそれを喰らう恐るべき術!
矢はこれまでの戦闘を考えれば間違いなく奇怪な力を備えており、命中するだけで多大な悪影響があるに違いない!



邪竜は……避けない!
同じ姿勢で滞空を維持したままだ!
その全身が鬼火に包まれ、さらに両目と両腕にリディルが突き刺さった!

151【邪竜グォルズルグ】:2018/04/16(月) 01:28:10 ID:1UATkv8M


――邪竜は空中で焼かれている。
4つの矢傷から血と闇と、そして魔力が奪われてゆく……。


山頂を包んでいた闇が、徐々に縮小し始めた。
外周部は多少の明るさを取り戻している。
だが、邪竜周辺は、むしろ闇が濃密になりつつあった。


邪竜が何か言っている。
はじめはとても小さかったその声は、ゆっくりと高まっていった。
独自の拍と、律動があった。


『……wam………daag…………Z'nqoil…………』


魔術。
それも、強大な邪竜でさえ極度の精神集中を必要とし、身動きが取れなくなるほどの高度な術である。
焔と矢によって激しい被害を受けることを承知の上で、あえて大魔術の行使に踏み切ったのだ。


邪竜が行使しうる魔術についてはあらかじめ巫女から説明があり、討伐隊一行は詠唱からその効力を判断可能である。
これは邪竜の闇をさらに増強・活性化し解き放つことで、周囲の全生命体に直接的な死をもたらすものだ。
漆黒球に類似しているが、物理的性質を伴わないため傷を負うことはない。しかし盾や地形によって防ぐこともまた不可能だ。
闇への耐性によって絶命を免れても生命活動が低下し、身動きとれぬほどの疲労や失神、細胞死、臓器不全などを引き起こす。
詠唱の長さから推定すると、多少の耐性では死は免れまい。範囲も山頂全体を覆うものになるだろう。


対策として巫女は対抗魔術を編み出し、全員にこの術式を提供していた。
ごく僅かな間であるが死への抵抗力を生み、かつ使用する魔力量もそれほど多くはなく、念じながら《遮蔽》と口にするだけで即座に発動する。
しかし魔術の鍛錬を積んでいない者がこの術を行使するには、やはり極度の精神集中を必要とするため身動きが取れなくなるのだ。
魔術師であれば、技量にもよるが行動が制限されることはほとんどない。しかし精神集中が必要な行動はとれなくなるだろう。


アーチャーは布流剣で邪竜の炎を防いだが、完全には消滅させきることができず火傷を負っている。
零姫の炎を喰らう鬼火はその炎によって焼かれ、想定していたほどの火力を発揮することはできなかった。
ウルスラの勝利の楯は確かにその火力を減じたが、侵食してそれを崩壊させつつある。
おそらく闇も、対抗魔術などによって完全耐性を得ている者に対してすら、悪影響を与えるに違いない。


邪竜の負傷は浅くない。
左目の傷に加えて、あらたに左翼・右目・両腕を傷つけられ、全身は鬼火に焼かれた。
これまでのように闇で修復が進んでいるが、深すぎるためにしばらく出血は続くだろう。

しかも精神集中しているため攻撃を避けられる可能性もない。
現在きわめて無防備な状態にあると言える。あるいは、攻撃のチャンスかもしれなかった。

152【邪竜グォルズルグ】:2018/04/16(月) 01:28:25 ID:1UATkv8M
巫女は祈祷を続けている。
それは邪竜の闇を免れる自信がある証拠だが、同時に討伐隊を守る気がないということでもある。
少なくともこの場面においては、魔術や神の力で討伐隊を保護するより、たとえ死者が出たとしても祈祷を継続することが最善策であると考えているのだ。

しかし、他者の命を軽んじているわけではない。
巫女はレノをちらりと見る。

地中のエネルギーを活用するレノの魔術は、効果が薄い可能性が高かった。
何故なら山神が力を吸収されているため、大地や岩石、川といった山に属する存在の内在エネルギーが低下しているからだ。

ただし、それはあくまで総量の話である。
巫女は山全体のエネルギーを、山頂周辺に集中させるよう山神に希った。
それは巫女にとっても山神にとっても大したリソースの消費にはならなかった。祈祷の内容に若干手を加えるだけだからだ。
レノの強化魔術は、兵士たちに対して十全の効果を発揮した。



次の攻撃は、この戦いに参加しているすべての人間を襲うだろう。
山神への祈祷を行いながら、巫女は別の神々にも祈った。

153ウルスラ/ハーミア(残り5)/零姫:2018/04/16(月) 18:04:00 ID:???
>>148-152
ハーミア
「ここで切るしかないか・・・竜気・・・解放!」

八竜神クラスの強力な竜のみが纏う闘気や妖気といった気の一種・竜気。
まだ幼体であるハーミアには本来は纏うことはできない。
しかし半人半竜である特異性から一時的にその気を発動させることは可能だ。
ただし、強引に成体の能力を獲得するため膨大なカロリーを消費する。

翼は一回り大きく、より輝く銀色となり、4本だった角はより大きく育ち、さらに小さく2本が新たに生える。

ハーミア
「ドラゴン!ソードッ!」

竜気を剣にも纏わせ、飛び交う魔弾・矢の間を高速で飛びながら
邪竜の喉へと迫りその剣で横薙ぎに切り裂くつもりだ。

=============================================
零姫
「気に入らんのう。
 妾の焔に喰らわれながらも喰らい返すその火も、
 トカゲの分際で妾を見下ろすことも!」

零姫の両腕・両足が漆黒の炎に包まれていく。

零姫
「鬼蒐・鬼ヶ島・・・!」

空気中の塵や砂埃、鉄錆などが集まり・妖力でつなぎ合わされていく。
その形状は巨大な鎖鎌。
黒い鬼火により焼結され、まるで名工の作った鋼のような強靭さを得る。

零姫
「頭が高い!」

鎌を地面に突き立てると鎖分銅を邪竜の頭を目がけて放り投げる。
狙いは鬼の腕力で強引に地面に引きずり下ろすこと。
かつて宿敵と戦った時のように大鬼へと変化すれば体格差も少なく戦えると考えての行動だ。
=============================================
ウルスラ
「今なら巻き込まずに最大術式を撃てる・・・が、ここは確実に相手を始末できるように動くべきか。」
(何よりあと数秒放射時間が長ければ私の術では防ぎきれん。)

>>145-146
ウルスラ
「シロウの友人だったな。悪いがあとは自力で何とかしてくれ。
 奇襲と暗殺を生業としている私では少々荷が重い。」

後ろへ酒瓶をポイと放り投げる。
中には緑色の濁った液体と刻まれたハーブらしきものが詰まっている。

ウルスラ
「魔力回復の酒だ。グラス1杯分で平均的な魔導兵二人分の魔力回復が出来る。
 一時的に限界を超えて回復も出来るが使い慣れてなければ魔力酔いと二日酔いに苦しむだろう。
 が、私の作にしては珍しく味だけは好評だ。安心して呑め。」

一方的にそれだけ伝えるとニキータの元へと走る。

>>143
ウルスラ
(本当は私もあちらに居るべきなのだろうが・・・子守は大変だ。)

破裂音がした方向をちらりと見ながら
ハーミアと零姫を連れてきた所為で実行できない戦術にため息を吐き
ニキータの元へと高速で移動する。

ウルスラ
「狙撃手、お前が今まで撃ったことがある中で最も大きい銃はどのぐらいだ。
 ゾウ狩りか?それとも鉄塊を吹き飛ばせる程度か?もしくはそれ以上のイカレた代物も扱えるか?」

時間魔術の連続使用と走り回ったことで乱れている息を整えながら尋ねる。
手にした魔導書のページがパラパラと解けて偃月刀の周囲に巻きつくように浮遊しはじめる。

154ニキータ:2018/04/16(月) 19:01:48 ID:???
>>150
レーナ「ドカーン!と大命中!」
ヴェーラ「ヒャッフー!」
ヴェロニカ「もう一発!」
タマラ「行っちゃえ行っちゃえ!」

コマツ「装填!もたもたすんな!」
ヒラオカ「ちょっと待ってろ…」
タナカ「てー!」

第二弾を装填して発射する。

>>153
「あったた…あのバカ娘ども、事前に警告しろってんだ…」
「なんだ?姉ちゃん?それだったらシモノフだ。対戦車ライフル…」

155ウルスラ/ハーミア(残り5)/零姫:2018/04/16(月) 19:37:12 ID:???
>>152 
零姫の行動修正

>零姫
>「頭が高い!」〜

零姫
「臨界・・・・・無間地獄!妾は百鬼の終焉に立つ者なり!」

全身がそのまま漆黒の炎へと包まれ、その姿が闇の色へと変貌していく。
邪竜の本質が「死」ならばこの鬼は「永劫の恐怖」。
直接的な死をもたらす能力ではないが、
逃れることのできない感情に根差したその本質は
今の彼女を直視するだけでも心の弱い者は呼吸困難や激しい動悸を引き起こし、死に至るかもしれない。

==========================================
>>154
ウルスラ
「大口径の経験者か。ならばもう1段階上を扱ってもらう。
 時間が無いから手短に言うが、もうしばらくすればこの偃月刀がお前達の言うライフルに化ける。
 何、銃は銃だ。構造は変わらん。だから安心して死んでくれ。」

まるで砲弾のような弾を3つゴトリと地面に置き、
その横に光を放ちながら変形し始めた杖を寝かせるとニキータの前に立つ。

ウルスラ
「代わりに次に来る死は私が引き受けてやろう。
 ・・・可愛い弟からの頼みなのでな。・・・・・時間・・・鍛造・・・!」

形状は大戦斧。邪竜の次なる一撃を自分の前で時を加速させ、切り裂いて消し飛ばすつもりだ。
失敗すれば当然戦闘不能。しばらくは動くことが出来なくなるだろう。
たとえ成功してもほとんどの魔術は使えなくなるため実質は戦闘不能。

使えるのはすでに敷設しているアトラック・ナチャ。
魔導書は最大の対神兵装へと変化させ、ニキータに預けるため使用不能。
あと一つは他人の魔術への些細な干渉程度だ。

156名もなき戦士:2018/04/17(火) 12:23:44 ID:???
>>146
レノの回復力にも寄るが、しばらくすると黒く炭になった皮膚が落ち
中からつやつやのお肌が顔を覗かせることだろう。すべすべなのである。
そして巫女と加護に加え、レノからの補助魔術を受けた地方領主の勢力。
騎士たちは勇気が込み上げ、折れた心を持ち直した。
残った2割の騎士たちは、地方領主の指示により邪竜と零姫の戦いから離れ、
巫女の前まで移動してくると、各々が盾を構え巫女とレノを守るように立ったのだ。

>>151
地方領主「邪竜の無事な右翼を狙え!奴を空中から叩き落とすのだ!
     詠唱を中断させることが出来るかもしれない」

巫女とレノの補助により、弓兵は精確に右翼の翼膜を狙う。
続けざまに魔術師たちも威力の増した雷の魔弾を20人で放つ。
雷は邪竜の行動を若干阻害することが初手の攻撃で分かっていたからだ。

>>155
幸い、巫女とレノの加護により勇気が溢れた地方領主たちは、
零姫が視界に入っても行動不能に陥るものはいなかった。
それでも、十全に威圧感を感じている。
並みの補助魔術では一般的な騎士たちを守ることは出来ないであろう。

157レノ:2018/04/17(火) 19:47:12 ID:???
>>153
「……四の五の言ってられねーよなぁ。三日酔いでも四日酔いでもなんでも大歓迎だ」

そう言って、グラス一杯には満たないものの、戦闘前位にまで魔力が回復するだろう、と思われる量を飲み干す。

「………………確かに、飲み易くてすぐダメになるやつだ」

体の中が一気に熱くなるのを感じながら、酒瓶は傍に起き、すぐさま次の行動に移る為思考を集中させる。

>>152
邪竜の様子を見て、予め聞いていた対抗魔術の事がすぐに頭に浮かんだ。
邪竜の次の攻撃は、ほぼ間違い無く発動すると踏んでいる。でなければ、幾ら人間を蔑んでいるとは言え、集中放火の中あのような詠唱を行使する事は、ます有り得ない。
今までの様な苛烈な攻撃の中でも、邪竜は攻撃を成功させられる確信を得ている可能性が高い。

まずは深く念じる。アルコールが影響するかと思われたが、魔力が充実し不安が無い分、逆に集中力は高まっている。

そして、邪竜が仕掛けるその時がくれば、レノは呟くだろう。

遮蔽、と。

158アーチャー:2018/04/17(火) 21:06:32 ID:???
>>151
「――」

火傷による熱を堪え、番えた剣に魔力を篭める。
それこそ本命。周辺の空間ごと血肉を抉り斬る螺旋の剣。
多くの魔力を篭めたソレは、最初に邪竜へ見舞った時よりも強力な一撃へと昇華する。

「――“我が骨子は捩れ狂う”」

音速を優に突破した螺旋剣――カラドボルクⅡは、邪竜の心臓目掛けて放たれた。
距離間を考慮すれば、到達までの時間は僅か一瞬。すかさず一言だけ、アーチャーは言霊を紡ぐ。

「“壊れた幻想(ブロークン・ファンタズム)”」

螺旋剣、そして四本のリディル。
邪竜に直撃したであろうそれらを崩壊させ、内包する魔力を爆風の如く“炸裂”させた。
特に邪竜から魔力を奪い、両眼・両腕の内部から迸る魔力の奔流は、神域に在る邪竜の精神集中すら乱せるかもしれない。

だが、完全に大魔術の行使を止める事に期待はしていない。
望む結果としては、邪竜の魔術の完成を遅らせる事だ。
数分などと、馬鹿げた楽観は望まない。せめてもう一行動だけ、行動が取れればそれで良い。

159アーチャー:2018/04/17(火) 21:34:17 ID:???
>>151
――アーチャーとしては、このタイミングで邪竜が詠唱に踏み切った事は予想外だったと言っていい。
こちらの戦力が邪竜の想定を上回った証明だろうが、何も喜ばしい事では無い。

初めは“斬り抉る戦神の剣(フラガ・ラック)”による詠唱のキャンセルも考えた。
だがアレは、時間を逆行し“相手を仕留める”事で真価を発揮する。相手が絶命する事で、切り札の発動をキャンセルさせる為だ。

故にフラガ・ラックは使えない。
そもそも、因果律や時間に影響を及ぼす術を邪竜が持っていないとも限らず、何より邪竜の魔術が“切り札”であるかどうか判断が付かない。

邪竜の魔術行使は十中八九成立する。では考慮せねばならないのは“放たれた後”の事だ。
おそらくウルスラは時間鍛造により大魔術を“終了”させるつもりなのだろうが彼女自身、確実な手段とは考えていない筈だ。

彼女に大きな危険が及ぶ事も勿論だが、何よりアーチャーが懸念したのは。
力が及ばぬと分かっていながら、決死の覚悟で巫女達を守ろうとする“名も無き騎士たち”の事だった。

……他の者達は、邪竜の大魔術が放たれようと生存する可能性があろう。
しかし他者をかばう為に立ちはだかった彼らは、間違いなく死ぬだろう。おそらくは、無駄に命を散らす結果となる。


―――それはできない、と。既に磨耗し果てた筈の遠い記憶が、強く否定した。

160アーチャー:2018/04/17(火) 21:47:31 ID:???
>>151
「――Have withstood pain to create many weapons(彼の者は常に独り。剣の丘で勝利に酔う)
Yet, those hands will never hold anything(故に、その生涯に意味はなく、)――」

邪竜が僅かでも詠唱を遅らせた事に賭けて、詠唱を続ける。

(――保険に、なれば良いんだが)

その最中、残り少ない魔力である宝具の設計図を具現化させる。
それは邪竜が放つ魔術への対抗手段。巫女が用意したものとは異なる、担い手に“不死”の概念を宿す奇跡の剣。

(元より、既に死後の身――もう一度死を迎えたところで、支障は無いはずだが)


「So as I pray(その体は、)」


脚をへし折る勢いで、全力で邪竜へ向けて跳躍する。
直接触れようという目的ではなく、それは、邪竜を射程圏内へと収めるためのもの。


「――UNLIMITED BLADE WORKS. (きっと剣で出来ていた)」


邪竜だけを標的に、詠唱を完成させる。
それは固有結界――心象世界を具現化させ、一時とはいえ世界を捻じ曲げる大魔術。
アーチャーは己の心象世界に邪竜と、そして自分とを隔離し、邪竜の大魔術の影響から皆を救うつもりなのだ。
カラドボルクを先に見舞ったのはこの為。
邪竜の空間干渉能力を著しく落とし、仮にも固有結界の外へと影響を及ぼさないようにするが為――!!

