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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

622隊長:2011/11/21(月) 15:25:43

「告げる烏の広げた羽よ」


荒れた地表に転がる骸を数えるのはやめておいた方がいい。
貴方の指の数が百を超えているのなら止めはしないが、数えている最中に風が骸の数を増やすことも忘れずに。
それでも貴方がこの山のような亡骸を端から数えていこうというのなら最後にひとつだけ。
眼前に広がるこの骸の敷物に〝端〟は存在しない。数えるのならいっそのこと適当に数を言えばいい。
安心してほしい間違えることは決してない、何故ならこの世界でどこの誰に聞こうと亡者の数を正確に言い当てられる者などいないのだから。
賢者の烏は告げる。
「我々の築いた屍の荒野、硝煙の楽譜、鋼の城――
 それらはとうに崩れ消えた。烏は世界から呪われたのだ。我々は眼を瞑り境遇に嘆くこともできん、何故なら企業の騎士連にその首を狙われているから
 私の目は眠ることを忘れた、今は敵に見つかる前に見つけるためだけに働く。私の羽は飛ぶことを忘れた、今はただこの武器に弾を込めるのみよ」
紅い瞳に映る世界を彼等はただ焼き付けるのみ。
今に始まったことではない、烏は世界からその姿を忘れられる存在にある。
企業と呼ばれる人々の城、そこに住まう者達が烏から騎士へと変わったのが全ての終わりであり始まり。
烏は己のため、騎士は人々のためにその剣を振るう。どちらが世界に呼ばれ住まうべきかは一目瞭然なのだ。
力無き烏は羽を広げる前に騎士の剣によりその嘴を絶たれその胸の内の心を貫かれた。
力在る烏は羽を広げず立ちはだかる騎士の軍勢に牙を向け羽を散らしていった。
烏もまた、眼前の骸のひとつでしかない。
空を舞う影はなし、地に落ちる一枚の羽もまた消えた。


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