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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

630隊長:2012/04/16(月) 19:31:27
コロニーの外から坦々と続く物資搬送用の大型列車用路線。
幾つかある内のひとつの防護扉の近くまで行くと植物に侵食されず生き残ったコンソールがちらほら。
教えられた手順でそれらを叩くと蒸気と共に分厚い扉が解放、むせかえる中ですぐ横を通過する運搬列車の梯子を掴んだ。
荷台部によじ登り列車の運んできた物が丁寧にシートで被われているのを目にした。頑丈なロープで固定されている部分の一部を解くのに苦戦しながらも、男はやっとこシートの下に潜り込む。
数十秒という沈黙の後で響くような唸り声と共に保護シートを突き破って出てきたのは、真っ赤なフレームに青の瞳を煌々とさせる重量級人型兵器。
肩部装甲に駒のエンブレムが静かに覗く二脚型AC戒世の姿。
「システムは敵が来るまでの間弄らないでおくよ、あんまり煩いのも此処では似合わない」
ロマンチストなんですね、なんていうオペレーターの皮肉も笑って返す。
ACという大型兵器の眼を通して見るこの廃街も、なんと味のあるものだろうか。と、レイヴンであるハングマンは同じくレイヴンであった何処か東洋のレイヴンが言っていた褒めの言葉を真似てみるのだった。
路線を離れ街並みの方へ、下層に踏みいれた脚先は機械の神経を通してもわかる冷たい水。藻を踏み締めたようにヌルリと揺れる度、水面は慌しく波紋をたて、魚達が逃げていく。
こんな場所で撃ち合いになるのか、そう考えるとなんだか残念で仕方ない。物憂げな表情だけなら耳の向こうの女性にも怒られないかなと皺を寄せる。

『……さんざ気を張った物言いをして申し訳ないんですが…』
どうしたと聞きやると、女性はどもりながらも続けた。
『こないかもしれません……敵部隊』
どうやら作戦目標は他所の部隊とぶつかって交戦真っ只中のようで、言い訳と焦りで早口に、ごにょごにょと漏らす謝罪の言葉を並べるオペレーターが可愛らしい。
ACまで持ち出したにも関わらずだが、こんな結果も悪くない。そんな表情で相手を許した気になるも、少しばかり我侭を言ってやろうとハングマン。
「申し訳ないと思うなら、もう少しだけさ…ここの電気通しておいてくれ」
勿論ですともの女性の言葉も聞かずに戒世のコックピットから這い出るハングマン。ACの出入り口となるゴツい可動装甲を元の位置に戻すとそのままACの上で眠るように寛いだ。
撫で行く風の匂いを楽しみながら、レイヴンは愛機と共に幻想世界の夢を見る。


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