161ニキータ:2018/04/17(火) 22:06:52 ID:???
>>155
「伏せ撃ちじゃないとさすがに撃てねえぞ…」
「俺は今からトカゲの前で無防備になる、援護を頼む。」

162アーチャー:2018/04/17(火) 23:26:37 ID:???
>>159追記修正
“彼女に大きな危険が〜”

“彼女や友人、共に戦う者達に大きな危険が〜”

163ウルスラ/ハーミア(残り5)/零姫:2018/04/18(水) 19:16:12 ID:???
>>153
行動訂正。

ハーミア
「ドラゴン!ソードッ!」〜

ハーミア
「さらに・・・遮蔽ッ!」

ドラゴンキラーには竜気を纏わせて構え、
対抗魔術に精神を集中させてその場で滞空する。

========================================
>>155
行動キャンセル。

零姫
『と、思ったが今回は『ちいむわあく』とやらのために小賢しい術も使ってやるとするかのう。』

黒い炎に包まれた零姫はこの世のものとは思えない声で『遮蔽』とつぶやく。
と同時に影の鬼と変じかけていたその姿はもとに戻る。

========================================
>>158-160
時間鍛造そのものは幾度もの人生を経験したことで使いこなせている。
ただ、それで真正面から戦ったことは無いことだけが不安だった。
それでも防戦一方になって負けることに比べれば軽いと思っていた。
ウルスラが『攻撃役』として期待しているアーチャーの詠唱を聞くまでは。

ウルスラ
「其処に至ってもまだ甘さを捨てられんのか、あの莫迦は・・・!」

形を決め始めていた『時間』が消滅する。

>>161
ウルスラ
「狙撃手、作戦変更だ。ヤツの次の一回だけは例の防御術式で防げ。
 魔力が無いのなら私の最後の一本をくれてやる!」

レノに分けたのと同じ酒瓶、ただし残量はほんの僅かの飲みかけを放り投げる。

>>156,160
ウルスラ
(言えば憎まれるだろうな・・・。)

ウルスラはフッと笑うと、騎士達へ、そしてアーチャーへ言い放つ。

ウルスラ
「生き残ることだけを考えろ!
 ここでお前達が倒れれば邪竜はそれだけ多く死をバラ撒くだろう!
 お前たちの家族に、友人に、恋人に!
 助からん奴を守って戦力を失うぐらいなら・・・」

一瞬言葉に詰まる。
歯を食いしばり、酷く冷酷な声で続ける。

ウルスラ
「・・・見殺しにしろ!それが奴を倒す最適解だ。」

それだけ告げると顔を伏せて小さな声で『遮蔽』とつぶやく。
再度時間鍛造を試みるだけのヒマはない、
何より自分自身が身を守ることを優先しなければ説得力など無いだろう。

164アーチャー:2018/04/18(水) 20:14:08 ID:???
>>160の行動内容の訂正。
. 詠唱が完成する前にウルスラの言葉を聞いて行動を止めたとする。
具体的には>>160の三行目以降は無かったことにしてほしい】

>>156 >>163
「――――」

気を取られたのか、アーチャーは詠唱を止めた。
その瞬間、彼がどのような思いを抱いたのか。それを知る由は誰にも無い。 
だが間髪入れずして、彼は騎士達へと叫ぶ。

「聞いただろう、この瞬間だけで良いから己の身を守れ!
 それが巫女も含め全員が生還する結果に繋がる! 急げ!!」

可能な限り最速で行っていた詠唱を中断した以上、固有結界による隔離を用いた対抗策は取れない。
騎士達が言葉に従うかどうかは最早託すしかない。願うしかない。
レノの支援も相まって、騎士達の反応速度は通常を大きく上回っている筈だ。ならばまだ間に合う!


>>151
「――遮断」

詠唱を保持(キープ)し、対抗魔術の発動に専念する。
カラドボルク、リディル、そしてブロークン・ファンタズムによる追撃は仕掛けたが、そこでアーチャーの攻撃の手は止んだ事になる。

165ニキータ:2018/04/18(水) 23:24:46 ID:???
>>163
「嘘だろ…」

最後の一口の酒を流し込み、十字を切る。

「ああ、そういやしばらく食ってなかったな…エアリーさんとこのアップルパイ…」

ブーストされた魔力によって防御術式を展開させる。

166名もなき戦士:2018/04/19(木) 08:38:24 ID:???
>>156の行動訂正

>>163-164
ウルスラ、そしてアーチャーの声を聴いた地方領主は、すぐさま指示を飛ばした。
弓兵と魔術師は攻撃を終えた直後に「遮蔽」と言葉を紡ぐ。
巫女とレノの前に盾を構えた騎士たちも互いに顔を見合わせ、それぞれに「遮蔽」と叫んだ。

ツカイ=キリ「ああも言われれば、まだ我々も足掻いてみせよう!遮蔽」
デバン=ココダケ「ふっ、邪竜よりもあの者たちの方が余程厳しいようだ。遮蔽!」

地方領主の勢力は、全員が巫女の術式を展開したことになる。

167【邪竜グォルズルグ】:2018/04/20(金) 23:23:39 ID:1UATkv8M
第二の迫撃砲弾が邪竜に向けて発射される。
しかし、その軌道は大きく外れ、直撃することはなかった。

詠唱を開始した時点で、邪竜周辺の闇はより濃密になっている。
これがレーザーをかき消し、誘導能力を失わせたからだ。

同時に領主麾下の弓兵たちも、対抗魔術を行うために極度の精神集中をせざるを得ず、射撃を諦めざるを得なかった。


『Unsggaqoig xoth iilthichk n'sslgoig ……』


詠唱を続ける邪竜に螺旋剣が突き刺さる!
邪竜の持つ空間干渉の能力が再び剥奪され、傷口から血が迸った。
これまでに負ったダメージの大きさと螺旋剣自体が強力なこともあり、傷と空間干渉能力の修復は緩慢だ。

更にブロークン・ファンタズムが内部から邪竜の身体を爆裂させた。
しかし、詠唱そのものが阻害されることはなかった。
邪竜は、それ自体が魔術的存在でもある。魔術を阻害するためには、相応の方法が必要だった。

そして詠唱が終わる。

168【邪竜グォルズルグ】:2018/04/20(金) 23:24:35 ID:1UATkv8M
『 Xüwigos! 』



邪竜は叫んだ。
高まっていた闇が一気に解放される。
山頂の全ての生物、物体、大地、そして天と空までもが、完全なる暗黒空間に包まれ、塗りつぶされ、光を失った。

それは死の奔流だった。
内臓、神経、筋肉、骨。全身のあらゆる器官が細胞死をはじめてゆき、活動を阻害されてゆく。
特に心臓と肺が弱まったことにより全身の血流と酸素供給が停滞し、それが更に状況を悪化させる死の悪循環を引き起こす。
脳すらも満足に働かず、酸欠も相まって精神力と思考力が低下する。
そして肉体に宿る霊魂までもが死の概念に染まり始め、生命の灯を吹き消されようとしていた。


しかし…………結果として、絶命に至る者は居なかった。
討伐隊は対抗魔術で身を固めていたことにより、その影響から幾分逃れることができたのだ。細胞死による損傷を被ったものの、戦闘続行が可能である。
特にハーミアと零姫は、自身の耐性も相まって死の影響を強く跳ね除け、激しい疲労感を覚えるだけで済んだ。


やがて、闇は勢いを減じ始める。
恐るべき暗黒はしばらく残り、若干の疲労や細胞死を与え続けるだろうが、最大の死の脅威は去ったと言える。



  .              .

169【邪竜グォルズルグ】:2018/04/20(金) 23:26:12 ID:1UATkv8M



討伐隊は、邪竜を見失ったことに気づいた。



思い出してほしい……はじめから、山頂周辺は闇に包まれていた。
何故、彼らはそれでも戦うことができたのか? それは、邪竜の存在感によるものだ。
強大極まるその存在が彼らの感覚を激しく刺激することで、その位置を掴み、攻撃できた。

しかし今、周囲には死と闇で満ちている。
邪竜の大魔術によって活性化されたそれはあまりにも濃く、邪竜そのものの気配さえ覆い隠してしまったのだ。
さらに討伐隊は脳と神経に悪影響を受けたことにより、一時的に感知能力が弱まっている。
くわえて邪竜の闇は「死」の要素に傾倒しているが、「闇」の持つ「視覚を阻害する」概念もまた備えていた。
あくまで副次的なものであるためこれまで戦闘に影響することはなかったが、大魔術で闇が激しく活性化した結果、「不可視」の要素が顕在化したのだ。

これらの要因が積み重なり、邪竜は覆い隠された。
羽ばたきの音も聞こえない……おそらく、これもなんらかの魔術によるものであろう。


巫女はこの事態を予測できておらず、したがって事前に対抗策を与えられてもいない。
あらゆる意味で、討伐隊は真の闇の中に居た。

170【邪竜グォルズルグ】:2018/04/20(金) 23:27:00 ID:1UATkv8M



――――闇の中、邪竜は急降下する。狙いはアーチャーだ。


火力が高く謎の能力を複数隠し持つアーチャーは、邪竜にとって最大脅威の一つである。
強固な装甲を持つようにも見えず、さらに彼は単独で行動していたため盾となる者も居なかった。


邪竜は機敏であり、決断もすばやく、そしてアーチャーとの距離も元々離れていない。
その闇に紛れた高速攻撃は、完全なる奇襲と言ってよかった。
しかし邪竜でさえ、これほどの傷を負った状態で全速力を出し切ることはできない。特に、電撃の魔弾によって身体を麻痺させられたことが効いていた。
ゆえにアーチャーが攻撃を受けるまでの間に、僅かな時間があった。


もし真闇の中で邪竜の動向を把握する手段があるのなら、何らかの対策を講じることができるかもしれない。
感知や感覚強化の術による索敵や、強力な光や神聖な力で闇を打ち払う、といった手段が考えられる。
後者は自分以外も見えるようになるメリットがあるが、邪竜を起源とする死に満ちた闇に正面から対抗しなければならないというデメリットもある。
いずれにしても、それは短時間で行えることでなければならない。

邪竜を見つける手段がない場合、次の一手に備えて詠唱などの準備をしておいても良いだろう。
あるいはあえて時間をかけて闇を完全に打ち払い、邪竜を完全に日の下に晒すというのも一つの手段である。

また、アーチャー自身は己が殺意を向けられていることを察知することができる。
ただしそれは漠然とした予感であり、攻撃の種類やタイミングなどについては一切不明だ。
邪竜の動向を把握できず味方からの支援もなければ、咄嗟に身を守る程度の行動しかできないだろう。(身を守れたからといて死なずに済むという保証もない)

171【邪竜グォルズルグ】:2018/04/20(金) 23:30:50 ID:1UATkv8M
邪竜は静かに考える。
今にして思えば、この奇術師の芸も中々面白いものだった。
もう少し、遊んでやっても良かったか。


しかし邪竜は一切の躊躇をせず、全力で鉤爪を振り下ろした。


 

172レノ:2018/04/23(月) 19:01:53 ID:???
>>167-171
突然視界が閉ざされた事により、多少動揺はあったが、
音に気をやると、どうやら死んだわけではないというのはわかった。しかし、邪竜に関する音は聞こえなくなり、完全に見失った。

(逃げたのか?…………いや!)

直感ではあるが、この状況は邪竜が仕掛けた
レノは周囲の地表を伝うように、
広く浅く、エネルギーの膜を張り巡らせた。

周囲の僧侶や巫女を始め、地に足を付けている者達を存在を"重さ"で感知する。

「オェ……!!」

吐血。
恐らく、邪竜の術により死は免れたものの、細胞破壊の影響はレノ自身の身体にジワジワとダメージを与えていた。
地面に落ちた血液が、エネルギーを伝ってレノの手に小さな振動として伝わる。

…………"コイツ"だ!!

レノは気付いた。
レノの他に、大量の血液を放出しながら移動する存在に。
その向かう先は、先ほどアーチャーが居た場所。

「シロウ、狙いはお前だ!!!」

血を吐きながら大声で叫び、危機を知らせる。

同時に、レノは地中のエネルギーに対し、集中力を高める。
邪竜は既に行動を始めているため、間に合わない可能性が高い。

それでもレノは、地中に含まれる鉱石をエネルギーで固め形作った"槍"を、アーチャーの頭上に迫っているとみられる邪竜に対し、射出した。

173ウルスラ/ハーミア(残り4)/零姫:2018/04/23(月) 19:29:44 ID:???
>>167-171
ハーミア
「うっ・・・!」

死の奔流に目を閉じた一瞬で至近距離に居たにも関わらずに邪竜を見失う。

ハーミア
「どのみちあと数分しかこの姿は持たないし・・・今の私だったら・・・!」

上空から地面へ向けて大きく息を吸い込んで眩く輝くブレスを吐き出す。
ダメージを与える効果は無いが、先ほどの吹雪と同様に魔術を吹き飛ばす効果はもちろん、
本来の使い手である彼女の母竜であれば意識を焼き尽くし相手を放心状態にさせることができる。
現在のハーミアは強引に成体の能力を獲得した半人半竜の身であるため、
直撃した相手を一瞬怯ませることは出来る程度だ。
半竜の肺活量でどこまでの効果があるかは分からないが、邪竜の位置を探すつもりだ。

==============================================

零姫
「ふう・・・妾を狙っているわけではなさそうじゃな。」

死の奔流を耐えきってため息をつく。
見失った邪竜の気配を探るがどうやら自分の傍には無いようだ。
恐怖を司る鬼であり他者の精神への侵入も得意とする零姫の前では
どんなに気配を遮断したとしてもその動きは察知される。
だがそもそもたった一人で鬼を含む大軍勢と戦い、
何度かそれを退けている零姫にとって重要なことは『攻撃がくるか否か』だけである。
邪竜の居る方向と、自分に対する攻撃の予兆の有無以外の情報は
能動的に探さない限りは距離感を含めてまったく察知できない。

零姫
「その隙は利用させてもらうがの。」

自分の周囲の闇を喰らい、妖力を大きく溜め始める。


==============================================

ウルスラ
「く・・・拙いな・・・!」

直接死を叩きつけられたことで筋力が低下し、神経も鈍っている。
邪竜を見失ったが、その動きを空気の流れを感じ取ることもできない。
ならばと先ほど空間へと溶け込ませたアトラック=ナチャの金糸へと意識を集中させる。
もしもそこを邪竜が通過すればその途端にその部分の捕縛結界を発動させるつもりだ。
強化するために即時発動が出来なくなったが、巨獣の突進を止める蜘蛛の巣をさらに倍の強度まで強化している。
たとえ拘束が難しかったとしてもある程度の行動の阻害にはなるだろう。

ウルスラ
(あとは邪竜が罠を踏むことを祈るしか無い、か・・・!)

