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強奪

2舞方雅人 ◆8Yv6k4sIFg:2006/07/01(土) 12:22:17
 「ふうん、やったじゃない、沙由里。あの蔵石さんと一緒になれるなんて、良かったね。」
 洒落たレストランのテーブルで会話している二人の女性。その片方がもう一方に対してグラスを掲げる。
 「やだ、そんなんじゃないわ。ただ、そろそろ結婚を考えないかって・・・」
 グラスを掲げられた方の女性は戸惑いながらも頬を赤く染めた。
 「何言ってんのよ、それってプロポーズじゃない。おめでとう。あーあ・・・沙由里に先を越されちゃったか。」
 沙由里の正面でもう一人の女性は、グラスを置き両手を頭の後ろに当てて宙を見上げる。
 「そんなこと無いわよ、由美香にだって健太君が居るじゃない。」
 「だーめよ彼は。いつまでたってもてんで子供なんだもん。今だにガンプラ造ってるのよ。」
 由美香は最悪というふうに両手を肩の辺りで広げる。
 「ふふふ・・・そう言いながらモビルスーツのこと詳しいくせに。」
 沙由里はくすくすと笑った。
 彼女の名前は牧原沙由里。二十六歳のOLである。長い黒髪が美しく、背はそんなに高くないのだが、すらりとしたプロポーションが見た目に背が高い印象を与えている。小柄な瓜実顔は美の極致というわけではないが、充分に整っていて美しい顔立ちをしていた。
 彼女の前に座っているのは高校時代からの親友の池上由美香で、別の会社でやはりOLをしていた。
 二人は時たまこうやって食事を一緒にして、友情を暖めあっていたのだった。
 「もう、仕方ないでしょ。ザクだドムだってうるさいんだもん。」
 「ふふ・・・健太君らしいよね。」
 「オタクなのよ、あいつは。」
 由美香があきらめたようにため息をついた。
 「それでも好きなんでしょ?」
 「うっ・・・ま、まあね。」
 「ならいいじゃない。」
 沙由里は微笑んだ。彼女と違い由美香と健太の付き合いは短大生の頃からである。長い付き合いなのだった。
 「そ、それよりも・・・そういえば、沙由里に付きまとっていたあの端本って奴どうした? まだちょっかい掛けてくるの?」
 端本の名前を出されて沙由里は少しいやな顔をする。
 端本とは、沙由里のアパートの近くに住む男で、一時期彼女に対してストーカー行為を行った男である。
 沙由里の郵便受けには端本からの一方的な愛の告白文が毎日のように届けられ、出勤時や帰宅時にもどこからともなく現れては、彼女の姿を見つめていた。
 さすがに沙由里は気味が悪くなり、警察へ届け出たものの、数日パトロールして姿を現さなければそれっきりになってしまい、やがて端本はまた付きまとい始めるのだった。
 結局沙由里はそのことを付き合い始めていた蔵石和夫に相談したところ、蔵石は会社の行き帰りに彼女を送ってくれるようになり、それを見た端本はそれっきり姿を現さなくなったのだった。
 そのこともあり沙由里と蔵石は急速に仲良くなって、先ごろ蔵石から結婚のことを持ちかけられたのである。
 「うん、もうあきらめたみたい。最近は見てないわ。」
 「よかった、あんなストーカー野郎は死んじゃえばいいのよね。」
 「まったくだわ。気色悪いんだもんあの男」
 由美香の言葉に沙由里はうなずいた。
 「見るからに不潔って感じじゃない? お風呂だって入ってなかったりして」
 「いやだぁ・・・やめてよ。美味しくなくなるじゃない」
 顔をしかめる沙由里。
 「あ、ごめんごめん。もうやめるね」
 由美香は両手を前で振って話を打ち切った。端本のことを話しても食事が美味しいはずが無いのだ。
 二人はそれぞれ適当な話題に切り替えて再び食事を楽しみ始めた。


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