したらばTOP ■掲示板に戻る■ 全部 1-100 最新50 | |

「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

97エヴァンジェSSその16:2006/10/29(日) 23:11:07
 しかし――垂らされた電源コードに、ある程度近づけば話は別だ。近距離であれば、電流は水の抵抗を押しのけ、見事機体に届くだろう。
 もっとも、その通電現象が致命的威力を持つ範囲は――直径十メートルもない。
 エヴァンジェ自身、ひっかからなけば、その時はその時と割り切っていた。
 けれど、
「……思いの外、効果があったな」
 エヴァンジェは、つまらなそうに呟いた。
 そうしてから、二脚とタンクの観察に戻る。
 彼らの動きによって、今後の戦略を固めるためであったが――意外なことに、連中はまだ行動してこなかった。
 思わせぶりな仕草で、オラクルと、もはやピクリとも動かない四脚を交互に見るばかりだ。
(……なんだ?)
 AIらしからぬ長考に、エヴァンジェは眉をひそめる。
 が、ある時二脚が動いた。
 身構えるオラクルだが、予想に反して、二脚は四脚――正確には四脚の死骸へ向かってしまった。
 エヴァンジェの方など、振り返りもしない。
 後には、タンクが――それも、右腕武器をパージし、火力を半減させたタンクだけがぽつねんと残されている。
 奇妙な行動だった。
 ここでタンクを一人残すメリットが分からない。同時に、四脚を助けに行くメリットが分からない。
 さらには、四脚の周りには多くの電源コードが垂らされており――迂闊に威力範囲へ踏み込めば、あっとういう間に戦闘不能だ。
 そんなことも分からないだろうか。
 まさか、電子機器の集合でしかないAIに、青臭い仲間意識があるとも思えないが――。
「いや、そうか」
 エヴァンジェが、小さく呟いた。
 降ってきた答は、『そうだったのか』、というものでもあり、同時に『やっぱりな』、というものでもあった。
「三流め」
 にやりと笑うと、エヴァンジェはスティックを倒し、残されたタンクへと向かった。
 健気にレーザーライフルが撃たれるが、回避できる範疇だった。
 EOも――恐らく、壊れてしまったのだろう――撃ってこないため、不意打ちを警戒することもなかった。
 さらに言えば――敵の二脚は、今四脚の周辺に垂れたワイヤーを、しきりに切断しているので、援護が来るとも思えない。
「それではな」
 ある程度近づいたところで、オラクルはレーザーキャノンを撃った。
 標的は、タンクではない。


新着レスの表示


名前: E-mail(省略可)

※書き込む際の注意事項はこちら

※画像アップローダーはこちら

(画像を表示できるのは「画像リンクのサムネイル表示」がオンの掲示板に限ります)

掲示板管理者へ連絡 無料レンタル掲示板