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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」
99
:
エヴァンジェSSその18
:2006/10/29(日) 23:12:06
タンクから、悲鳴に近い信号が来た。
だがライガーが動くよりも早く、手遅れになった。
オラクルが撃ち放った、一発のリニア弾。それが、水平に命中した。丁度、後ろへ突き飛ばすような形である。
もはや耐えきれず、タンクが水門に引き込まれた。
恐ろしい勢いで、巨体が激流の奥に消えていく。
装甲が壁と擦れる音が、断末魔のように響き渡り――それも、じきに止んだ。
全く想定していなかった死に方だった。
――四脚は。
ライガーは、救出目標の四脚に目をやった。
と、そこで初めて、ライガーは四脚のモノアイから光が失せていることに気がついた。
「重装四脚が、ブレードで斬られたくらいで死ぬはずがない」と、救出活動に入ったのだが――どうも、とっくに助からないものだったらしい。
死因は分からないが、とにかく復活も無理そうだった。
これも、全くの想定外だ。
とすれば、
――一機。ついに戦力差は無し。
ライガーのAIが、その情報を分析した。
余計な反省は省いて、いつも通り最適の戦略を出力しようとする。
だが、容易ではなかった。
一機で、このオラクルというACに勝つ――それが、とてつもない困難と認識されていた。
あくまでも『性能』なら、圧倒的に勝っているはずなのだが――『性能』とは別次元の段階で、オラクルはAI達を寄せ付けない何かを持っているらしい。
そんなライガーに、オラクルが悠然と向き直った。
オレンジのアイカメラが、ライガーをじっと見つめている。
――攻撃される。
そう断じ、ライガーは身構えた。
だが予想に反して、オラクルは何も撃たなかった。代わりに、右手で天井を――正確には、遙か上で口を開けている、外へと通じる天窓を指差した。
ライガーが意図を汲みかねていると、オラクルはブーストを噴射させ、飛び上がった。レーザーキャノンで天窓のガラスを割ると、そこから外へ飛び出していく。
砕け散ったガラスが、陽光に照らされ、空中でキラキラと輝いていた。
――追え。
埋め込まれたAIが、ライガーを奮い立たせた。
勝てない。オラクルとこちらの間には、決定的な断絶がある。
それを理解していながらも、ライガーはブーストを噴射し、外へと飛び出した。
途端、地下とは比べものにならない、圧倒的な光量が視界を白く塗りつぶした。
日光だった。
このままでの戦闘は危険、と判断し、ライガーはさらに上空へ駆け上った。近接戦闘を避けるためだ。
半秒ほどで、カメラ機能は回復した。
辺りを見ると、正午の太陽が真南で燦然と輝いている。
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