>>165
その間に偃月刀が魔杖へと変化を終える。
生成された『それ』はグリップがあり、ボルトがあり、ストックがあり、たしかにライフルのようだ。

ウルスラ
「生きてるか?聞こえるか?それは対神狙撃杖(アンチデウスライフル)。
 一応衝撃吸収構造は備えてあるが、それでも私が撃った時は肩を負傷した。
 ・・・ま、プロなら見た目と銃弾のサイズでどれだけの反動が来るかは分かるだろうがな。」

そもそも貧相な素人のハーフエルフの細腕で扱うこと自体が無茶なサイズである。
鞄からもう1発弾丸を取り出してその弾頭に己の血を塗り付けながら続ける。

ウルスラ
「弾頭はポカパマズ産魔晶石。威力を抑えてあるが破砕の呪文が封じてある。
 ある程度の防御術式や装甲なら撃ち貫くことはたやすいはずだ。
 ただし元々補正用に持って来た弾丸だから使えるのはさっき渡した3発だけだ。
 狙撃手よ、お前の腕を当てにさせてもらうぞ。」

174ニキータ:2018/04/23(月) 19:48:15 ID:???
>>173
「ああおいクッソ、死ぬかと思った…一瞬母親かと思ったよ…」
ウルスラの呼びかけで意識を取り戻し、朦朧とした目でライフルを見る。
「おいおい、死ぬわ俺…」
ボルトを引いて弾丸を装填する。
「トカゲめ、こいつで終わらせてやる。」

レーナ「ひいひいふーひいひいふー…」
ヴェーラ「あ、ちょっと楽になってきた…」
ヴェロニカ「それよりなんかでそう…」
タマラ「ふむう…」

闇に飲まれた4人はとりあえず楽な姿勢で体力を回復しようとしていた。

175名もなき戦士:2018/04/24(火) 19:03:53 ID:???
>>169
領主たちはどうなっただろうか。
幸いなことに、絶命をした者はいないようではあった。
しかし、戦闘にすぐに復帰できる者もまた皆無であった。

騎士や弓兵たちは膝をつきながらも、辺りが暗闇に包まれたことに気付く。
迂闊に動き集団の行動を乱すわけにもいかず、ただそこで闇を見つめることしか出来なかった。

僧侶たちも巫女とレノの治療を一度止め、耐えきった後
またすぐに巫女とレノの治療をしようと動いたが、淡い光が一瞬放たれただけで
5人ともその場に倒れてしまった。

176アーチャー:2018/04/24(火) 22:22:45 ID:???
>>170 >>172
最大の死を凌いだ後、即座に一つの剣を投影し、能力を発動させる。
細胞死と精神・思考力低下の影響による粗末な出来ゆえ、一度の発動で剣は消滅してしまうが、役割は果たした。

剣の名は遅来矢(ちくし)。
黄金札の太刀で焼刃に八竜の形があるソレは、俵藤太秀郷が戦場に行く際、必ず帯刀していたという刀だ。

後世に伝わるその名は、やがて一つの解釈を生み出し、奇しくもその概念を宿した。
それは、担い手の“時間”の加速・減速を可能とする宝具。
邪竜にとっては“僅かな”時間を、アーチャーは“己が準備を整えられる”時間にまで引き延ばしたのだ。

――だが本来の担い手でなく、時間能力の専門家ではない彼には、周辺状況を把握した上でもう一行動が限界だ。

邪竜の姿は無く、漠然ながらも己へと向けられる殺気を感じ取る。
奴の空間干渉能力は削がれている以上、取り得る手段としては直接物理の可能性が高い事は予想できる。

消費する魔力は大きいが、死ぬよりは遥かに良いと、生前から最も使い慣れた“盾”の投影を準備する。
準備、と言うと長く聞こえるかもしれないが……アーチャーにとっての投影は例外を除き、秒に満たない間で完了するモノである。

後はタイミングだ、流石に今回ばかりは、周りの支援を期待出来そうには無い――そう思案した所で、レノの叫びを聞いた。

177アーチャー:2018/04/24(火) 22:35:14 ID:???
>>171
レノの叫びを聞くと同時に、上方へと右手を翳し、呪文を発する。
『遅来矢』の効力は切れた故に、このタイミングでの展開に全てを託すしかない!

「熾天覆う(ロー)――七つの円環(アイアス)!!」

瞬間、アーチャーを覆うように巨大な“盾”が展開された。
七枚の花弁状の障壁。一枚一枚が古の城壁と同等の防御力を持つ。
トロイア戦争の英雄アイアスの逸話が昇華して誕生した防御宝具。
本来ならば投擲攻撃に対して真価を発揮するソレは、その他の攻撃に対しても単純に強力な盾となる。

(竜種の突撃を凌ぎ切った実績はあるが……さて、どうなるか……!)

178【邪竜グォルズルグ】:2018/04/26(木) 09:42:18 ID:xf1bzWVM
「《月光》」


巫女が魔術を行使した。
天空に満月が現れ、山頂を微かに照らし出した。


アーチャーは死んでいなかった。
ロー・アイアスが展開されたタイミングは適確なものであった。
急降下の速度が加わった鉤爪の威力はあまりに高く、また破壊の概念が盾の強度を侵食し、七枚の障壁をほぼ全壊にまで追い込むに至っている。
しかし、それで終わりだった。鉤爪はアーチャーの身体に届かなかった。


明かりは乏しいものであるが、至近距離にいるアーチャーには邪竜の姿がはっきり見えた。
口に炎がある。
光を発さない、暗く黒い炎だった。闇の性質を伴っていることは明らかだ。
この火もまた、生命を直接脅かす力を持っているに違いない。

死の魔術のダメージはアーチャーの身体に重くのしかかっており、更なる被害は真の死をもたらすおそれがある。
たとえそれを凌ぎ切ったとしても、炎が全身を焼き焦がすだろう。
これまでの赤い炎に比べて火としての力は小さいようであるが、至近距離であることを考えれば十分に致命傷となりうる。


そして、邪竜は炎を放った。
空中から全員を狙った際の爆裂する炎ではなく、初手で巫女に対して放ったような収束された炎だ。
アーチャーただ一人を、確実に抹殺するためのものだった。

179【邪竜グォルズルグ】:2018/04/26(木) 09:42:47 ID:xf1bzWVM
巫女が魔術によって満月を生成したのは、彼女の独断である。
仲間たちは効果的に闇を打ち払う手段を持っていないように見え、早急な対処が必要だと判断したためだ。
祈祷を中止するのは最善の行動ではなかったかもしれないが、いずれにせよ全員が邪竜の位置を把握することが可能になった。

ただし、その照度は乏しかった。
邪竜の輪郭を捉えることはできるが、細部が見えるほどではない。
この状態では、攻撃を命中させること自体は可能でも、特定部位を狙うことは困難だ。

特にスコープで狙撃を行うニキータにとって、この光量の少なさは致命的である。
光学望遠鏡はその仕組み上、倍率を高めれば高めるほど見える像は暗くなる。これではスコープを覗いても何も見えないだろう。
更にこの闇は魔術的・概念的な闇であるため、暗視装置を用いたとしても十分な効果は表さない。

また、邪竜が炎を放つ直前の段階でレノは槍の生成を終えており、即座に射出することができる。
視界が確保されたことにより精度は上がったが、やはり特定部位を狙うことは難しい。

他の者達も含め、精密攻撃をするためにはさらなる光を手に入れるか、間近で邪竜を見るほかはない。
闇は時とともに薄れ始め、徐々に消え去ろうとしている。
時間経過を待つのも一つの手段だ。

180名もなき戦士:2018/04/26(木) 11:29:04 ID:???
>>179
巫女の力により、その強大な邪竜の輪郭が微かに浮かび上がる。
そのお蔭で領主の勢力も邪竜の位置を把握することが出来た。

ツカイ=キリ「弓兵、射れる者はやつの足元へ矢を放て」

満身創痍の中、領主が指示を飛ばす。
弓兵たちは疑問に思いながらも、そこにいるであろう邪竜の足元へ矢を放つ。
やはりうまくは飛ばないながらも、それでも邪竜付近の地面に矢が刺さる。
あるいはうまく刺さらずに転がったものもあるだろう。

ツカイ=キリ「魔術師たち、炎の魔術を邪竜の足元へ放つんだ。
       威力が高い炎でなくていい。数さえ多ければ!」

魔術師たちは領主の意図に気付き、20人掛かりで初歩的な炎の魔術を連続で放つ。
地面にあたり散る炎の中に、矢にぶつかり火種が残るものがあった。

デバン=ココダケ「あの戦士の助けに入ることは出来ないが、明かりを灯して邪竜の姿が」

小さな火種から灯りが生まれ、やがて矢から生まれた炎の光が邪竜を下から照らし出した。
これが他の者たちの援護になるかは分からないが、領主は思いつく限りの手段を実行に移したのだった。

181ウルスラ/ハーミア(残り3)/零姫:2018/04/26(木) 22:23:47 ID:???
>>178-179
ハーミア
「見えた!いっくぞー!ドラゴン・ダァァァァァアアアアイブ!!」

竜気を纏わせた超重量の大剣を
ドラゴンの怪力と上空からの急降下の加速で一気に振り下ろし、たたきつける。
狙いは最も面積が広いであろう背中だ。

========================================
零姫
「と・・・ふむ、あの月を消すのは不都合があるか。
 ならば出力を搾って零距離で叩き込むとするかのう!」

鬼火を両腕に纏わせて邪竜へと突撃していく。

零姫
「妾が何故『泣空姫』と呼ばれるか・・・空を哭かせて教えてやろうぞ!」

走りながら溜めこんだ妖力を鬼火に変換、
練り合わせて漆黒の球体を作り出す。

零姫
「終焉・・・空の断末魔!」

高密度に圧縮された鬼火はあらゆるものを飲み込み、燃やし尽くし
それによってある種の引力すら発生させている。
同時に大音量で高周波音が発生し、まさに空が泣くといった様相だ。
その球体を両手で邪竜へとたたきつけるために突進する。

=========================================
ウルスラ
「そこか・・・。
 夢幻奏でる必中の魔弓(アルター・フェイルノート)、第三形態解放。」

左腕から10の光弦を持つ光の弓を発現させる。
1本の弦あたりに1箇所、任意の空間座標に命中させることが出来る
ウルスラの祖母が作り出した偽造魔術兵器。
弓の扱いが不得手なウルスラであっても動かない的が相手ならば必ず中てることが出来る。

ウルスラ
「術種装填。ブラッドシャドウ。座標指定。
 音声装填予約。銃声。座標指定。座標指定。発射タイミング同期・・・。」

その真価は矢はもちろん、武器や魔術、音でさえも装填することが出来ること。
自分の分身を作り出すブラッドシャドウと銃声を
ニキータの発砲と合わせて先ほどまで邪竜が居た場所で発動させるつもりだ。

>>174
ウルスラ
「この明かりでどこまで狙えるかは分からんが、とりあえず当てるだけなら出来るか?
 火花はどうしようもないが、音なら位置を偽装できる。あとは・・・その腕次第、というところだ。」

ウルスラは弓を真面目に訓練していない。
故に集中しなければこの魔弓も満足に操ることは出来ない。
そのためこの戦法は二人以上の人数が必要である。

ウルスラ
「何、心配するな。出力も絞ってあるし、
 プロの兵士(ソルジャー)なら負傷までは行かんさ。・・・多分。」

尤も、薬室内で弾丸が破裂すれば一溜まりも無いが、
構造的な欠陥ではそのような事故は起こりえない。

182ニキータ:2018/04/26(木) 23:00:52 ID:???
>>181
「もっと光量がいる!あのくそったれの頭だけでも光らせてくれよ!」

レーナ「ん〜光よ!」
光の槍を3本作り投擲する。放たれた槍は少し飛んでから破裂して光の玉となる。
ヴェーラ「とりあえずこれでなんとか…」
ヴェロニカ「もっと量がいるけど…これが限界…」
タマラ「この闇じゃローソクみたいね…」

堕天使組は残りの魔力を使い、光の槍を投擲し、あたりを照らそうと努力する。

183レノ:2018/04/30(月) 20:05:38 ID:???
>>178-182
槍をいつでも発射できる状態で、この場の状況を改めて分析する。

攻撃力に関しては、既に邪竜を仕留める為に十分に供給できていると考えても良さそうだ。
しかし、未だ邪竜を仕留められず、優勢とも言えない状況が続く要因はやはり邪竜が纏う闇と、想定外の展開が続いている為だろうと、レノは考える。
ただ、現状を鑑みるに闇に対抗し得る"光"は、闇に対して劣勢を強いられている。

詰まる所、完全勝利への道は、光を用いない方法であの闇を攻略する事だと言うのがレノの結論である。

(俺の力(エネルギー)では、難しいか?)

レノの魔術は、力のベクトルを操作する事であり、概念として存在する要素を操作するのは想定していない。

(いや、考えろ……)

力とは……
押す・引く、進む・退く、膨らむ、縮む、上がる・下がる、集まる・散る、流れる・留まる、破る・衛る、与える・奪う、生む、殺す。それぞれの動きが発生する際に作用する概念。

(闇を払う事は……違う。闇の力を、利用する!)

レノは、鉱物の槍を邪竜に向け、射出する。
槍自体、当たりさえすればどこでも良く、敢えて致命傷とはならない下腹部から脚の辺りを狙う。
同時に、飛翔し、邪竜に向かって放たれている槍に、魔弾を1発当てる。

184アーチャー:2018/04/30(月) 20:47:14 ID:???
>>178
鉤爪が盾を突破出来なかった以上、アーチャーが負傷する道理は無い。
そして、既に見た攻撃を警戒せぬほど愚かでもない。
鉤爪で殺し切れぬとあれば、それ以外の追撃があろう事は十分に予測出来る事である。

「――」

邪竜が炎を放つ寸前、僅かに残ったロー・アイアスが“爆発”する。ブロークン・ファンタズムを発動させたのだ。
全壊同然まで破壊され、篭められた魔力も極少の状態では威力としては皆無に等しい。
だが炸裂した魔力は周辺の土を大きく巻き上げ、アイアスと同規模の爆風と共に、アーチャーの姿を覆い隠すだろう。

(このまま此方に意識を向け続けるなら皆の攻撃は通る筈だが、どう出る――!)

同時に、爆風に右腕を焼かれながらも、アーチャーは地面を蹴って斜め後方へと大きく、可能な限り全速で離脱する。
威力は無くとも目眩ましとしては大きく機能する筈だ。空間把握能力を損ない、両眼を負傷した邪竜が相手であれば尚更!

今までの邪竜の行動から推測を立て、邪竜の速度・体格でも一挙動では届かない距離にまでアーチャーは離脱を試みる。
その最中、用意しておいた魔力補充用のポーションを左手で掴み、一気に飲み干す。
離脱に残った体力と魔力を注ぐ以上、反撃する余裕など今の彼には無い。

185【邪竜グォルズルグ】:2018/05/07(月) 14:41:08 ID:UynNQdo6
アーチャーは全身を焼き焦がされた。

炎を避けられなかった、わけではない。
ブロークン・ファンタズムは目論見通りの効果をあらわし、邪竜の視覚を封じた。
更にその爆風が緩衝材となり、僅かではあるものの火炎の速度を減じせしめた。
さらに、邪竜の能力を正しく目算し、速やかに離脱を試みた。

結果、彼は炎の直撃を回避した。回避しきった。
しかし凄絶きわまる猛火の威力は、間接的におそるべき熱波をもたらした。
アーチャーは熱波にすばやく反応し、しかるべき防御行動を取った。それでも熱波を防ぎきれなかったのだ。

アーチャーは熱がもたらす激しい痛みに苛まれた。地獄のような苦しみだった。
そしてそれは、良いことだった。
熱傷が深部に達すれば神経すらも焼き尽くされてしまい、痛みも感じなくなる。
だがアーチャーは全身に苦痛を感じた。つまり、神経が死滅するほどの負傷ではないのだ。
事実被害は皮膚に留められ、その奥に達することはなかった。


邪竜にとって、最大脅威の一つであるアーチャーの排除はいまや最優先事項である。
今ここで確実に殺しておかなければ取り逃がしてしまう可能性がある。あの巫女のように。
追撃を行うため、邪竜は即座に炎を再集中させはじめた……しかし。


『力が………!』


火の集まりが悪い。力が弱まっている。
明らかに、巫女の祈祷によるものだ。

本来であれば、邪竜ほど強大な存在に影響を与えるには、高位神官であろうとも相当な期間を必要とする。
しかし、邪竜は討伐隊の度重なる攻撃によって受けた傷を癒やすために自身の力を費やさざるを得ず、しかもその力はリディルや神剣によって失われている。
結果として邪竜は激しく消耗し、祈祷の影響から身を守ることができなくなってしまったのだ。
邪竜への攻撃と巫女の防衛を続けた討伐隊の努力の賜物であると言えよう。

