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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

610隊長:2011/11/06(日) 13:43:31
足を滑らせた。
雨で濡れたこの場所を短い足で歩くのは困難だろう。
だがそれでも、少女は足を止めない。疲れで既に震える足に鞭を、少女の顔は苦痛で歪むも歯を食い縛り強がり。
最早顔を流れる涙は雨と混じり見分けなどつかない。しかし消えることはない、少女の瞳からはずぅっと流れ続けている。

「……エヴァンジェ」
「すまん、格好付けてみたがやはり負けてしまったよ」

突如聞こえた、ずっと求めていた声が、その主が、見上げる少女を前に立っていた。
何を言うでもない、下唇をきゅっと噛み、溢れる涙や言葉にもできぬ情を、近付き、抱きしめることで我慢した。
ぼろぼろで薄汚れて雨にずぶ濡れの二人は身を寄せ合い、肩を震わせた。

「エヴァンジェの身体、つめたい…すごく、すごく冷たい。ぎゅってして、温めてあげる…から、だから!もう居なくならないで!一緒にずぅっとずぅぅっと、一緒に居てよ」

少女がひしと抱きついた男の身体の冷え、それが何を意味するかなど彼女は知る由も無い。
この時、男の腕の振るえが彼女の身体からやっと感じることのできた温もりによってのものであることだと言うのも、また同様に。

「あぁ…あぁ!誓おう!」

エヴァンジェが胸の内で叫ぶ、すまないの言葉に理由はふたつ。


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