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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

620隊長:2011/11/21(月) 15:19:39

「寒冷基地」


吐息が白い。
それがまるで自分のものではないようだと思いながら男は眼前の雪景色に溶けていく息に気を取られていた。
寒さは感じない、脳が拒み身体がその指令を受け入れたせいだ。けして病気ではないが普通でもない。
しかしそんなことが当たり前の身体を持つ男にとって、寒いと感じないながらも口から漏れる白い息が珍しい。

少しして、男は思い出したかのように、それでいて忘れていたワケではないと言うように脚を動かしたのだ。
男の横には大型の輸送トラクター、息に見入っていた間に既に半分が凍りついたかのように雪に埋もれている。その荷台部へと歩いていく男は横目に辺りの光景を目にするのだ。
風は強く、雪と霙が地面を薙ぎ払うような世界。
空は灰色に濁り積もる雪との境界は潰され、建造物のない広大な原は数キロ先を眼に納めることも許さなかった。
初めて目にするシベリアの地、聞かされてはいたが此処まで酷い環境とは…男は心内に呟いた。
梯子を上り荷台上で変形したまま凍ったシートに手をやる、悲惨にもこの寒さにその素材を酷く劣化させているようで力を加えて引っ張ろうとすればガサガサと手元から崩れていく。
「トラクターも駄目、シートも駄目…」
愚痴が漏れ同時に白い息も漏れる。
しかし今度は眼を奪われずに済んだ、眉間に寄った皺がもっともな理由。
シートの山をずんずんと登っていく。その際踏み付けた部分からシートは崩れ、その内側に被うものが少しだけ覗いて見えた。
その内に目的の高さまで達するとシートを崩し崩しにその内側へと潜り込んで行く。

それから間もなく。
シートの下から唸るような重音、シート全体が揺れたかと思うと凍ったソレら崩しながら被われたものが起き上がったのだ。
氷まじりの風に影が浮かぶ、巨人。いや、大きな人の形をした何か。
鈍く紅い眼光に冷えた身体を慣れさせるかのような唸り。トラクターを踏み潰した巨人は灰色の中にその姿を消した。


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