邪竜は逡巡する。

186【邪竜グォルズルグ】:2018/05/07(月) 14:47:16 ID:UynNQdo6
このまま火を放ったとしても威力が足りず防がれてしまう可能性が高いしばらく時間をかけて火力を高めてから撃たねばならぬいやそんな悠長なことを言っていられる場合ではない他の人間が妨害するに違いない早急な行動が必要だ攻撃方法を切り替え爪か牙にて追撃すべきかいや待て力が失われているのであれば筋力も奪われているやもしれぬであれば今すぐ炎を放ち多少なりともこの厄介な曲芸師に被害を与えて行動を阻むべきかいやこのまま火を放ったとしても威力が足りず防がれてしまう可能性が高いしばらく時間をかけて火力を高めてから撃たねばならぬいやそんな悠長なことを言っていられる場合ではない他の人間が妨害するに違いない早急な行動が必要だ攻撃方法を切り替え爪か牙にて追撃すべきかいや待て力が失われているのであれば筋力も奪われているやもしれぬであれば今すぐ炎を放ち多少なりともこの厄介な曲芸師に被害を与えて行動を阻むべきかいやこのまま火を放ったとしても威力が足りず防がれてしまう可能性が高いしばらく時間をかけて火力を高めてから撃たねばならぬいやそんな悠長なことを言っていられる場合ではない他の人間が妨害するに違いない早急な行動が必要だ攻撃方法を切り替え爪か牙にて追撃すべきかいや待て力が失われているのであれば筋力も奪われているやもしれぬであれば今すぐ炎を放ち多少なりともこの厄介な曲芸師に被害を与えて行動を阻むべきかいやこのまま火を放ったとしても威力が足りず防がれてしまう可能性が高いしばらく時間をかけて火力を高めてから撃たねばならぬいやそんな悠長なことを言っていられる場合ではない他の人間が妨害するに違いない早急な行動が必要だ攻撃方法を切り替え爪か牙にて追撃すべきかいや待て力が失われているのであれば筋力も奪われているやもしれぬであれば今すぐ炎を放ち多少なりともこの厄介な曲芸師に被害を与えて行動を阻むべきかいやこのまま火を放ったとしても威力が足りず防がれてしまう可能性が高いしばらく時間をかけて火力を高めてから撃たねばならぬいやそんな悠長なことを言っていられる場合ではない他の人間が妨害するに違いない早急な行動が必要だ攻撃方法を切り替え爪か牙にて追撃すべきかいや待て力が失われているのであれば筋力も奪われているやもしれぬであれば今すぐ炎を放ち多少なりともこの厄介な曲芸師に被害を与えて行動を阻むべきかいやこのまま火を放ったとしても威力が足りず防がれてしまう可能性が高いしばらく時間をかけて火力を高めてから撃たねばならぬいやそんな悠長なことを言っていられる場合ではない他の人間が妨害するに違いない早急な行動が必要だ攻撃方法を切り替え爪か牙にて追撃すべきかいや待て力が失われているのであれば筋力も奪われているやもしれぬであれば今すぐ炎を放ち多少なりともこの厄介な曲芸師に被害を与えて行動を阻むべきかいやこのまま火を放ったとしても威力が足りず防がれてしまう可能性が高いしばらく時間をかけて火力を高めてから撃たねばならぬいやそんな悠長なことを言っていられる場合ではない他の人間が妨害するに違いない早急な行動が必要だ攻撃方法を切り替え爪か牙にて追撃すべきかいや待て力が失われているのであれば筋力も奪われているやもしれぬであれば今すぐ炎を放ち多少なりともこの厄介な曲芸師に被害を与えて行動を阻むべきかいやこのまま火を放ったとしても威力が足りず防がれてしまう可能性が高いしばらく時間をかけて火力を高めてから撃たねばならぬいやそんな悠長なことを言っていられる場合ではない他の人間が妨害するに違いない早急な行動が必要だ攻撃方法を切り替え爪か牙にて追撃すべきかいや待て力が失われているのであれば筋力も奪われているやもしれぬであれば今すぐ炎を放ち多少なりともこの厄介な曲芸師に被害を与えて行動を阻むべきかいやこのまま火を放ったとしても威力が足りず防がれてしまう可能性が高いしばらく時間をかけて火力を高めてから撃たねばならぬいやそんな悠長なことを言っていられる場合ではない他の人間が妨害するに違いない早急な行動が必要だ攻撃方法を切り替え爪か牙にて追撃すべきかいや待て力が失われているのであれば筋力も奪われているやもしれぬであれば今すぐ炎を放ち多少なりともこの厄介な曲芸師に被害を与えて行動を阻むべきかいやこのまま火を放ったとしても威力が足りず防がれてしまう可能性が高いしばらく時間をかけて火力を高めてから撃たねばならぬいやそんな悠長なことを言っていられる場合ではない他の人間が妨害するに違いない早急な行動が必要だ攻撃方法を切り替え爪か牙にて追撃すべきかいや待て力が失われているのであれば筋力も奪われているやもしれぬであれば今すぐ炎を放ち多少なりともこの厄介な曲芸師に被害を与えて行動を阻むべきかいや

187【邪竜グォルズルグ】:2018/05/07(月) 14:48:24 ID:UynNQdo6
邪竜が光に照らされた。

堕天使たちによる光の槍が炸裂したことによってもたらされた光は、わずかなものだった。
堕ちたる天使といえど天使は天使であり、その光は神聖なものだ。信教が異なるとはいえ、邪竜の闇とは対極を成すものである。
ゆえに闇の力を減じることができるが、十分な光量を得るには邪竜の力に対抗し、それに打ち勝つ必要がある。
邪竜の力は衰えたとはいえ極めて強く、それを打ち破るほどの力は堕天使たちにはなかった。

しかし相反属性である天使の光は、闇に少なからぬ負荷を与えた。
そこへ、領主が率いる魔術師たちが火をもたらした。
個々の火勢は小さなものであったが、集合したそれらによる光は激しいものであった。
矢に引火した火弾はもちろん、そうではない火弾も邪竜の傍を通ることによって僅かながらも光を生む。
天使の光によって負荷を受けた闇は、火の光を消すだけの力を持っていなかった。
そして、邪竜の各部位を明らかにするには十分な光量が得られた。


『しま……』


レノが放った鉱物の槍が、魔弾を受けながら邪竜の下腹部に正確に命中する。
それは、レノの予想よりも激しい出血と闇の漏出をもたらした。
自身の傷を塞ぐことすら難しくなっている。やはり、力が衰えているのだ。
しかし邪竜が魔術に精通していることは心に留めておくべきである。魔弾に込められた術の性質を、あるいは把握したかもしれない。

いずれにせよ邪竜は攻撃者、すなわちレノの位置へ首を振り向いた。
先にこの者を排除すべきか?
だがその瞬間、ハーミアの大剣が背に襲いかかった。


『ガアアアアッ!!』


半ば不意打ちのような形で受けた大質量攻撃を、力の衰えた邪竜が抗うすべはなかった。
邪竜は激しい衝撃によって地に堕ち、その身体を地面に叩きつけられ、バウンドした。

188【邪竜グォルズルグ】:2018/05/07(月) 14:48:42 ID:UynNQdo6
邪竜は地面にバウンドし、倒れ伏した。
起き上がる気配を見せなかった。
血と闇が大地に流れ、吸い込まれてゆく。


『そういえば……』


首を地面に垂らしたまま邪竜は言った。


『貴様らの……貴殿らの名を聞いていなかった。
…………いや、聞いたかもしれぬが、忘れてしまった。
名を知る価値もないと思っていたのでな。その節は……すまなかった』

邪竜は討伐隊全員を見た。

『もう一度…………名乗らせてもらおう。
我は邪竜グォルズルグ。グォル=ズルグ。
人間の言葉に直せば、【火の暴君の悪辣の雄竜】といったような意味だ。
貴殿らの……名を教えてほしい』

その声は弱々しいものだった。
恐るべき力を纏わせながら接近しつつある零姫を見て、邪竜はすこし笑った。

巫女は邪竜の発言を無視し、祈祷を再開している。その表情に油断はない。
彼女は、邪竜を倒し切ったとは考えていないのだ。
邪竜の一見殊勝に見える言葉と態度は、偽りかもしれなかった。
しかしその一方で、邪竜はこの場の全ての人間に対して敬意を抱いているという感覚を、一行は抱いた。

189レノ:2018/05/08(火) 12:45:38 ID:???
>>187
鉱物の槍は邪竜を貫くなり、鉱物同士の結合が解け、それぞれ粉粒程度の黒く変色した結晶となり、地面に向かって埃の様に舞い落ちていく。
原因は、レノが最後に放った魔弾の影響により、それまで結合の為に作用したエネルギーが別の効果を現した為だ。

変換されたエネルギーは、まずは邪竜から発生する闇や熱を取り込む。そうして威力を増したエネルギーは、槍を構成する鉱物と反応を起こし、鉱物を急速に培養する。つまるところ、邪竜の傷口付近より邪竜の身体を徐々に"石化"させていった。

>>188
名乗るのは、最後に邪竜を葬る者達がすれば良い。
そうした判断の下、レノは恐らく最後になるであろうエネルギーの壁を、邪竜と自分との間に生成した。

これは、周囲に倒れている僧侶達や、巫女を万が一の事態から守る為。

190ニキータ:2018/05/09(水) 21:01:22 ID:???
>>188
「第185独立偵察中隊、ニキータ・イワノヴィッチ・クトゥーゾフ兵長。」
「満足か?」
バカでかいライフルを腰だめにして邪龍に狙いをつける。
スコープなんて必要ない距離だ…

レーナ「レーナ・ラーストチュカだ!おぼえとけー!」
ヴェーラ「ヴェーラだぞー!」
タマラ「タマラです、すぐお別れだけどね!」
ヴェロニカ「えっと…ヴェロニカ…」

191名もなき戦士:2018/05/10(木) 20:40:20 ID:???
>>188
ツカイ=キリ「ふむ…邪竜も人間に敬意を払うとは」

邪竜の言葉に地方領主は驚きを隠せない。

デバン=ココダケ「俺は地方領主デバン=ココダケ!」
ツカイ=キリ「同じくツカイ=キリ」

領主たちは名乗りを上げた。
領主の部下たちは疲弊が激しく回復に努めている。

192ウルスラ/ハーミア(残り2)/零姫:2018/05/12(土) 17:57:13 ID:???
>>188
ハーミア
「二度目だけど・・・ハーミア。ハーミア・トゥバニア・ロギノードス。
 秘龍神レアンドラと滅竜騎士にして龍の守護騎士アーサーの娘だ!」

邪竜の背に深々と突き刺さった竜殺しの剣を強く握りしめると
全力で蹴りつけて引き抜きながら宙返りをして間合いを取る。
と同時に大きく息を吸い込んで次の行動に備える。

==========================================

零姫はつい最近になって三代目羅生門百鬼丸らに敗れ
愛宕山百鬼衆、あるいは百鬼夜行の1人として新たな名を得たばかりだ。
複数の名を持つということはそれだけ多くの畏怖を集めるステータスでもある。
故に彼女は最も新しい名を告げる。

零姫
「ならば答えてやろう。
 我が名は隈・・・いや、今は空薙守 零姫!
 まだ馴染みは無い名前じゃが百鬼の終焉に立つ者よ!」

高周波音を発生させながら闇の太陽を叩きつける。
高熱を放ちながら押しつぶし、引き裂き、飲み込む球体。
中心こそ闇の鬼火ではあるもののその破壊力の大半は発生している周囲の力場による。
制御のためにその射程は短く抑えられており、
さらに出力を搾っているためその大きさは両手で抱えられるほどだが、
その外周に触れれば鋼鉄や岩盤ですら削り溶かす威力を誇る。

==========================================

ウルスラ
(既に名乗っているから隠す必要は無いが・・・
 ・・・そもそも名乗るほどの事をまだしていないし、な。)

血を塗り付けた弾丸(砲弾)を残りの光弦へと番えてアーチャーの元へと転がるように放つ。
同時に彼の耳元にだけ届くように声も放つ。

>>184
ウルスラ
「聞こえるか?生きているか?
 負傷をしていて余裕も無いだろうが、
 今そっちへ転がした弾丸の頭にお前の血も塗っておけ。
 ちょっとした賭けだが、お前が使おうとした『切り札』の応用がある。」

上手くアーチャーの元へと声と弾丸が届いたかは分からない。
また届いたとしても、その賭けに乗るかは分からない。

フェイルノートの使用中であるためニキータからそう離れることは出来ないが、
10の光弦のうち使用しているのは3。
残りの7は自由に使うことが出来る。

193アーチャー:2018/05/12(土) 20:02:36 ID:???
>>188
「――余波でこれか。全く、加減を知らん怪物だ」

倒れ伏しそうな体を支えて、なお不敵な笑みを浮かべて見せる。
痛みは生命活動の証だ。全身を焼く激痛は、彼を苛ませながらも意識の覚醒を促した。
幸いな事に邪竜からの追撃は無く、魔力の補充も完了している。

この時代に召喚された使い魔であるアーチャーは、原則としては霊核――頭或いは心臓――を完全破壊されなければ死ぬ事は無い。
魔力が枯渇すれば消滅するが、逆に言えば魔力と霊核さえ残っていれば回復の余地があるとも言える。

故に、補充した魔力を活用して静かに肉体の再生を始めた。
即座に完全回復とはいかないが、僅かな時間で戦闘行動は再開できるだろう。

そして回復しながらも当然、邪竜への警戒は続けている。
邪竜との距離をゆっくりと歩いて縮めつつ、呼吸を整え、肉体の再生を行い、投影の準備を整えておく。
僅かでも前兆があれば、周辺の面々を守る為に“盾”を展開する見込みだ。


>>192
(……弾丸か、奇策があるようだな。ではコイツは、彼女に託すとしようか)

ウルスラへと視線を向け、僅かに頷いた。賭けに乗るという意思表示だ。
邪竜にはバレないように弾丸を拾い上げ、言われた通りに血を塗り付ける。アーチャーの魔力の残滓が確実にあるだろう。

194【邪竜グォルズルグ】:2018/05/20(日) 01:14:19 ID:UynNQdo6
山頂に雪が降り始める。
山の標高は高く、本来気温は極めて低い。これがこの山の、あるべき姿だった。
邪竜は、環境操作能力を維持することさえ困難になっていたのだ。
闇もまた失われ、周囲には光が満ちていた。

山神の加護を得ている討伐隊は、この環境変化による不利益を被ることはない。
しかし邪竜はそうではなかった。
討伐隊の活躍によって力を取り戻した山神は、邪竜に過酷な極寒と深刻な酸欠をもたらしていた。



『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』



邪竜は再び咆哮した。
この状況下においてなお、邪竜は戦おうとしていた。
捨て鉢になったわけではなかった。討伐隊と戦い、打ち倒し、そして生き残ろうとしていた。
邪竜に芽生えた人間たちへの敬意は、むしろ彼の闘志を高めているようだった。


巫女には不可解だった。
邪竜は最早瀕死と言っても過言ではない重傷を負っている。それがわからぬ邪竜ではないはずだ。
しかし戦意を失っておらず、死を覚悟したというわけでもないらしい。一体何故?

その疑問に対する答えは、すぐにもたらされた。

195【邪竜グォルズルグ】:2018/05/20(日) 01:14:50 ID:UynNQdo6

突然、邪竜の全身から激しい火と闇が迸った。
それはあまりに苛烈なものであり、負傷の修復とは明らかに性質を異にするものだった。
しかし討伐隊への攻撃、というわけでもないようだった。

そう、火と闇が侵食しているのは、邪竜自身であった。
火は邪竜の骨肉を焼き、闇は邪竜の命を貪っていた。
残された魔力や生命力を糧として、その勢いは急速に増してゆく。
今や邪竜は、火と闇にくべる燃料となりつつあった。

これが邪竜の切り札だった。
火と闇は、邪竜自身さえ経験したことがない程に強力なものとなっている。
この力なら、この恐るべき強敵たちを撃破することができるだろう。



名乗り返した者の名を、邪竜は反芻した。
名乗り返さぬ者も居たが、邪竜は僅かに残された視力でその姿を目に焼き付け、名前の代わりとした。


――――邪竜は立ち上がった。
戦闘が長引けば己の力に身を焼かれ、真の死が訪れることになる。
速やかに、全ての敵を倒さなければならない。

196【邪竜グォルズルグ】:2018/05/20(日) 01:15:15 ID:UynNQdo6


邪竜はまず、進行しつつある石化への早急な対処を強いられた。
負傷と疲労の激しい今、レノの魔術を打ち消すことはおろか、その進行を遅らせることさえ難しい。
ゆえに邪竜は躊躇せず、石化された箇所とその周辺部位を鉤爪によって削ぎ落とした。
身体から鉱物が取り除かれ、その石化は停止した。

さらに、背中に突き刺さった大剣を筋肉と蠢く闇の力で強引に引き抜いた。
邪竜にとって竜殺しは猛毒に等しい概念だ。一刻も早く体内から除去しなければ重大な悪影響を招くおそれがあった。
大剣は空中にはじき出され、結果としてハーミアは燃え盛る邪竜の肉体に近づくことなく大剣を取り戻すことができた。

おびただしい量の燃え盛る血液が、全身の傷口から流れ落ちる。
自身の闇に肉体を侵食されている今、自己治癒能力は格段に低下していた。
さらに、竜殺しの力は修復が難しく、加えて石化箇所を強引に除去したため傷はより深まった。


零姫は邪竜の眼前に迫っていた。
強大な神であり同質の存在でもある彼女との正面戦闘は長期戦になるおそれがあり、この状況下では得策ではない。
高脅威かつ脆弱と思われる弓兵や奇妙な兵士たちを先に撃破し、彼女は後回しにすべきだった。
だが石化と竜殺しに対処せざるを得なかったため、接近を阻止することは叶わなかった。


『…………良かろう』


邪竜は零姫と正対し、自身の身を焼く炎を強めた。

197【邪竜グォルズルグ】:2018/05/20(日) 01:15:41 ID:UynNQdo6

零姫は空の断末魔を邪竜に叩きつけた!

