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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

66忠実EOのオメガSSその11 ◆8G/OIpNBb2:2006/10/05(木) 20:37:09
 かつてない速度でパネルを叩き、解除キーを入力、シャッターを開けようとしたが――頭部COMは無情の宣告をした。

『ゲートが動作しません』

 足下に、ぽっかりと穴が開いた。
 その深い深い穴に、落ちていく感覚。
 もう戻れない。
 オメガは絶叫した。
 背後からは、今もファシネイターが近づいてくる。
「……なぜだ」
 クラウンクラウンが、ファシネイターに向き直った。
 もはや決着はついていたが、ファシネイターは気を緩めず、ブースト全開で突っ込んでくる。
 その左腕部からは、すでに真っ青なブレードが伸ばされていた。
 逃げられない。
 背後には壁、かといって左右に逃げる余裕もない。ついでに言えば、それだけの気概もない。
 ファシネイターが、ブレードを大きく振りかぶる。
『……死ね』
 ファシネイターから、厳かな声が来た。
 と同時に、ブレードが振られる。眩いブルーの輝きが、メインモニターを埋め尽くした。
 その死の瞬間――オメガに訪れたのは、恐怖でも、怒りでもなかった。
 胸中に吹き荒れたのは――寒々とした虚無だった。
 言い残す言葉も、別れを惜しむ人も、何もない。
 何も残さず、何も与えず、消えていく。
 それが、生の終わりに顧みた《かえりみた》、オメガの人生の全てだった。
 ――寒い。
 思った途端、その音はやってきた。
 ガシャン、という車の衝突にも似た金属音だ。
 間違っても――ブレードで金属が溶ける音ではない。
(……何だ?)
 思い、オメガはメインモニターを確認し――ぎょっとした。
 クラウンクラウンの腕が、ファシネイターの左腕を掴み、押し戻そうとしていた。


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