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0さん以外の人が萌えを投下するスレ

127唐突に聖職者萌え:2005/11/07(月) 22:35:07
息を吸うのも吐くのも苦しい、死にかけの獣のような、あわれにあさましい声にもならない声が聞こえる。なんだ?これはなんだ?
「……」
遠くの方から、私の名前を呼ぶ声がした。ああ、その名前を呼ばれるのは久しぶりだ。ずいぶん昔、父が生きていた頃…。
水に浮いているような沈んでいるような感覚の中で私の意識は飛びそうになる。
あさましい吐く息のような音は先ほどから続いている。
「、なあ?」
「…んぁっ!」
ぱち、とランプのスイッチが切り替わったように、世界がかわった。
目に入ったのは私の執務机である。磨いた机の上に黒い表紙のあの本がある。縋りきることは愚かしいと思っていても縋ってしまうあの本が、見える。
「なあ?……。ああ、どこ見てんだ?」
「や、あ、あっ」
あさましい息、甲高い震える声、ああ、私の声だ。耳の裏に、私をファーストネームで呼ぶ男の、恥も知らない熱い息が吹きかかる。
私は執務室の壁に手をついて、どうにか立っている。黒い衣の中で、この恥知らずな男の手が動く。
「なあ、……(私の名前だ、聞き取れない)
おまえの神さまはひどいお方だな
おまえにこんな恥辱を与える私を許している」
違う。
涙で執務机の輪郭がおぼろげになる。
「認めろよ、神などない。神などないって」
すばらしく品のよい、教養あるもの特有の発音で彼が言う。
違う、違う。
違う、神はいらっしゃる。神はいらっしゃる。
お前が今日通ってきたあの大通り、この教会までの道、その沿いにあったあたたかなひかりの灯った家々、そこに住む人々を、神は見守り、許し、愛して下さっている。
「…はぁっ…!」
信じがたく女性じみた声がのどから出て、同時に私は壁にしがみついた。
そうせねば立っても居られない。彼が嘲るように、いやはっきりと嘲りを込めて笑った。
「なあ、神さまはいまどうしてるんだ?」
違う、お前の考えは違う。
神は今皆を見守り、柔らかくその愛で包んでいる。
神は今、皆を、幸せな夜の眠りについている町の人々を祝福している。
「お前の神さまは冷たいな?」
違う。
違う、神は遠くから私たちを見守って下さっている。
全身から力が抜け、私は床に座り込んだ。壁にもたれる私を、彼が蹴った。
痛みは感じなかった。


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