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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

74忠実EOのオメガSSその19 ◆8G/OIpNBb2:2006/10/05(木) 20:42:10
 本来なら、味方の部隊が到着するまで待つべきである。腕利きのレイヴンにしては、少々無責任な態度だった。
 けれど――大老は、彼女の気持ちも理解できた。
 戦いの後半、オメガが発した気迫は尋常でなかった。
 人間の本能を直接刺激する、そういう『恐さ』があった。
 そういったものが振りまかれた空間から、遠ざかりたいというのは――自然な反応ではあるだろう。
 もっとも、単に後続のMT部隊の様子を見に行った、という線もあるが。
「しかしな」
 思っていると、マックスが不快げに言った。
「品性下劣な、最悪な奴だったな。オメガって野郎は、最期まで」
 その感想に――『常人』としてはごく当然の感想に、大老は口元を歪めた。
「そうだな」
「往生際が悪いしな」
「……マックス」
 笑みを深めながら、大老は言った。
「何を言ってる。最高の死に様じゃないか、あれは」
 遠くで無線機が鳴っている。
 階下の格納庫から、MTが駆動する音がした。
 二人の付近を、一般隊員が通過していく。その靴音が、通路に反響し、やがてゆっくりと消えていった。
「……そうか」
 長い沈黙の末、マックスはそうとだけ言った。
 大老は頷きを返す。
 どんな理由かは分からないが――後半のオメガには、気迫があった。それも、見ているこちらさえ心胆が冷えたほどの、濃密な気迫だ。
 その闘念に、怒りに導かれるまま、全ての精力を総動員して、敵わぬ敵に向かっていく。
 そしてその果てに、燃え尽きていった。
 戦士としては申し分ない、充実の死に様だった。
 もっとも、オメガのような男でも、その域に到達できたかは、まさしく神のみぞ知る、だが。
「奴には勿体ないほどの死に方だよ」
 大老が呟いた。心なしか、年相応の疲労が匂っていた。
「……できるなら、代わりたいか?」
 マックスの問に、大老は応えなかった。
 代わりに、苦笑とも微笑ともつかない、曖昧な笑みを浮かべた。


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