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強奪
12
:
舞方雅人
◆8Yv6k4sIFg
:2006/07/01(土) 12:30:14
夜8時。
蔵石は沙由里のアパートにやってきていた。
沙由里の部屋に明かりがついているのを確かめると、蔵石は階段を上がって沙由里の部屋のベルを鳴らす。
「はい、どなたですか?」
扉の中からは久し振りの沙由里の声がする。
「蔵石です。開けてください沙由里さん」
「はい、お待ち下さい」
その声で鍵の開く音がする。
すぐに扉が開き沙由里が顔を出した。
だが、そこにいたのは蔵石の知っている沙由里ではなかった。
沙由里は髪を後ろで纏め、黒いレオタード姿で立っていた。
しかも部屋の中だというのに黒革のブーツを履き、長手袋まで嵌めているのである。
「さ、沙由里さん?」
「メモリー照合。蔵石和夫と確認。捕獲いたします」
蔵石は突然すさまじい力で家の中へ引きずり込まれた。
「うわぁっ!」
何もできないうちに蔵石は沙由里によってねじ伏せられてしまう。
「ふふふ・・・サユリ、そいつを縛り上げるんだ。身動きできないようにな」
部屋の奥から声が聞こえる。
「はい。雄司様」
沙由里はものすごい力だった。
蔵石は抵抗したくても動くことができない。
やがて蔵石は椅子に縛り付けられてしまった。
「雄司様。ご指示通りにいたしました」
汗一つかかずに居る沙由里を蔵石は何がなんだかわからずに見上げる。
その白い肌がつやつやと多少不自然な輝きをしていることに彼は気が付いた。
「沙由里さん、いったいどうしたんだ。これはいったい何の真似だ」
だが、沙由里はまったく表情も変えずに蔵石を見つめていた。
「沙由里さん!」
「ふふふふ・・・無駄だよぉ。彼女はもうボクの物なんだ。お前なんかに返事したりはしないんだよぉ」
「な、」
蔵石が目をやると、そこにはあのストーカー男の端本が立っていた。
「は、端本! 貴様、彼女に何をした?」
「彼女はもうボクのヒューマンドールなんだもんねぇ。ボクだけの物なのさ。そうだろ? サユリ」
いやらしげな笑いを浮かべている端本に沙由里はうなずいていた。
「はい。私は雄司様のものです」
「さ、沙由里さん・・・」
「ほら、こいつに自分の事をちゃんと教えてやらなけりゃだめじゃないかぁ」
端本は少し怒ったようにサユリに命じた。
「はい、申し訳ありません雄司様。蔵石和夫に申し上げます。私は端本雄司様に所有されるヒューマンドール社のヒューマンドール、HD-0163サユリです。ご了解いただけましたでしょうか?」
無表情でそう言う沙由里に蔵石は愕然とした。
「人形? 人形だというのか? これが」
「そうだよぉ。沙由里ちゃんをボクのものにするためにお人形になってもらったんだよぉ」
「な、なんてことを・・・」
両手を後ろ手に縛られた蔵石は歯噛みするしかできない。
「さて、ヒューマンドール社の人が引き取りに来る前に、ぼくはサユリで楽しませてもらうとしよう」
「き、きさまぁ・・・何をするつもりだ!」
「おいで、サユリ」
「はい、雄司様」
サユリは蔵石には目もくれずに端本に従い奥の部屋へ行く。
そしてわざわざドアを開け放したまま端本はベッドの上に寝転んだ。
「さ、沙由里さん!」
蔵石は悔しさに唇を噛んでいた。
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