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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」
64
:
忠実EOのオメガSSその9
◆8G/OIpNBb2
:2006/10/05(木) 20:35:55
「……オメガは、姿勢に力がない。これは、結局最後まで変わらなかった」
それを観つつ、大老は呟いた。
「奴は、戦いと本気で向き合っていない。殺人に快楽を覚えるのは、奴の勝手だ。
だが少なくとも、奴には真摯さが足りない。
相手への怨念が足りない。これでは、腹を括って闘いに挑む、本物のレイヴンには及ばない」
厳しい評価だった。
だが、現実である。オメガがムームやガルムに気圧されたのは、まさにこの『覚悟』の違いだったのだろう。
もっとも、先の戦いの後半では、オメガにも若干の気迫があったが――それは『逆上』と呼ばれるものだ。
無力だと信じ込んでいた獲物に、噛みつかれ、プライドを傷つけられる。そしてキレた。
それだけの話なのだ。
『覚悟』とはほど遠い。
マックスが付け加えるように、
「『チップ』は? オメガには、それがあるんだろ、予知能力が」
「……そんなもの当てにならん」
大老は吐き捨てるように言った。
「映像を見て、分かった。オメガに載っている『チップ』は、ナインボールや管理者無人ACのに比べると、遙かに不出来だ。
あれで動きが予測できるのは、せいぜいMTか下位のレイヴンだけだ。
敢えて言おう、俺でも勝てる」
「……でも、ガルムに勝ったんだろ? ガルムは腕利きじゃないのか?」
「思い出せ。ガルムはムームを庇ってしまった。それで動きが、MT並に直線的になっていた。
恐らく奴一人であれば、決して遅れは取らなかっただろう」
大老の言葉に応じるように、クラウンクラウンの左腕が千切れた。どうやら、またブレードで斬られたらしい。
手も足も出ないとはこのことだった。
「……オメガ自身の技術も、未熟だ。そして頼みの『チップ』も、役立たずであることが分かった。
もっと早い段階で、腕利きのレイヴンと当たっていれば、化けの皮も剥がれたのだろうが……」
容赦のない大老に、マックスは尋ねた。
「……つまり、勝てない?」
「そうだ。技術も、精神力もない男だ。奴にあるのは、せいぜい――」
大老は、自身の胸ぐらの辺りに手をやった。
少し前、オメガに掴まれた場所だった。あれから随分時間が経ったが、未だに掴みかかられた感触が残っている。
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