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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

632隊長:2012/06/07(木) 04:25:19

「優しい火」


多色の油絵ノ具で塗り潰したような不快な空だった。見上げれば渦巻く濁り色の雲が視界いっぱいに広がっている。
時折覗かせる発光色は緑に垂らした一滴の青、眩い光が教えてくれるのはそれが雷雲の塊であり、同時に幾多の汚染を運び込む物であるという事。
油気質な空気を唇にじっとりと感じる少女は何かを呟いた。
長い髪を結ってはその身に似合わぬゴツいヘルメットを被った。
見上げれば空と雲、見下せば土と水。少女の立つべく場所は回りよりもほんの少しだけ高い処。
ゴンゴンと響く足音は重金属を叩く音、近くで見れば大した事はない、少女は建物の上にでも居るのだろう。そう見える。
だが少し見方を変えるだけでソレが大きな人型の機械の上である事がわかる。錆びついた剥き出しの鉄骨が鈍く光る塔。
そこに4本の脚を絡めしがみ付いているのは、少女の身体よりも幾分大きな金属の人形なのだ。少女はその人形の調度頭の近くに足を付けている。
ボウと光る紅い4つ目に少女の身体は照らされる。

『サージェント、聞こえますか?サージェント』
なんとも出入りに不便な操縦席へ腰を落ち着けた頃、少女に対して投げかけられたのは女性の言葉と少女の呼び名だった。
この声を聞くと意地悪くなってしまう自分に気付きながらも抑えを効かせる。
「マリー、聞こえてるから喧しく続けるな」
応える言葉はどこか冷たい。関係はないが、少女は見た目よりも随分とハスキーな声だった。
マリーと呼ばれた通信機の向こう側の女性はいつもの事のように二つ返事ですいません。それから言葉を紡ぐように続ける。
『この周辺の避難は終わりました。区画の避難所からも確認が取れて、漏れもないとのことです』
御苦労と少女からマリーへ、そうとわかればと言うように、鉄塔に貼り付く機械人形は脚部の固定金具を外し特徴的な4本脚で地を叩いた。


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