だがその直前、邪竜は巨大な両腕を前方へと突き出し、迫りくる零姫への盾としていた。
闇の太陽が鉤爪を完全に破壊し、既にリディルによって損傷していた腕は挽肉へと変わっていった。
だが成人女性サイズの零姫と大型ドラゴンの間には圧倒的な体格差が存在し、危害半径を制御された空の断末魔が肉体深部に到達するまでには若干の時間が必要となる。
邪竜は、自らの両腕を犠牲に僅かな猶予を得たのだ。

邪竜は間髪入れずに炎を放ち、零姫はその直撃を受けた。
炎は邪竜の命を糧としており、さらに山神すらも滅ぼしかけた“供されし神を喰らいしもの”の概念を宿している。
零姫と雖も劇的に威力を増した神喰らいの炎を受けて無事では済まず、全身の皮膚と肉を焼き焦がされる。
くわえて、空の断末魔により削ぎ落とされた邪竜の燃え盛る血肉が零姫とその周囲に飛び散り、火と闇が彼女を侵食してゆく。
莫大な力と強固な耐性を持つ零姫が、即座に戦闘不能に陥ることはなかった。



もし零姫が回避に転ずれば、さらなる負傷を防ぐことができるだろう。
しかし彼女は強靭ゆえこの程度のダメージで済んでいるが、この炎の矛先が他の者に向けられた場合、直撃を免れても余波だけで焼死する可能性さえある。
彼女が盾となれば、その事態を防ぐことができるかもしれない。

あるいは逆に、負傷を顧みず一気呵成に猛攻を加えるのも一つの手だ。
今の邪竜の力は命を犠牲にしているため残された体力は少なく、かつ闇によって細胞や臓器が死を迎えつつあるため再生力も弱まっている。
今こそ邪竜を撃破する最大のチャンスかも知れないのだ。

もしくは、仲間たちとともに防御と回避に徹し、持久戦に持ち込むことも可能だ。
邪竜の攻撃をある程度凌ぎ切ることさえできれば、邪竜は炎と闇によって自滅することになるだろう。


巫女は既に祈祷を停止しており、討伐隊全員に念話で上記の情報を余すことなく伝えていた。
彼女の念話は瞬時に双方向の対話を行うことができ、また彼女との念話者は別の念話者へ直接的に言葉やイメージを飛ばすことができる。
そのため、討伐隊同士の意思疎通や行動タイミングの調整なども容易に行うことができる。
どのような作戦を選ぶにせよ、完璧な協調が可能だ。

198【邪竜グォルズルグ】:2018/05/20(日) 01:17:18 ID:UynNQdo6
■邪竜
▽外傷
喪失:左眼(神剣・リディル)・鉤爪(空の断末魔)
重度:右眼(リディル)・背中(竜殺し)
中度:下腹部(鉱物の槍の直撃および石化箇所の除去)・両腕(空の断末魔・リディル)
軽度:眉間(ライフル・螺旋剣/時間経過によりある程度修復)
その他:迫撃砲と大火を呑む焔によって満身創痍。その他の負傷についてはほぼ修復済

▽状態
・肉体損傷継続中(自身の火・闇)
・魔力減少継続中(リディル)
・空間干渉能力喪失(螺旋剣)
・高山病(山神の力)



■巫女
▽外傷
重度:両腕(粉砕骨折)

▽状態
・正常

199レノ:2018/05/20(日) 14:36:40 ID:???
>>194-198
邪竜の視線が一瞬此方に向いた際に、
レノは邪竜と視線を合わせた。微笑むわけでも、言葉を発するでもなく。
それはまた、これだけの苦を与えても挫けない相手に対するレノの無意識の敬意なのかもしれない。

石化の影響も上手く凌がれたことを目の当たりにするが、
それ以上の追撃はせず、壁の維持に注力することに専念した。維持どころか、効果範囲を広げて巫女、僧侶は無論、身近に居る戦闘不能に陥った兵士達も囲う。

それは、自ら手を下さなくても他に戦力が居るという他人任せでも、放っておいても自滅するというような油断でもなく、全員が生還するという共通認識を実現させる為には守りの手を緩めてはならないと判断したからだ。

無論、前回は守るつもりで返って痛手を負ったという事も忘れてはいない。
壁の効果範囲を広げながらも、壁に向かって放たれた打撃は魔弾として、魔術の類は同効果の魔術を、全て邪竜に向かうよう仕掛けを施す。

仮に邪竜が自分を含む、壁の内側の物を攻撃した場合、自分が放った同規模のパワーで攻撃を返される事になる。

味方側が壁に攻撃しても同様の効果があるため、"壁の内側について心配はいらない"という連絡とともに、壁の性質についての説明を念話を通じて行った。

200ニキータ:2018/05/21(月) 23:02:17 ID:???
>>194-197
邪龍の変異に驚くが、すぐさまやるべきことを頭の中に描く。
一発で邪龍を仕留める。
そのためには何をすべきか…
背中の傷にこのバカでかいライフルを食わらせればいい。
アソコが一番デカい的であるはずだ
気温による弾道の変化、風向きはこの距離なら無視できるだろう。
試し撃ちもしていない銃だが、ウルスラを信頼してもいい。
後はどうやって背中に回り込むか…

レーナ「往生せー!」
ヴェーラ「金色射法ー!」
ヴェロニカ「もう一回!」
タマラ「テイテイター!」
堕天使組はもう一度光の弓矢を放つ。
この隙に背後まで移動して傷口に狙いを定める。
呼吸を整え、五感を研ぎ澄ませる。
淀みなく弾を薬室に込めて引き金を絞る。
反動が体を舐め、腕の感覚がなくなり、息が苦しくなる。
砂煙とマズルフラッシュで視界がなくなり、命中確認ができない。
もう一回コッキングハンドルに手をかけ、再度装填…

201名もなき戦士:2018/05/22(火) 18:48:46 ID:???
>>194-200
ツカイ=キリ「命を燃やして最後の勝負に出たのか!」

邪竜と零姫の戦いに割って入ることは不可能だ。
しかし、ただ見ているだけではもどかしい。
地方領主は消耗激しい部下たちに最後の指示を出した。
弓兵と魔術師は撃てるだけの矢と魔弾を邪竜へと飛ばす。
戦士たちは、負傷している者たちを守るレノを囲むように陣を敷いた。
また、一部の戦士はニキータの下で盾を構える。無論射線上に入らないようにだ。
領主たちの行動は全くの無意味かもしれない。それでも、動かずにはいられなかったのだ。

202ウルスラ/ハーミア(残り1)/零姫:2018/05/23(水) 15:08:32 ID:???
>>198
零姫
「この程度の・・・炎など・・・効かぬわ!」

完全に戦闘状態になっている零姫は多少のダメージで怯むことはない。
ましてや同じ炎と闇を司る神としては怯むことも退くこともプライドが許さない。
闇の太陽として己の術の優位性を示すことで人類の心を折ってきた彼女にとっては
相手の攻撃をしのぎ切った上で圧倒的な火力を示すことこそが勝利だった。
空の断末魔を手放し、両手を大きく広げる。

零姫
「禁鬼・・・大火を呑む焔!」

炎を飲み込み燃え上がる鬼火を周囲に作り出す。
放たれる炎の勢いを殺し、あわよくば邪竜を攻撃できればいい。
それが恐怖と絶望を糧とする『禍』と呼ばれた鬼の戦い方だ。


==========================================
ハーミア
「もってあと数十秒・・・近づくのはマズいかな・・・。」

飛んできた大剣を取り戻し、盾代わりになるように自分の眼前に突き刺す。

ハーミア
「なら・・・使える間にせめて・・・!」

竜の肺活量で高圧縮された空気によるソニックブレスを放つ。
魔術的な追加効果こそ無いものの物理的な破壊力を持ち、
特に硬い物質を内部から破砕する特性を持つ衝撃音波砲により
先ほど大剣突き刺した背中周辺を狙い撃ち、
その様子を念話で周囲へと伝える。


==========================================
>>200
銃弾が放たれると同時に魔弓に装填されていた効果が発動する。
発砲に伴う爆音は遠く離れた場所で鳴り響き、
その地点には右手を呪弾(ガンド)のように突き出したウルスラの幻影が現れる。

ウルスラ
「うめき声一つ上げないとはいい腕だ。
 いい腕ついでに二発目は今から送る"血のついた弾丸"を叩き込んでもらおうか。」

視覚情報に極めて重度の障害を負った竜に対して
音による発射場所を偽装したことである程度の安全は確保したと判断し、
その場を一旦離れてアーチャーの元へと走る。

>>193
邪竜に分身を見破られないために
アーチャーの背後に走り寄ると、血の付いた銃弾を受け取る。

ウルスラ
「弓兵、竜は鬼に気を取られているようだ。
 今ならお前の『切り札』を使う時間も稼げているだろう。」

受け取った弾丸を魔弓でニキータの元へ転がるように放つ。

ウルスラ
「いいか、あの弾丸もお前の身体の一部だとイメージしろ。
 細かい制御は私がなんとかする。
 お前はその心象風景を私に貸し与えてくれればいい。」

彼の本来の名は並行世界の記憶からもよく知っている。
現在の世界線でも義弟とのパスを通じて確認済である。
その上であえてその名を告げることをせず、弓兵と呼ぶ。
だが、語りかける口調には無意識にその正体を踏まえた上での態度が現れている。

203アーチャー:2018/05/23(水) 21:18:42 ID:???
>>198 >>202
「……そういうコトか。全く、無茶を言ってくれる」

魂胆を理解したのか。
ここに来て、今までになく強大な力を発揮した邪竜を見据えて尚笑みを崩さない。

「何の縁も無い者であれば不可能だろうが……君なら別だ。
 とはいえオレの世界だからな、性根が捻くれているのは間違いない。せいぜい気をつけてくれ」

素直なのかそうでないのか。
どちらとも付かない憎まれ口を叩いて、アーチャーは片目を閉じた。
ウルスラの指示通り、弾丸と己の肉体とを一致させるようにイメージしている。

通常であれば展開に時間を要する固有結界(きりふだ)も、この世界に展開するのでなければ話は別だ。
例えば弾丸の内に極小の固有結界を刻み込み――それを対象に撃ち込んだ後に炸裂させる、といった手順であれば。

千の剣を内包する彼の心象風景は、詠唱を要さずして“対象の体内から”展開されるだろう。

204ニキータ:2018/05/23(水) 22:01:53 ID:???
>>202
「…くっそ分かった!」
渡された砲弾をチャンバーに送り込む。
一発目の射撃で体中が軋んだが、アドレナリンのおかげで意識はより鮮明になった。
筋肉や節々が痛みを伴い、抗議するが再び邪龍に狙いをつける。
邪龍は多少はひるんだだろうか、再び射撃を行うためのルーティーンを始める。
照準を固定し、力みすぎず緩みすぎず銃把を握る。
引き金は優しくゆっくりと絞る。
シアが解放された感覚と同時に、撃針が信管を叩き凄まじい反動が全身を襲う。

205ウルスラ/ハーミア(残り1)/零姫:2018/05/24(木) 01:51:54 ID:???
>>203
ウルスラ
「He is the bone of sword――(体は剣で出来ている。)」

ウルスラの持つ並行世界の記憶にはそれだけ多く並行の知人が居る。
当然それはこの赤い外套の弓兵も含まれる。

詠唱が不要であってもその一節を口ずさむのは彼女なりの敬意の現れだ。

206【邪竜グォルズルグ】:2018/05/31(木) 21:17:47 ID:N9w.W4MI
大火を呑む焔が邪竜の火を呑み、
神喰らいの火が零姫の焔を喰う。

既に一度繰り返されていた光景だったが、
邪竜の火は遥かに強力なものとなっており、それを燃料とする鬼火の火力もまた同様に激化する。
威力を増した互いの火は互いの肉体を焼き、炭化させ始めた。


邪竜はこの神同士の戦いに全力を振り絞り、雌雄を決したいという強い欲求に駆られた。
しかしそれが愚策であることは、まさに火を見るより明らかであった。
零姫の焔のみならず自身の炎にも焼かれている今、時間の浪費は絶対に避けなければならない。



邪竜は、空の断末魔から身を護るために突き出していた両腕を、更に前方、即ち零姫へと伸ばした。



邪竜の見立てでは、零姫は物理面でも大きな力を持つ存在だ。
振るえる力の総量では我よりは劣るものの、それ以上に体躯の小ささが有利に働き、攻撃時の単位面積あたりに働く破壊力は非常に大きなものとなるはずだ。
一方、我は鉤爪を喪失しているため物理攻撃では殴殺や圧殺などの手段を取らざるを得ず、この鬼神に大きな被害を与えられるとは考えにくい。
それどころか、手痛い反撃を食らう可能性の方が高かろう。



邪竜は零姫の身体を掴んだ。



だが、矮躯が必ずしも有利に働くとは限らない。
大地の揺れから察するに、体格のみならず重量も人間と同等のようだ。
軽さと小ささは速さを生む……………しかし。
  ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
 動かされやすいということでもある。






―――――邪竜は零姫を投げた。





50kgをようやく超える程度の零姫は、巨竜にしてみれば小石のように軽い存在だった。
危機的状況によって肉体のリミッターが外されたのか、あるいは激化した自身の炎が活力さえも生み出しているのか、鷲掴みから投擲までの動きは、あまりにも素早かった。
零姫が巨大化などの対抗手段を持っていたとしても、それは間に合わなかった。

207【邪竜グォルズルグ】:2018/05/31(木) 21:18:04 ID:N9w.W4MI

弾丸のような速度で、零姫の身体が飛んでゆく。

その先にあるものは、巫女だ。……正確に言えば、巫女を守る壁であった。
レノによって攻撃を反射する魔術が込められた、あの土壁だ。

邪竜は魔術に熟達しており、また邪竜自身が魔術的存在であることは巫女が説明したとおりだ。
ゆえに、リディルによってほとんどの魔力を失った今でも、敵によって行使された魔術の性質をある程度推察することができる。
レノの鉱物の槍や零姫の鬼術に素早く対応できたのも、それが理由だった。
邪竜は土壁の性質をも概ね読み取り、それを逆利用することにした。


このまま零姫が土壁に激突すれば、零姫を攻撃者と見做して自動反撃が行われ、激突と反射の二重攻撃を受ける――と、邪竜は推測している。
もしそのようにならなかったとしても、零姫が遠ざかっている間に他の者を焼くことはできるだろう。
……貴重な時間を大幅に失ってしまった。即座に次の行動に転じなければならない。


邪竜は振り向いた。
その瞬間、背中に衝撃が走った。


『…………ッ!!』


激痛のあまり最早声を発することもできなかった。
竜殺しの剣による傷は重く、修復力は最早機能していない。
ソニックブレスと大口径弾は、鱗を突破し、筋肉を突破し、背骨にまで達していた。

下肢に力が入らない。
どうやら脊椎を損傷し、神経をやられたようだ。これでは歩行すらもままならぬ。
しかし今の火力ならば、動かずとも十分にこの者達を皆殺しにすることができよう。


邪竜は炎を収束させ始めた。

208【邪竜グォルズルグ】:2018/05/31(木) 21:18:27 ID:N9w.W4MI
零姫への鷲掴みから投擲はごくわずかな時のあいだに行われたために阻止することは叶わなかったが、状況については全員が把握できている。
当事者である零姫と優れた動体視力を持つアーチャーが、主観的・客観的な情報を正確に把握し、それが念話により素早く共有されたためだ。


邪竜といえど他者の魔術を一瞬で完全に把握できるわけではない。
土壁の攻撃反射が零姫に向かぬ可能性も十分にある。
だがもし邪竜の推測が正しく、それに対処する必要があるのなら、素早い行動が必要だろう。

仮にレノが土壁そのものを解除した場合は、そのまま零姫の身体が巫女に直撃することになる。
物理的に脆弱であり両の腕を完全に骨折している彼女に、これを防ぐ手立てはない。

また、土壁自体は維持しつつそれに込められた魔術のみを消去した場合、土壁はバラバラになるだろう。
飛散した土塊は壁に直接触れているレノ自身に直撃し、彼は少なからぬ負傷を強いられることになる。
とはいえ、土壁がある程度の衝撃を吸収するために、直撃するよりは被害が小さくなるだろう。

無論、反射する魔術の性質や零姫の行動によっては、あえて対処する必要もないかもしれない。
あるいはもっとリスクの低い別の対処法があるのなら、それを選択しても良いだろう。


巫女もこの状況を把握しており、さほど機敏ではない彼女が回避に転じても無意味であるため、念話を維持し続けている。
そのため全員の意思疎通は一瞬で完了するし、たとえば激突までの僅かな時間のあいだにレノと零姫が高度な共同作業をすることも十分に可能だ。

209レノ:2018/06/02(土) 23:47:19 ID:???
>>206-208
邪竜が零姫を掴み投げる動作は、確かに素早かった。しかし、レノの思考回路はその速度の更に上を行った。むしろ、意図していたというより反射に近かった。

