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強奪
6
:
舞方雅人
◆8Yv6k4sIFg
:2006/07/01(土) 12:26:22
端本が出て行ったのを確かめると教授は手術を開始する。
綺麗な体表面を傷つけないように慎重にメスが入れられ、下腹部が切り開かれる。
人工心肺装置が沙由里の脳を死なせないように体液を循環させている間に手術を終わらせてしまわなければならない。
手馴れたスタッフたちは黙々と沙由里の躰に処置を施していく。
内臓を取り出してしまい、代わりに水素タンクや燃料電池のシステムなどが埋め込まれる。
子宮も取り払われて人工の膣が設置される。
肺は空気中から酸素を取り入れるポンプとフィルターに置き換えられる。
肛門はアナルセックス用に形を整えられ、形良い胸には予備のバッテリーが内蔵される。
顔も表皮を剥がされ眼球を高性能カメラに、鼻をにおいを感じるセンサーに、耳には音響を感じるセンサーが、口は形を整えてオーラルセックス用に作り変えられる。
筋肉は人工の駆動機関に置き換えられ、一時的なら通常男性の数倍のパワーが発揮できるようになる。
表皮は特殊なプラスチックを注入され、体毛などはまったく無いすべすべしたコーティングを施される。
10時間にも及ぶ手術の後、沙由里の躰は芸術品として完成した。
沙由里は徐々に意識が戻ってくるのを感じていた。
だが、躰の感覚はまったく無い。
暗闇の中に捕らわれたような感じだった。
ここは・・・どこ?
私はいったい?
誰か・・・誰か助けて・・・
『よし、補助システムが起動したぞ。基本プログラムのインストール準備だ』
どこからか声が聞こえてくる。
誰?・・・誰なの?
思い出そうとするが頭が上手く働かない。
それどころか躰がまるで無くなってしまったかのよう。
私はどうなっているの?
怖い・・・怖いよう・・・
『首から上を起動しろ。覚醒させるんだ』
びくんと首の辺りに電気が走り、沙由里は目を開けることができることに気が付いた。
沙由里はゆっくりと目を開けようとした。
途端にさまざまな文字や数字の羅列が頭の中に流れ込み、それを自分では無い何かが勝手に処理していく。
やがて沙由里の目は映像を伝えてきたが、それは普段彼女が見慣れている映像ではなかった。
さまざまなデータが映像にかぶさって表示され、それが沙由里を混乱させる。
「きゃぁっ!」
思わず沙由里は悲鳴を上げる。
「覚醒したようだな。私がわかるかな?」
視界に入って来た人物はあの初老の白衣を着た人物だった。
さまざまなデータが映し出されるが、何を意味するのかわからないうえに、なぜそんなものが見えるのか自体理解できなかった。
「わ、私に何をしたの?」
恐怖が沙由里を包んでいた。
自分に起こっているのは全て夢だと思いたかった。
「君はヒューマンドールになったのだよ。あとは基本プログラムをインストールすれば完成だ」
「プログラムをインストール?」
沙由里はぞっとした。
私はコンピュータになってしまったというの?
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