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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

87エヴァンジェSSその6:2006/10/29(日) 23:05:23
「……マーシャルか」
 応じると、オペレーター――マーシャルは早速切り出した。
『ああ。聞こえてたか、よしよし。
いきなりだが……いっそ逃げたらどうだね』
 その言葉に、エヴァンジェの眉が吊り上がった。
 乱暴にスティックを捌き、T字路を左に折れながら、
「意味が分からんな」
『……つまらない意地を張らないでくれ。お前だって分かっているだろう? 今回の敵は、普通じゃない。安全策を採るべきだ。
ぎりぎりまで粘って、敵と地形のデータを収拾したら、とっとと逃げよう。タイミングは俺が指示する』
 ベテランのオペレーターらしい進言だった。
 安易に『死んでこい』とは言わない。
 かといって、『大事をとって帰還しろ』とも言わない。
 死ぬ寸前まで働いてから、全力で逃げ出せ――平然と、限界を要求する言い方だった。
 しかし、エヴァンジェは一顧だにしない。
「だめだ。こんなところで立ち止まるわけには、いかない」
『……おいおい』
 構わず、エヴァンジェは続けた。
「この依頼は、全額前金だった。退却などしたら、それこそレイヴン生命の危機だ」
 馬鹿高い前金だけをふんだくって、肝心の任務からはスタコラ逃げ去ったレイヴン――そんなものが、信頼されるはずもなかった。
 それにこの依頼自体は、『辺境に逃げ込んだキサラギ社員を連れ戻す』、というごく簡単な依頼だ。
 護衛に強力なACが――AIで動く無人ACがついている、ということでエヴァンジェが駆り出されたわけだが――ここで引き下がっては、やはり聞こえが悪い。
 例え、その護衛が規格外の化け物であろうと、周りはそんなことは気にすまい。
 実際の強さは、闘った者にしか分からない。
 アライアンス戦術部隊の隊長が、ごく簡単な依頼で躓いた、という悪評だけが矢のように広がっていくだろう。
 そうなれば――エヴァンジェが今まで築いた評判も、地に落ちてしまう。
『……だがな……』
 言いかけるマーシャルに、エヴァンジェはさらに被せた。
「三十万だぞ」


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