邪竜は確実に窮地に陥っている。
そのまま放っておいても、自滅する。だからこそ、最後の手段、巫女をあらゆる手を使って殺すよう仕掛けてくる事は容易に想像できた。

邪竜が零姫を投げる動作に移った頃、レノもまた空いた腕を振りかぶり、同時にその腕に魔力を蓄えた。
そして邪竜が零姫から手を離した頃、レノは振りかぶった腕で土壁を殴りつけた。

レノが土壁を殴った方の腕から魔力は土壁を通り、土壁を構成するエネルギーの一部が魔弾として再構成され、零姫に向かって放たれる。
その魔弾の効果は、土壁に向かう零姫の移動エネルギーを幾分か邪竜に向ける事で、零姫が土壁に衝突するエネルギーを大幅に緩和しようというもの。

零姫に魔弾が的中し、零姫が空中で体制を整えられるのであれば、土壁に"不時着"することも可能だ。
念話を通して伝わるかどうかはわからないが、零姫が土壁に不時着し、更に土壁のエネルギーを利用し反撃をしかけるまでのイメージを念じる。

更に
"宿代は頂くぜ。壁に向かって念じてみな"
と、兵士、僧侶達に対して短く念じる。

魔弾によって僅かに失われた土壁に、多少でも魔力を充填できれば、土壁の持つ反射のエネルギーは100%、零姫の味方をする事だろう。

210ウルスラ/ハーミア(0)/零姫:2018/06/03(日) 19:58:04 ID:???
>>208
ハーミア
「いくら竜でもあれだけの深手ならもう・・・!」

剣に手をかける。

ハーミア
「だけど・・・。」

次の瞬間、角と羽が罅割れ、元の姿へと戻る。

ハーミア
「ここで時間切れ・・・かあ・・・。」

スタミナが切れたことにより疲労し、
突き立てた剣に寄りかかるようにして数秒間息を整える。
未熟な彼女が再び竜気を纏うには纏っていた時間と同じだけの時間を必要とする。

==============================================
零姫は自身を巻き込んで邪竜をも焼き尽くしながらもずっと笑い続けている。
東方最強の戦闘種族『鬼』、その最大の危険性は戦闘状態になったときの精神性にある。
たとえ自身に大きなダメージがあろうとその激痛を無視し、あるいは怒りに変換し、
際限なく己の肉体の限界へと加速していく。

零姫
「さあ・・・地獄を楽しめ!貴様の望む世界を―――」

さらに追撃の鬼火を作ろうとしたところで邪竜に掴み上げられ、
次の瞬間には思い切り水平に投射される。

零姫
「く・・・!妾の炎がそこまで怖いか!貴様の負けじゃ!愚か者めが!」

生成しかけていた鬼火を弾けさせ、竜へと向き直る。
狙いは土壁の反射を用いてその心臓を撃ち抜くこと。

>>209
が、突如強いイメージと共にその飛翔速度が大きく緩和される。

零姫
「チッ・・・生意気な人間が余計な事を。」

言葉とは裏腹に口元は笑っている。
手足へと妖力を集中させると、術を発動させながら土壁へと飛んでいく。

零姫
「鬼術・遠呂智!」

土壁に干渉し、へこませることと足のバネを使うことで、大きくダメージを殺して着地する。
そしてその僅かな時間にレノへと下手なりに念話を飛ばす。

零姫
『人間、良い縁を紹介してやろう!』

元々連携とは縁遠く、仲間など居なかった彼女の下手な念話はかなり大声に聞こえるだろう。
それだけ一方的に告げると反射によって土壁が元に戻る力に合わせて一気に逆に加速して邪竜へと飛ぶ。

零姫
「鬼術・隠暁・・・毒鬼爪・・・!」

基本鬼術の三連発動。
邪竜の意識から自分を外し、手の爪を伸ばして硬質化させ、猛毒を纏う。

==================================================
ウルスラは赤い外套の弓兵の詠唱を借りて続ける。

ウルスラ
「――due to only one loss(ただ一つの敗北から)
 to forget Life.――(ただ一つの願いも失う)」

無限の並行世界には、今のように利害の一致から背中を預けて戦った『彼』が居た。
互いの主張の違いから殺し合った『彼』が居た。
頼りになる兄として振る舞おうとする『彼』が居た。
血縁は無くとも自分を姉として慕ってくれる『彼』が居た。
たった一人の妹を救うため、過ぎた力を求めて『彼』になってしまった『彼』が居た。
正義の味方という役割を押し付けられ、それを受け入れた『彼』が居た。
正義の味方を目指し、その理想に裏切られた『彼』が居た。
そして、正義を穢され、魔道へと腐り堕ちた『彼』が居た。

ウルスラ
「――But I will allow his despair――(だが、それでも己の生涯を棄てず)」

>>203
最後の一節を前に念話を『彼』へと飛ばす。

ウルスラ
『合わせろ!弓兵!』

そして邪竜の背に食い込んだ弾丸へと意識を集中し、魔力を込めて詠唱をする。

ウルスラ
「――Even though it required to "Unlimited Lost Works"!(彼の体は、朽ち果てても―――剣で出来ていた!)」

邪竜の体内を起点に固有結界を再生・再現。
それを基点として後は本来の使い手へと譲渡する。

211アーチャー:2018/06/03(日) 23:02:16 ID:???
>>208
『――以上だ。後は各々の判断で動いてくれ』

情報共有を終え、精神を集中させる。
詠唱は要らずとも、固有結界の展開には僅かでも集中が必要だ。
鷹の瞳を以て、弾丸が着弾する瞬間を見極める。

>>207 >>210
『――ああ、後は任せろ』

着弾と同時に、全ての魔術回路に魔力が迸る。
消耗の為では無く制御の為。
本来必要な工程を全て省略して、それは完了した。


「――“Unlimited Blade Works”」


邪竜の背に食い込んだ弾丸は、刹那の後に“破裂”する。
そこから溢れ出たモノは……数多の“剣”だった。

正体は、弾丸を起点として具現化した固有結界。
彼が今までに記録した数多の剣が、邪竜を体内から串刺しせんと溢れ出すだろう。
その苦痛たるや――直に受けた邪竜以外が、理解出来よう筈も無い。

世界の名は“Unlimited Blade Works(無限の剣製)”
千を越える名剣、魔剣、聖剣を内包する英霊エミヤの心象風景。
幾度と戦場を駆け抜けてきた彼の得た全てが、邪竜に襲い掛かる――!

212名もなき戦士:2018/06/07(木) 18:56:01 ID:???
>>209
兵士たちは多少戸惑いながらも、レノの声に従った。
僧侶たちもゆっくりと起き上がり、壁に魔力を通す。
少しでも援護が出来るなら、彼らはいくらでも手を貸すだろう。

213ニキータ:2018/06/07(木) 19:43:12 ID:???
>>208
「くそ、あとは何もできん…」
しびれた両腕にのしかかる大型ライフルを投げ捨てる。
この場ではもはや何もできることはない。

214【邪竜グォルズルグ】:2018/06/08(金) 18:07:50 ID:ME/CueHs
土壁へ激突する軌道を取っていた零姫の身体はレノの魔弾によって衝撃を緩和され、反射を利用して反転した。
兵士たちが土壁に魔力を注いでいることもあり、邪竜へ迫る速度は投げられた際の速度より高い。
迫る零姫に対し、邪竜は再び判断を強いられる。


邪竜とて、土壁を利用した反復を全く想定していなかったわけではない。
だがその場合、零姫は反射によって少なからぬ被害を受けるだろうと考えていた。
あるいは激突時の衝撃を軽減させることもあろうが、その場合は反射魔術を消去または減弱させざるを得ず、したがって反転速度は落ちるだろうとの推測だ。

しかし現実には零姫は全くの無傷であり、なおかつ高速で再接近しつつある。
疑いようもなく、あの土魔術師の仕業であろう。周囲の兵たちも魔術の形成に加わったようであり、いずれも存外に厄介だ。
仮に零姫を別の場所に吹き飛ばしたとしても、類似の方法で再復帰させるに違いない。これでは埒が明かぬ。
その上、零姫の姿も捉えづらい……このままでは、時間を徒に浪費することになるだろう。


邪竜は逡巡した。
どのようにして零姫を遠ざけるか、一瞬そのことだけを考えた。
だがその思考は、痛みにかき消された。

215【邪竜グォルズルグ】:2018/06/08(金) 18:08:08 ID:ME/CueHs
竜殺しの剣は邪竜の背中に浅からぬ傷を生み出しており、それを衝撃音波がズタズタに破壊している。
大口径の弾丸は、開いたその傷口を穿っていた。
ゆえに弾丸は、邪竜の体内奥深くにあった。



―――――弾丸が炸裂する。



固有結界は、ほぼ心臓部に近い位置より展開された。
空間干渉能力はすでに失われており、他者の世界を拒絶することは叶わなかった。

剣が具現化してゆく。
それらは初め、炎と闇によって破壊されていった。
しかし、増加してゆく剣が徐々に圧倒し、やがて邪竜の肉体を貫き始めた。
肉、骨、皮、そして臓物――――――ありとあらゆる身体器官が、その内奥より蹂躙される。
特殊な力を宿した剣は、炎や闇さえ切り裂いた。



『フゥ…………』

痛みとともに状況を理解し、邪竜は溜息をついた。

全身から山のように剣が生え、まるでハリネズミのような有様だ。
その息は白く、付近には雪が積もりつつある。
マグマのように煮えたぎっていた流血も、今では降る雪を融かす熱すら無いようだった。
傷口から零れた闇もまた、瘴気を放つことなく霧散しようとしている。

巫女は《月光》を解除した。
邪竜が闇を再出現させる可能性を考え、念のために維持しつづけていたものだ。
だが、もうその必要も無いだろう。

邪竜は悟った。どうやら自分は死ぬらしい。
そして零姫をもう一度見た。


『よかろう――――再戦だ』


さきほど収束させた炎だけは、まだ残っていた。

216【邪竜グォルズルグ】:2018/06/08(金) 18:08:28 ID:ME/CueHs
失われていく己の命を感じながら、邪竜は零姫を迎え撃つ!

邪竜の検知能は高度である。
視力は失われ、鬼術によって認識が阻害され、高山病によって齎された酸欠が意識に靄をかけている。
しかし強大な神話存在が殺意を剥き出しにして迫り来るのであれば、それを察知することはまだできる!

零姫の位置はおぼろげにしか掴めないが、土壁の反射を利用したために彼女の軌道は直線的。
ゆえに土壁の方向に炎を撃てば、必ずや零姫に命中するだろう。

最早邪竜の体内には火も闇も残っていない。
だが零姫の反転前に発射準備を始めていた一発の炎だけは、いまだ口内で燃え続けていた。
それは絞りカスになるまで邪竜の生命を奪い取った強力な炎であり、死の概念もまた極度に強化されている!




「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」



最後の咆哮!最後の炎!
それは邪竜の牙や口蓋を焼失させながら、真っ直ぐ零姫目掛けて放たれた!

217レノ:2018/06/08(金) 19:09:32 ID:???
>>210
レノは邪竜へと一直線に跳ぶ零姫に、一瞬無言で微笑み返した。
その微笑みの意味は"Good Luck"。
レノなりに尽くせるだけ力を尽くし、また、名もなき戦士達も同様だろう。持てる全てを零姫に託し、後は純粋に邪竜と零姫、一対一の戦い。
闘いの行方に幸あれ。力を尽くした戦士・僧侶の無事は、自分が保証しよう。

>>212
「サンキューなっ、後はゆっくりしてくれ。地元のヒーローさん達」

いい加減、魔力切れにより土壁を土壁たらしめる"土"がひび割れ、中のエネルギーそのものが露出する。
これ以上、土壁を同規模のまま維持し続けるのは不可能。壁は少しずつ力を失って行く。
しかし、邪竜の力が尽きるその時まで、自らの貯蔵(タンク)がゼロになるその時まで、壁に向かって魔力を送り続ける。

218ウルスラ/ハーミア(0)/零姫:2018/06/09(土) 19:15:50 ID:???
>>216
零姫
「妾の炎を耐えたことに敬意を表してやろう、竜よ!」

空中で黒い炎に転じる。
先ほど発動しかけていた闇色の、漆黒の炎に包まれた鬼へと変じる。

零姫
「臨界・・・・・無間地獄!妾は百鬼の終焉に立つ者ぞ!」

『恐怖』そのものとなり、その身の丈の数十倍と錯覚するほどの強烈な殺気を放ち突撃する。
もはや周囲への配慮はほぼ無い。
その異様な殺気を振りまく姿は直視すれば戦えぬ弱い者はそれだけで死を迎え、
本能的に近づくことを拒否するあまりに吐き気すら感じるだろう。
トカゲと見下していた相手を、かつて己の一族と対等に戦っていた竜であると認め、
愛宕山系最上位種の鬼が必ず持つという奥義の一つ、臨界を発動させたのだ。

『恐怖』と『糜爛・壊死』という劇毒を宿した両の手の爪を、
手の甲を合わせて突き出す形に構え、邪竜の炎を引き裂くように飛びこむ。
邪竜の『死』の概念は同じ闇を源流とする姿で緩和する。
もちろん無効化は出来ないだろうが、炎を突っ切る間だけ持てばいいのだろう。
鬼らしく、相手の喉を毒爪で裂き、その血を啜って失った活力を奪い返す。
闇の太陽は、ただ邪竜へと墜ちる彗星となった。

零姫
「覚えておくがいい邪竜よ、これが『恐怖』じゃ!」

219【邪竜グォルズルグ】:2018/06/09(土) 22:32:58 ID:ME/CueHs
漆黒の炎が、紅蓮の炎を貫いた。


零姫の両毒爪が、邪竜の喉元を切り裂く。


火も闇も底を尽きた邪竜の傷口からは、ただ血だけが迸る。




『……………そうか』




巨体が大きな音を立てて倒れる。


邪竜は全身から夥しい血を流していたが、やがてはそれも止まった。


その目は濁り、白い息を吐くこともない。



最後の言葉が独言なのか、それとも零姫への返答だったのかは、誰にも分からなかった。

220アーチャー:2018/06/09(土) 23:48:58 ID:???
>>219
「……終わったか。
 竜だけでも手に余ると言うのに鬼まで出てくるとは。今回は味方だったのが幸いしたな」

邪竜の最期を見届けると、ふう、と大きく息を吐いた。
戦闘の邪魔にならないようにとかき上げていた髪型が崩れ、すっかり下ろした状態になってしまっている。
尤も、アーチャー自身はそれに気づいていないようだ。

「全員無事――という訳では無いが、これだけの規模の戦闘と踏まえれば、よく生き残ったものだ」

221ニキータ:2018/06/10(日) 20:53:16 ID:???
>>219
「終わったのか?」
「ああくそ、もう限界だ…」
仰向けにぶっ倒れて、空を仰ぐ。

222名もなき戦士:2018/06/10(日) 20:53:34 ID:???
>>217-219
地方領主たちは零姫を見て気絶していたが、
全員勝利したことに笑みを浮かべていた。

223レノ:2018/06/10(日) 23:13:19 ID:???
>>219
自身や巫女、戦士、僧侶たちを守っていた土壁が、
静かに崩れ、元の地面に戻っていく。
レノが魔術の行使をやめた事を意味する。

「う…………」

激しい目眩と脱力感に、いくら気を強く持っていても
レノの意思とは無関係に膝が崩れ落ちる。

「やったのか……」

224ウルスラ/ハーミア(3)/零姫:2018/06/11(月) 20:03:57 ID:???
>>219
ハーミア
「道を違えた旧き友よ、汝の眠りに祝福を。」

大地に突き立てた剣の柄に額を当て、八竜神の流儀で弔いの言葉を投げかける。

ハーミア
「次に生まれる時はディオーネにおいで。
 八竜の仔として生まれたなら私やメイがちゃんと面倒見てあげるから。」

==============================================
ウルスラ
「やれやれ、これで打ち止めだ。倒せてよかったよ。」

かなり無茶をした影響で魔力はすでにほぼ空になり、髪も白くなっている。
鞄の中を探るが、酒は全て使い切ったことを思い出してふぅとため息をつく。

>>220
ウルスラ
「ついこの間までアレも敵だったがな。
 今じゃ義弟の家の居候として色々と雑用をしているよ。」

笑いながらアーチャーの背後から現れ、遠くにある幻影の術を解除する。

ウルスラ
「ああ、一応忠告だけしておくが
 英雄となったからには責任を持つことだ。
 千の民を救うために万の民を救える身を投げ出すなどバカげている。
 お前『も』、どうもそこらへんの自覚が薄いようだから、な?」

