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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

636隊長:2012/06/07(木) 04:27:22
ぼぅと照らされ輪郭がぼやけるランタンの持ち手、ローザはゆっくりと天井付きのベッドへ近付き厚手のシーツに顔を埋めるマリーの下へ。
先ほどまで座っていた椅子を手繰り寄せるとそこに座り近くの机にランタンを置いた。
目が明かりに慣れてしまうと光に照らされている部分しか目に入らず、まるでそこだけが浮き上がるような不思議な感覚。
雨や雷も遥か遠くから聞こえるかのように小さくなっていくような……。
最後にローザは煙草を取り出した。乾いた香草が火を通し、燻された落ち着きのある香りを漂わせる。
肺に溜め込んだ炙り香をゆっくりと吹き、頭をくるりと回すような感覚を楽しみながら灰皿代わりの空き缶をトンと叩く。
ぽとりと落ちた灰の音、雨が壁を叩く音はそれよりも小さく、風に揺れる何かが規則的にキィと続ける。
やっと安心したマリーは嬉しそうに顔を出した。
「何か、話してくれませんか?」
まるきり子供みたいに催促するマリーにローザは咥えたタバコ揺らしながら、わがままな奴だと笑う。
そのまま二人は他愛もない話しに熱を出した。
この嵐がガレージを揺らしている間は―
ランタンの灯りが消されるまでのは間は――
どちらかが寝息を立ててしまうまでの間は―――
狭くてちっぽけで静かで優しい火に照らされた空間で、二人は話しを続けたのだ。
気付けばだらしなく頬に涎を垂らして眠るマリー、ポケットからハンカチを取り出し拭いやるローザはそのまま通信機の子機を持って部屋を出た。
マリーが起きる頃には、この嵐も終わっていることだろう。「おやすみマリー」ローザは静かに言った。


おわり


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