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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

63忠実EOのオメガSSその8 ◆8G/OIpNBb2:2006/10/05(木) 20:35:15
     *


 オメガの戦場から数一〇キロも離れた、バーテックスの拠点。
 烏大老はそこの通路で、携帯テレビを眺めていた。
 傍目には、ただ単に壁に背を預け、映画でも観ているように思える。
 しかし、大老が観ているのはそれではない。
 携帯テレビの小さな画面は、今まさに資材保管区で展開されている、オメガとファシネイターの戦いを映している。
 現地の映像が、この小型テレビに転送されているのだ。
(……やはり、厳しいか。ガルムとムームを倒したというから、『底力』の方には少しは期待したのだが……)
 一部始終を眺め、大老は鼻を鳴らした。
 丁度、オメガがファシネイターに斬られる所だった。これで、二度目である。
 開始直後に一回、その攻勢から逃げようとしたところを、追撃されてもう一回。
 無様なものだった。
「まぁ、こんなものか……」
 失望と安堵を半々に、大老は息を落とした。
 と、横から声をかけられる。
「よお」
「……マックスか」
 軽々しい挨拶に、大老は声だけで応じた。その間も、視線は画面を見つめたままだ。
 マックスと呼ばれた壮年の男は、小さく笑うと、大老にそっと問いかける。
「……で、どうだ。オメガは」
 マックスは、大老のオペレーターだった。組んで数十年になる。
 そして彼ら二人は、ジャック・Oの真意を知る数少ない人間だった。
 オメガの戦いを監視するのも、ジャックの真意――すなわち、『ドミナント選定』絡みの話である。
「……俺的には」
 マックスは続けて言った。
「オメガがドミナントっていうのはどうにも信じがたい。
大老、実際のところはどうだ」
「……だめだな」
 断言にも、マックスは動じなかった。
「だめか」
「そうだ」
「……やっぱりな」
 マックスが肩をすくめて見せた。
 そのタイミングで、画面の中でクラウンクラウンが斬られた。三度目だ。頭部を吹き飛ばされ、逆関節のACは慌てて距離を取る。


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