横に立つアーチャーの胸に軽く拳を叩きつけ、掌をヒラヒラと振りながら去っていく。

>>221
ウルスラ
「無理をさせたな、狙撃手。
 ・・・だがコレをモデルに対竜狙撃銃を作ろうなどとは考えるなよ?」

ウルスラなりに冗談を言いながら対神狙撃杖を手に取り、紙片へと分解して魔導書へと収納する。

ウルスラ
「何せ私は立射で肩を外した。」

自分の右肩をポンポンと叩いて口元だけで笑ってみせる。

===============================================
零姫
「・・・中々喰いでがあったぞ。竜よ。」

変化を解除し、爪に付着した邪竜の血を舐め失った体力を回復しようとする。

零姫
「が・・・『死』を受け過ぎたか・・・少々足りぬ・・・。」

身体から黒い煙を吹きだし、最初に現れた時の小柄な少女並の体躯へとみるみるうちに縮んでいく。
邪竜の力を利用して本来の姿へと戻っていたが、それが失われたことも影響しているのだろう。

零姫
「やれやれ、またしばらくはこの姿じゃな。」

>>ALL
零姫
「此度は人に負けたのう・・・。」

当たりをぐるりと見まわすと地面を踏み鳴らし、
土で高い足場を作り出す。

零姫
「人の子らよ、貴様らが勝者じゃ。
 勝者は勝者らしくその両足で立ち上がれ、それが礼儀じゃ!」

山の麓まで響きそうな大声で倒れている者や座り込んでいる者に喝を飛ばす。

225ニキータ:2018/06/11(月) 23:40:47 ID:???
>>224
「次は戦車にするさ…二度と撃ちたくない…」
寝返りをうってウルスラから顔をそむける。
が、零姫の大声で寝ころんだまま垂直に飛び上がる。

レーナ「あはは!器用!」
ヴェーラ「もっかいやってもっかい!」
ヴェロニカ「傑作!」
タマラ「見てた?見てた?」

226【邪竜グォルズルグ】:2018/06/12(火) 21:20:30 ID:ME/CueHs
「はい、終わりです。邪竜は完全に滅びました」

邪竜の死体を検分し終わった巫女が言った。
彼女は神剣でその心臓を破壊し、蘇生の阻止まで行っている。

「邪竜が人々に与えていた死の概念もまた消散しています。死に瀕しつつあった周辺の方々の命は、これで救われました」

「また、山神が力を取り戻しているため、汚染された周辺の環境もそれほど時を経ずに復元する見込みです」

「兵士の方々に殉職者が出てしまったことは残念ではありますが、邪竜の脅威度を考慮すれば、この犠牲者数は最小限のものであると考えています」

「――――どのような観点から見ても、これは考え得る限り最上の結果であると言えるでしょう」

巫女は剣を鞘に収めた。

「理想的な勝利を得られることができたのは、間違いなく皆様の尽力の賜物です。
もっと悲惨な結末を迎える可能性も十分にあり、私自身もまた死を覚悟していました。ですが、そうはならなかった。
心から感謝しています――――巫女としてだけでなく、わたし個人としても」

「本当に、ありがとうございました」


降り続いていた雪は、いつのまにか止んでいた。
積雪が下山の障害となることを気にする必要はないようだ。
この時期の山頂の気温は氷点下を下回るはずだが、山は不思議に温かい。


【邪竜グォルズルグ】 ――――――――――――――――→ END

227名無しの魔術師:2018/07/08(日) 02:40:53 ID:ME/CueHs
【試験】ここだけ魔術のある世界 置きレス進行スレ【運用】
jbbs.shitaraba.net/bbs/read.cgi/otaku/7220/1311437263/


>121 名前:名無しの魔術師[] 投稿日:2011/09/09(金) 05:32:44 ID:cULzU2fk
>>>110 >>119
>結果のみを以って言うならば、エミヤの行動の多くは良い結果を出さずに終わってしまった。
>そうなってしまったのは、彼の判断力不足というよりはヒントの少なさが原因と言える。
>手持ちのピースが少なすぎれば、自然と誤った完成図を想像してしまう確率も大きくなる――不運な事に、ここでそれが起きた。
>
>エミヤは『穴』に向かってナイフを投擲するが、『風音』が響くまでに3本も投擲する余裕はなく。
>ゆえに2本目を投げたところで次の行動に移らざるを得なかった。
>『穴』を割るように突き刺さる、2つの刃。
>周囲の肉が裂け、新たな傷口を生む。
>
>『風音』が、迫る。
>エミヤは大百足を守るために手元のナイフを投げる。やはり風はナイフを切り裂けない。ここまでは予想通り。
>だが、実際それは当初の目的をほとんど果たせず、二人に平等に襲いかかった。
>――このような事態を引き起こした原因は、風の性質とナイフの形状にある。
>金属の刃ならともかく、気体の動きである風をナイフで遮る事は出来ない。
>『風』は鉄を破壊できないが、ナイフに直撃しなかった大部分の風は、問題なく標的へ直進する。
>骨組みだけの傘で雨風を防ぐようなもの。傘は壊れずとも、持ち手は濡れてしまう。
>
>二人の肉が裂け、鮮血が周囲に飛び散る。
>大百足は防御に専念していたため、傷はやや浅く部位も腕などに集中しているが、先に受けた肉塊の体当たりのダメージが大きい。
>二人とも、急所は無事であるもののかなりの出血量である。傷も塞がってはいないため、このままでは大量出血によって行動不能に陥る危険性があった。
>
>その上で、敵は更なる追い打ちをかける。
>『穴』が蠢き始めたのだ。
>汚らしい音と共に、『穴』から(正確にはナイフの刺さった隙間から)黄緑色の液体が噴射。
>驚くべき速度と少なからぬ量のそれが、二人に向かって放たれる。
>
>――幾度も修羅場を乗り越えてきたエミヤならば腹部に激しい打撃を受けて、あるいは大量にアルコールを摂取して、盛大にゲロゲロ吐いたことがあったかもしれない。
>もしそうであれば、胃の内容物をすべて失い、なにも出る物が無くなった後に出た、自分の『胃液』を見たことがあるだろう。
>――女郎蜘蛛と懇意にしている大百足ならば、「対外消化」という特殊な消化方法を、知っているかもしれない。
>妖怪ではない一般的なクモ類の多くは、獲物を食らって体内の胃腸で消化するのではなく、獲物に直接『消化液』を注入し、肉をドロドロに溶かしてからそれを啜る。
>
>二人は気付いたかもしれない。液体の正体は、まさにそれ……『胃液』に近い、ある種の『消化液』であるということを。
>
>197 名前:エミヤ[sage] 投稿日:2011/10/19(水) 02:46:00 ID:???
>>>121
>驚愕に顔を歪める間も無く、風に身を裂かれる。
>攻撃に備えてはいたが最低限でしかなく、先に負傷していた大百足に近い損傷を負う事となった。
>バランスを崩しそうになるが、慌ててその場に踏み止まる。
>
>(何やってんだ、俺は)
>
>自身の、呆れ返る程の馬鹿さ加減に思わず笑いそうになる。
>しかしそれも痛みに阻まれて、愉快さと不快さとが混じり合って、不思議と冷静になる事が出来た。
>
>――損傷は激しいが、放っておけば良い。気にしても気にしなくとも嫌でも勝手に塞がる。
>――蠢く穴から噴射された液体の性質、確信は出来ないが予想は出来る。触れてはいけない。
>
>『穴』が蠢くと同時に、無意識に身体は回避に移っていた。
>『肉塊』から見て左方向へと駆け出す事で、結果的に液体……『消化液』の範囲からは外れるだろう。
>もちろん、噴出量があまりに多ければ回避の保証は無い。
>
>「投影、開始」
>
>『肉塊』の動向から目を逸らさず呪文を口にする。
>言葉が紡がれると同時に、エミヤの手中には一対の双剣『干将・莫耶』が収まっていた。
>
>ナイフを用いず敢えて新たに投影を行ったのには理由がある。
>一つは、戦力の補強。もう一つは、強力な武装を投影する事による“影響”の確認である。
>
>干将・莫耶は通常の武装を遥かに上回る名剣だ。
>しかしエミヤにとっては非常に慣れ親しんだ剣でもあり、投影の際に消費する魔力は通常より僅かに増すだけで、負担も同様であった。
>『少女』の魔術(超能力?)の影響下での投影は、如何な事になるのか……

228名無しの魔術師:2018/07/08(日) 02:41:39 ID:ME/CueHs
→再開

229怪異:2018/07/09(月) 00:58:06 ID:???
>>227-228
液体を噴射された大百足は、咄嗟に横に転がり回避を実行した。
或いは路地があればそこに逃げ込んだかもしれない。
しかし体に変化の生じている大百足なら回避しきれない可能性もある。

「ふぅ、どうしたものかね。
 坊やは無事かい!?」

ひとまずエミヤに声を掛け、液体が地面等に触れたらどうなるか観察してみる。

(そういえば、あの干物はどうしているんだ…
あいつは何か知っている素振りをしていたが)

230名無しの魔術師:2018/07/11(水) 14:29:53 ID:ME/CueHs
消化液が『肉塊』の『穴』から迸る。
おびただしい量の噴出ではあったが、二人は横方向に回避することで直撃から免れた。
液体に浸された道、土、石、そして草が、刺激臭のある煙をブスブスと放ちながら急速に溶かされてゆく。
これを人間が浴びれば、衣服もろとも肉を焼かれるはめになるだろう。

エミヤは、干将・莫耶の投影を試みる。
それは問題なく成功したが、やはり余剰の剣が次々と生み出されてゆく。
初めてナイフを投影した時よりも、新たな剣の出現が速い。『肉塊』に接近しているためか、あるいはこの力の影響を受け続けているためか。
個々の投影による魔力消費が少ないため大きな問題ではないが、長く放置すれば魔力を失ってゆくことになるだろう。

新たに現れる干将・莫耶の形はやや歪で、それぞれ大きさや形状がどこかおかしい。
それは徐々にではあるが深刻化しており、おそらくその特性や能力も、本来のものとは異なってゆくことだろう。
ただし、自らの意思で投影した干将と莫耶だけは間違いなく完全なものだ。
次の投影も、最初の一刀だけは上手くいくだろうか? それはわからない。


大百足は、付近に存在する唯一の避難場所であった路地にその身を隠していた。
――――消化液を浴びた地面をつぶさに観察していた彼女は、ある違和感を覚える。
風の刃やナイフ投擲によって『肉塊』を含む全員が少なからぬ出血をしているというのに、地面に血液がほとんど飛び散っていないのだ。

干物と遭遇した場所は離れており、たとえ干物がその場から動いていなかったとしても、その姿を見ることはできない。
切断された下半身は、今も付近に転がっている……だが、その位置は変わっているように思える。
この場所に二人が来たときは、もう少し離れた場所に落ちていたはずだ。ちょうど、消化液が落下した場所に。


『穴』は消化液の噴出を停止している。どうやら無制限に噴射できるものではないらしい。
だが『穴』の奥からは不穏な音が聞こえており、おそらくは第二波を分泌中なのであろう。




   『ビッ』                  『ビッ』


 『ビッ』                『ビッ』



そこへ、『風音』が現れる。
二人にそれぞれ二本ずつ、それは迫っていた。
ただし、大百足に向かう方の風は、路地によって遮られてしまうように思える。

231エミヤ:2018/07/11(水) 22:07:51 ID:???
>>229
「こっちは気にするな! まだ大丈夫だ!」

決して浅くない傷を受けつつも、それを感じさせない動きで肉塊との距離を取る様が見えるだろう。
また、エミヤの周辺には干将と莫耶が幾つも生み出されていくが、彼はそれを消滅させる事をしていない。
歪なそれらを用いて、反撃を仕掛けるつもりなのだろうか。

>>230
(下手に近づくとアレに直撃しかねない、となると接近攻撃は得策じゃない。
 ――なら勝手に出てくるコイツ等が使えるかどうか、試してみるか)

刹那の思案の末、投影した干将と莫耶を肉塊へと一直線に投擲。
間を置かず、続けて干将・莫耶が備える能力を発動させる。
夫婦剣としての特性――干将・莫耶は、どれだけ離れていようと互いを磁石のように引き合わせるというものだ。
今までの戦いでも、エミヤが幾度となく助けられてきた能力の一つである。

順当に能力が発動したのならば、生成される干将と莫耶の群れが、投擲された干将・莫耶へ続くように飛来する事となるだろう。

「ッ!!」

しかし結果を見るよりも先に、大百足と同じく路地へと逃げ込むようにして『風音』からの回避を試みる。

232怪異:2018/07/12(木) 01:04:19 ID:???
>>230-231
「血はどこだ……?それに干物の下半身も」

消化液の観察をしていたら思わぬ疑問が湧いた。
咄嗟に自分の身体を確認し、辺りも確認する。
下半身は消化液に溶かされたのだろうか。

エミヤも路地へと入ってきたようだ。
唯一の避難場所ということであれば、今は同じ路地にいるだろうか?
そうであればエミヤの傷の具合も確認する。
風音は遮蔽物があれば防げるだろうが、厄介な攻撃には変わりない。
遠近の攻撃手段を擁しているあれは一体どうやって生まれたのだろう。

233名無しの魔術師:2018/07/13(金) 08:54:25 ID:ME/CueHs
エミヤは、干将と莫耶を肉塊に投擲する。
その速度は、彼の想定よりもかなり遅いものだった。
地面に転がる干将・莫耶のいくつかが、投擲された両剣を勝手に自らの方へと引き寄せてしまったのだ。
干将・莫耶の持つ性質が、歪んだ形で発現しているらしい。

それでも目標に到達することはでき、『肉塊』にやや浅く突き刺さる。
目論見通り、生成された干将と莫耶たちもまた、『肉塊』に飛来していった。
その速度にはばらつきがあり、本来の剣のように速やかに後を追うものもあれば、緩慢に飛ぶものもある。
しかし、それでも全ての干将と莫耶が『肉塊』に命中した。

それを見届ける前に、エミヤは大百足が隠れる路地に転がり込む。
ちょうどその瞬間に風の刃が迫り来たが、やはり遮られ、二人には届かなかった。


大百足は周囲を観察する。
干物の下半身は、やや離れた場所に転がっている。
上半身同様、血まみれではあったが切断面から流血している様子はない。
二人がこの場所に来た段階で既に傷だらけで、切断面を含む全身の傷口がもぞもぞと蠢いており、治癒(蘇生?)しつつあるようだ。
風の刃や消化液、干将・莫耶の流れ弾を食らった形跡もなかった。
そして今現在、下半身は干物のような乾いた状態ではなく、とても――――みずみずしい。

さらに、彼女はエミヤの負傷を見る。
風の刃による裂傷を全身に受けており、出血が少なくない。ただし重要器官は無事である。
彼女自身は、風の刃と鋭利な骨の攻撃によって右腕が潰されていた。

ただし、『肉塊』もまた明らかにダメージを負っていた。
数多の干将・莫耶で負った傷口から血液が滴り落ち、地面に血溜まりを作っている。
この戦場の、唯一の血溜まりだ。





     『ビッ』
 『ビッ』
        『ビッ』
    『ビッ』





『風音』が聞こえるが、それは先程大百足を狙ったものと全く同じ方向からのものだ。
おそらく同じ軌道を取り、同じように阻まれてしまうだろう。
この風の刃は鋭利ではあるものの打撃力は低く、石壁の同じ場所を連続攻撃したとしても破壊には時間がかかるはずだ。
一見すると意味のない攻撃ではあるが……何らかの策であろうか?

234エミヤ:2018/07/16(月) 03:01:29 ID:???
>>232-233
(“質”に差はあっても能力自体は変わってないみたいだな。
 “壊れた幻想”を使えば、威力や規模に差はあれど魔力の奔流によるダメージは与えられる……か?)

