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0さん以外の人が萌えを投下するスレ

60514-649 人事部 1/4:2008/12/21(日) 22:10:49
「こちらとしてもまことに心苦しいのですが、どうぞご理解ください」
「はぁ……」
 なで肩の男は怒ることも落胆することもなく、達観しているようにさえ見えた。

 人事部人材構築2課――内部から「肩叩き課」と呼ばれるこの仕事は、簡単に言うとリストラの対象になった社員に首切りを宣告し、退職を勧めるというものだ。
 論理的に話を進めて相手の感情を逆撫でしないよう配慮し、会社の意向を伝えてもう逃げ場はないと諭す。
 決して気持ちの良い仕事ではないが、かといってエネルギッシュに営業先に愛想を振りまく性分でもないので、佐伯は「肩叩き」であることにそこそこ満足していた。
 
 退職勧奨を受けた人間は、様々な反応を返した。
 逆上して掴みかかる者、顔を覆って泣き出す者、動揺のあまり支離滅裂な話を始める者。
 自分より1周りも2周りも年上の社員が心を乱す様子を見ていると、哀れみと軽蔑がないまぜになったような複雑な感情が沸いた。
 しかし、今日の男は違った。
「そうですか」「はい」「わかりました」、無表情にこの3つの言葉を繰り返し、反論もせずに帰っていった。
 その落ちた肩は絶望のためにゆがんだわけではなく、生まれ持った骨格なのだった。
 佐伯は彼に関連するファイルを手に取り、書類をたぐった。 
 古河実、35歳。営業部所属。借り上げ社宅在住。実家は自営業の定食屋。未婚、扶養家族なし。
 いかにもパッとしない営業マンのデータだが、佐伯にはどうしても気になる点があった。

 古河が入店してからきっかり5分後、佐伯は居酒屋ののれんをくぐった。
 目当ての男はカウンターの隅にひっそりと座っていた。
「古河さん、偶然ですね」
「あぁ、人事部の……」
「佐伯です。お隣いいですか」
「どうぞ」


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