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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

98エヴァンジェSSその17:2006/10/29(日) 23:11:28
 恐らく、手持ちの武器全てを撃ち込んでも、撃破不可能なほどの装甲を有しているはずだ。
 ここで必要なのは、性能ではなく小手先である。
 だから、タンクの幾らか後ろに見える、三つの『水門』を狙った。
 高威力のレーザーを受けて、水門の一つが――正確には、水門を上げ下げする油圧装置が、吹き飛んだ。
 分厚い鉄の水門板が、重力に引かれるまま落下し、そのまま水の通路を塞いでしまう。
 水門の一つが、閉じられた。
 エヴァンジェはもう一つの水門も、同じように閉じてやった。
 すると――水の流れが、変わる。
 今まで三つの水門へと流れていた、地下水道の水量だが――今やたった一つの出口へと流れ込んでいた。
 単純計算で、水量は三倍である。
 台風の後のような、猛烈な急流になった。
 操作を誤れば、ACでさえ容易く足を取られてしまうだろう。
 そして、それほどの水量を吸引している、最後の水門は――丁度タンクの真後ろで口を開けていた。
 仕上げとばかりに、エヴァンジェはリニアキャノンを呼び出し、敵タンクへと狙いをつける。
 敵は、キャタピラではない。ホバータンクだ。
 地面から浮いている以上、必然的にグリップが利かない足種なのだ。
 強い衝撃で押してやれば――流れに乗って、さぞやよく滑るだろう。
(……こちらの方が、『手札』が多かったな)
 上唇を舐めつつ、エヴァンジェはトリガーの指に力を込めた。


     *


 二脚『ライガー』が、取り付かれたように水に垂れたコードを切断していると――妙な音が聞こえ始めた。
 ハンマーで金属を叩くような、鈍い音。それが連続して聞こえてくる。
 危機を察して、ライガーがその方向を振り向くと――そこには、リニアキャノンに殴打される、タンク『バッファロー』の姿があった。
 ブーストで懸命に踏ん張っているようだが、一発貰う毎に、明らかに位置が退がっている。
 だけでなく、脚部が箱形なのが災いして、水流に足をとられているようだった。
 リニアの反動以外にも、水自体の力で、じわじわと水門の方に引き寄せられていく。
 ――救援を。


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