数多の干将・莫耶が命中した事で、追撃の準備は完了している。
“壊れた幻想”を発動させれば、おそらくは『肉塊』を内部から炸裂させる事が出来るだろうが――選択肢の一つに留めておく。

また、大百足がエミヤの負傷具合を観察したのならば、更に気が付く点が一つ。
負傷した部位の傷口が段々と塞がりつつある。それに伴い、出血も治まりつつあるようだ、と。
魔術には『自己再生(リカバリー)』の能力を付与させる物があるが、その類だろうか。

「今の風音、変だな」

ふと、エミヤが口を開く。

「あんた(大百足)を狙ったのと同じ方向からで、路地の壁に阻まれる筈なんだ。
 現に、俺達に届いちゃいない。でも、おそらく四つ全てが同じ軌道で攻撃してる。
 壁を破壊するつもりだって言うなら、さっきの液体を飛ばす手段があるのにだ」

「“路地に居れば風による攻撃は届かない”――そう思わせて路地に俺達を留める事で、何かを仕掛けるつもりかもしれない」

「……加えて言うなら、俺達が流した血が殆ど飛び散ってないのも気になる。
 でも悠長に考えてる時間はなさそうだ。一度出て、奴に接近して仕掛けてみる。回避に専念しつつ、な」

大百足から別の行動提案が無ければ、言い終えた後に路地から飛び出すだろう。
ただし事前に宣言した通り、回避行動に専念出来るよう、攻撃に対する警戒を強めた状態でだ。

235怪異:2018/07/18(水) 09:36:35 ID:???
>>233-234
「今周囲を観察してみて思いついたんだが、あの肉塊は目が良くないか見えないんじゃないかい?
 私たちの動きや魔術に反応して攻撃を繰り返しているが、それを遮る壁は動かないから認識出来ていない。
 だから同じ軌道の攻撃を仕掛けてくる」

おもむろに干物の下半身を指さす。
既にみずみずしくなっていて干物ではなくなっているが

「それに、あれはさっきからいるのに攻撃を受けているように見えない。
 少しずつ、ゆっくりと動けば肉塊には私たちを認識出来ないのかもしれないよ」

場所を移動しているように見えるから、ゆっくりではあるが下半身は動いていると思われる。

「周囲に血がないのは、干物が少しずつ血を吸って回復を図ってる可能性なんてのはどうだい?
 ん?坊やも良く見ると傷が塞がってるように見えるが…まさか干物と同様の存在?」

真顔でそう問い質した。

「っと、話が逸れたね。行動に移すなら、なるべくゆっくり動いてみてくれないかい?
 私はそういう繊細な動きは苦手だから、なるべく目立つように動いてみる。
 もちろん向こうから攻撃が来たら回避に専念するんだよ」

そう言ってエミヤに頷いてから路地から飛び出した。
あえて大きな音を立てながら路地にいるエミヤとは反対側へと走っていく。

236エミヤ:2018/07/19(木) 20:41:14 ID:???
>>235
「……本当に動いてるな。
 なんで血が落ちてないのかと思ったけど、あれの仕業なら合点がいった。
 動いているアレに一切の反応を見せないのはあんたの言う通り、ゆっくり動いてるからかもな。試してみるか」

「ん――いや、まさか。これは体質と言うか魔術と言うか、そんな感じだよ。
 少なくともアレと同じ存在って事は無い。……たぶんな」

大百足の質問にはそのように答えた。

「分かった、よろしく頼む。そっちも気をつけてな」

――話が終わった所で、ゆっくりと歩き出す。
基本的な行動は>>234と変わらないが“ゆっくりとした動作で行う”という点が追加されている。
ただし、攻撃が放たれる等して、素早い行動が求められる場合はその限りでは無い。

237名無しの魔術師:2018/07/21(土) 22:32:40 ID:ME/CueHs
>>234-236
大百足とエミヤは、異なる速度で路地を飛び出した。
それに数秒遅れ、風の刃が壁面に多少の破損を作り出す。
飛んだ軌道は前回と同様のものであり、特段差異は見られなかった。






               『ビッ』
           『ビッ』
                  『ビッ』
              『ビッ』


再び、風の音。
予想が的中したのだろうか、それらは全て大百足に狙いを定めていた。

音は風ばかりではない。
『肉塊』に近づく二人は、その『穴』の奥底から鳴り響く剣呑な音を耳にした。
先程(>>230)同様に『消化液』を分泌しているものと思われるが、その音程が変化している。
『肉塊』の内部で『消化液』を溜めておく器官、いわば『胃袋』が、ほぼ満たされつつあるのだろう。

『穴』には、エミヤが投擲した2本のナイフが突き刺さっている。
それらは『消化液』の噴出を受けて無残に溶け落ちており、最早残骸と言って良い状態だった。
生半可な攻撃では『消化液』を阻止することも『穴』を封鎖することもできないということを、それらは証明していた。

238怪異:2018/07/26(木) 11:10:43 ID:???
>>236-237
「体質…珍しい体質もあるもんだ」

そう呟きながら肉塊を視界の中心に捉えつつ気を引く。
風の音が聞こえた。どうやらこちらに反応したようだ。

(坊やの方はどうだい?)

エミヤの動きを確認しつつ、顔を腕でかばいながら回避行動を試みる。
直撃をしてもそこまでの大きなダメージを受けることはないだろう。

「またあの消化液かい…あれは直撃するとさすがの私でもまずいね!」

エミヤへと注意がいかないよう、手じかに落ちていた小石を肉塊に投げつける。
小石程度だが、投擲速度はそこそこありこちらに注意を引けるだろう。

239エミヤ:2018/07/28(土) 00:09:00 ID:???
>>237-238
(――彼女の予想が当たったみたいだな)

風音の脅威度は下がったと見て、消化液の対応に専念するよう意識を切り替える。

(意識して投影した武装は正常に能力を発揮された。
 余剰で生み出された武装は、能力そのものは変わらなくても性能に差が出る。
 ――“壊れた幻想”ならどうなるか。いや、悠長に考えている暇は無い。彼女が囮になってくれている以上は!)


「奴より先に仕掛ける……! 巻き添えにならないよう離れてくれ!」


大百足へ呼び掛けると同時に手を翳し、肉塊に刺さった干将・莫耶へ“壊れた幻想”を発動させる。

炸裂させる対象は『穴』に近い位置にある計十本の干将・莫耶。その内の一組は最初に“投影”したそれだ。
一つ一つの威力は、全うな人間が受ければ四肢を千切りかねない程だ。
巻き添えを受けた他の干将・莫耶は魔力の奔流を受けて破損し、イメージの瓦解によって消滅するだろう。
既に残骸と成り果てたナイフ程度なら、塵芥も残るまい。無論、想定通りの効果が発揮されればの話だが。

さらに、大百足の投擲に合わせて動く。
せいぜい小石が飛んできた方向と反対に移動するぐらいのものだが、仮に消化液の放出を防げずとも、回避行動は取り易くなるだろう。

240名無しの魔術師:2018/07/29(日) 05:35:32 ID:ME/CueHs
>>238-239
十本の干将・莫耶が己の魔力によって爆裂し、他の干将・莫耶が消える。
自身の内部を発生源とする激しい熱と衝撃に見舞われた『肉塊』は、火傷と損傷の混在するグロテスクな傷口を晒け出けした。
血液と肉片が、その周囲に飛び散った。

そのメカニズムのためだろうか、“壊れた幻想”は、エミヤの予想をほぼ裏切らぬ形で現出していた。威力もまた同様だ。
だが『肉塊』はいまだ原型をとどめており、おぞましく蠢き続けている。
そして肉の異常発達による止血と補填が既に始まっており、生命力の高さが窺えた。
しかし不死身というわけではないらしく、その速度はやや遅い。


――――『穴』の蠕動は止まらない。
投擲された小石に反応したか、『消化液』は大百足のみを狙って噴射された。
回避はかなり難しい―――先程の噴射は同時に二人を襲うものだったが、今回は的を絞っているからだ。
爆発によって創られた『穴』周辺の負傷により流速が衰えていることが、不幸中の幸いと言えるだろう。

さらに、次の行動に移らんとする大百足に対して4つの風が牙を向き、腕を切り裂いた。
現時点で大百足は致命的な負傷こそ被ってはいないものの、出血量が著しい。
たとえ首尾よく『消化液』をかい潜ったとしても、このまま風を喰らい続ければ、失血死の恐れがある。

241怪異:2018/07/29(日) 23:59:09 ID:???
>>239-240
エミヤの声に従い少し離れた大百足が壊れた幻想に巻き込まれることはなかった。
しかし止まらない肉塊の消化液を回避することは出来ず直撃した。
続けざまに風も直撃し、大百足は崩れ去る。幸いなのは急所に攻撃が命中していないことだろう。

「……」

声をあげることもなく、大百足はその場に倒れこんだ。

242エミヤ:2018/07/30(月) 22:13:40 ID:???
>>240-241
(……もしかすると、この現象は“その事象が引き起こす限界を上回る事は出来ない”のか?)

壊れた幻想が齎した結果がほぼ想定通りであった事から、一つの仮定に行き着く。
だが、その是非を考える暇など無く大百足が倒れ伏す様を目撃する事となる。

「おい……っ!!」

思わず駆け寄ろうとして、理性で押し留めた。
『肉塊』が激しく動くモノを標的とするならば、大百足は攻撃対象から外れたとも言える。
無論、早急な処置が必要だろうが――急所には命中していない。その一点を頼りに、エミヤは思考を切り替えた。

(あの干物は、血を回収しているみたいだった。これだけの血が飛び散ったなら――)

あれは再び回収に来るだろう、と踏まえて動く。
まずは、大百足を確実に標的から外す為に走り出す。
彼女からは距離を取るようにして、しかし肉塊からは大きく離れないように、迂回する形で――『風音』と『消化液』を警戒しつつ。

そして走る最中、次の一手の為に投影の準備を整えておく。
このように表現すると仰々しく思えるが、エミヤにとっては脳裏にイメージを持つだけの事だ。

243名無しの魔術師:2018/08/07(火) 10:02:50 ID:ME/CueHs
>>241-242
風の刃は大百足の腕にのみ命中し、重要部位への直撃は免れている。
しかし『消化液』はそうではない。膨大な噴出量により、急所はおろか全身がそれを浴びた。
既に彼女は満身創痍であるため、その被害は大きい。
さらに、傷口から『消化液』が浸透し、表皮のみならず肉の深部までもが激しく焼け爛れた。




     『ビッ』
 『ビッ』
        『ビッ』
    『ビッ』



新たなる風音は、全てエミヤに狙いを定めている。
風の刃は目に見えず速度も高いが、軌道が直線的であるため回避や防御は不可能ではない。

肉塊は向きを変え、『穴』をエミヤに向けている。
『穴』の奥から唸る水音は『消化液』が再び合成され始めたことを示しているが、
その響きから察するに、十分な量の充填にはある程度の時間がかかるようだ。


また、エミヤの想定通り、干物の下半身が倒れ伏したままの状態で動きを始めている。
どのようにしてか周囲の状況を把握しているらしく、肉塊やエミヤが放つ攻撃の巻き添えを避けるように動いていた。

それは静かな移動であり、存在感そのものもまた希薄だ。
先程大百足が意識して探さなければ、それに気づくことはなかっただろう。

戦場には現在、今しがた負傷した大百足の血液と、壊れた幻想によって傷ついた肉塊の血液が滴っている。
どちらに接近するにしても危険であるためか、あるいは肉塊の攻撃対象になることを恐れてか、その動きは慎重だ。

244怪異:2018/08/09(木) 00:07:15 ID:???
>>242-243
「……」
(ああ…情けないね。直撃を受けてこの様かい…それに全身が焼けるように熱い)

意識を失った大百足だが、全身の痛みにより現実へと引き戻された。

(状況はどうなったんだい…)

顔を動かすのも辛い状態の大百足は、かろうじてエミヤが無事な姿を確認した。
どうやら向こうは無事なようだ。

(囮役を続けないとね……姿を晒すかい)

ぱき、と何か弾ける音が響いた。

245エミヤ:2018/08/12(日) 20:14:24 ID:???
>>243-244
(肉塊の意識を、完全に俺へと向け続ければ干物も動くか?
 信じるって言ったからには、そろそろ利になる事をしてくれよ……!)

事前に警戒していた事もあり、風音による攻撃を一つ、二つ――全てを回避した。

「投影――開始」

すかさず投影した武装、干将・莫耶を構え、肉塊の『穴』目掛けて直線的に投擲する。
おそらく、エミヤの意志に関わらず出現するであろう干将・莫耶も、それに続く筈だ。

投擲後は足を止め、出現する干将・莫耶の様子と肉塊の動向、その二点を特に注視し、次の一手に備える事にした。
しかし、何やら弾ける音が響く(>>244)と警戒を解かぬまま、そちらを一瞥するだろう。

246名無しの魔術師:2018/08/20(月) 22:00:04 ID:ME/CueHs
>>244-245
干将・莫耶の投擲には、多大な労苦を強いられた。
投影に伴い、あまりにも多くの複製品が粗製濫造されていたからだ。
手元から溢れた偽造の夫婦剣が、エミヤの足元を脛まで埋め尽くしていた。

しかもそれらの歪んだ能力は、先程(>>233)以上に強く発現する。
彼の両手に現れた正規の干将・莫耶を勝手に己の元へ引き寄せようとした。
紛い物が生み出す不本意な引力と、次から次へと生成される膨大な剣の物理的な煩わしさに、エミヤは戦わなくてはならなかった。

それでも彼は投擲を成功させ、『肉塊』の『穴』に正確に剣を命中させた。
だが、やはりその傷は浅い。複製品の反応も鈍く、追随しはじめたのは全体の4割といったところ。
しかもそのほとんどは、ようやく剣の形を留めている程度の、粗末きわまる代物だった。

『肉塊』の負傷は小さいものの、『穴』の周辺には大量の干将・莫耶が密集していた。
剣としては低質きわまりないものであるが、その個数だけは先程よりも多い。
粗悪品といえど金属の塊であることには変わりなく、『消化液』の噴出に対しては多少の妨害効果が見込めるだろう。

『穴』から響く音から、『消化液』の充填が終わりつつあるのがわかる。
『穴』は依然としてエミヤに向けられており、いつその脅威に曝されてもおかしくはない。
悪質なる濫造の投影を強制された彼は少なからぬ魔力を失っており、その対処は容易なものではないだろう。


大百足の発する音に、『肉塊』が警戒した様子はない。
彼女になんらかの技や策があるのであれば、それを実行する好機と言えた。
逆に干物の下半身は、彼女の挙動にびくりと震えて距離を取った。

そう、先程から干物は、大百足やエミヤに対して有益な行動をまったく取っていない。
ただ己だけを守り、血を集めているだけだ。

よくよく考えてみると、干物が二人と出会わなければ、このような災難に巻き込まれることもなかったわけだ。
果たして、こいつを信じて良いものだろうか?
この化物こそが、諸悪の根源ではないのか?

247怪異:2018/08/23(木) 11:06:11 ID:???
>>245-246
エミヤに向けられていた肉塊の穴は、突如地面を向いていた。
肉塊に視界的な機能があったのなら視界が暗転したことだろう。

―――――

肉塊のことを何か知っているらしい半ミイラがこう言っていた。
(人間の姿が変化(へんげ)によるものなら…………早く元に戻らんと………どう変異変貌するか)
ならば今がその時だろう。いや、状況的に街中で元の姿に戻らざるを得なかったのだ。
変化を解いたのであれば少なくとも力がマイナスの方向に働くことはなくなるはずだ。

―――――

『このまま千切って…潰して…原型も残さないようにしてくれる』

エミヤは見た。そこにいる異形、怪異を
先ほどまで倒れていた着物の女のあばらが裂け、
ずるりと上半身が空へと伸び、建物の屋根ほどの大きさになっている姿を
あばら骨に見えるものはそれぞれが動いており、まるで百もある足のようだ。
そう、彼女は大百足。東方の地で猛威を振るう怪異の一体。
そこには人の頃の姿の名残も少なく、人々からすれば恐怖の対象。討伐する対象だ。

肉塊は後ろから大百足の大きな牙に挟まれ、そのまま地面に押さえつけられていた。
顎の力は凄まじく、振り解くことは難しい。そのまま挟まれ続けていれば二つに引き裂かれるほどだ。
能力などではない、単純な力で押し切ろうとしているのだ。

248エミヤ:2018/08/26(日) 21:46:31 ID:???
>>246-247
(――投影、破棄)

自身の周辺を埋め尽くす干将・莫耶のみ消去を試みる。
おそらく、このまま行けば次は投擲すらままなるまいと判断した。
先程は個数を限定させたが、今回は『穴』に密集した全ての干将・莫耶を炸裂させようとする――が、

「え?」

その変化を見て、僅かに動きを止める。
大百足……彼女の姿が、完全な怪異と変化する瞬間を目撃した。
驚きはある。
戸惑いはある。
しかし、幾度と死線を潜り抜けてきた精神は、あらゆる動揺を吹き飛ばしてみせた。

(予定は変更だ。ここまで派手に彼女が動いてるなら『肉塊』は対応せざるを得ない筈!)

大百足の挙動に反応し、距離を取り始めた干物の隙を付いて接近を試みる。
可能ならば、そのまま全力で掴みかかり、抑え込もうとするだろう。

また、『穴』に密集した干将・莫耶は粗悪品と言えど剣。
命中したのなら、大百足が抑え込んだとて全てが弾き飛ばされる事は無いだろう。
大百足の一手でも『肉塊』が止まる気配が無ければ、無理やりにでも“壊れた幻想”を発動させる準備だけはしておく。


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