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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

635隊長:2012/06/07(木) 04:26:50
防護シャッターを力強く叩くのは暴風、雨はもはや水の塊をぶつけるようで途切れたと思えばまたびしゃりと被せられる。
絶え間なく続く雨音から時折雷が申し訳程度に響き鳴く。
そんな音に耳をそば立てずとも聞いてしまう二人、ローザとマリーは自分達の扱う居住スペースを兼ねたガレージにて防水対策をと一頻り駆け回った後の休憩中だった。
2段構造の下段ひとつ丸々を使ったガレージスペースに納まった2機のAC、その足元には薄らと水が張っているがACそれぞれの脚計6本はビニルでしっかりと包まれていた。
上段には後付で取り付けられた寝室が2つ、その片方では特に何をするでもない少女ローザが部屋の明かりを消してはその瞳を閉じている。
が、別に寝ているワケではない。子供のような見た目の彼女も優秀なミグラント、現在は緊急時の待機中であるが睡眠なしでの仕事など手馴れたものだ。
無論この程度の事で御呼びが掛かることもないとわかりきっているので、無駄な洗浄の手間をなくすためACには防水ビニルを張っているという事。
彼女が起きているのは形式的な無線への応答がためでしかない。
そんなローザの待機する部屋の戸を叩くのはローザよりも歳相応の容姿を持つ女性マリー、「起きてますか?」の言葉と共に返答を待つ。
数秒の沈黙はその言葉がローザに届いていないからではない、悪い癖なのだ。諦めて自室に戻ろうとする足音を確認してから少女は言う。
「用があるなら入ればいいだろう」
雨の音に言葉を持っていかれたか心配であったが、ゆっくりと開いた戸にその心配を投げ捨てた。
寝巻き姿のマリーを暗がりのなかで薄らと目視し、また瞳を閉じる。電気は付けないんですか?とマリー、静かにあぁと答え部屋に入るよう言ったローザは何処か嬉しそうだ。
戸を閉じるなりローザのベッドに潜り込むマリー、通信機の前に座るローザは特に何を言うでもなし。
少女は知っていた。マリーはこういう騒がしい夜が恐い事を。弾丸や爆発が響く戦場の夜には慣れていても、時になんてことのない物音にビクつく人が居る。
それがミグラントであろうと別段珍しいとは思わない。可笑しなものにすら恐怖する兵を幾人も知っているからこそだった。
一見子供のような自分の部屋に寝にくるというのも可笑しな話だな。そんな風に笑うのはローザ、ベッドからコチラを見やるマリーに気付かれぬよう肩を震わせた。
こんな時くらい素直に迎えてやろうと立ち上がり、飾り気も色気もない部屋の隅から持ち出した古びたランタン。
どこかアンティークともガラクタとも言えるそれに1本のマッチが灯すのは、暗がりの狭い部屋をやんわりと包む優しい火。


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