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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

604隊長:2011/11/06(日) 13:40:52
「それでも、あの子の前でくらい格好付けたいってのはわかるよ」

何度もあの子に泣いて縋ってるから今更だけどね、と茶化すように笑う少年へと頭を上げた。
涙が浮かびながらも力強いその瞳はまっすぐに己へと向けられる。

「…そうだ、私はあの子の前で、せめて人で在りたかったんだ」
「私と同じにしてやらぬと、少女の親代わりになりたかったんだ」

認めてしまえば、何者でなくともそれはできるのだろうか?
その答えを男は知っていた。
男は確かに少女と自分を重ねていた、あまりにも似ている瞳に。
他人とは思えなかった彼女の強がりに。
同じように知らずに堕ちていくのが見えていたあの少女に。
だから、一緒に過ごす中で彼女に見られた変化、それがどうしようもなく嬉しかったのだ。

「何にもなれないのは変わらないんだな?」
「そう、でも…与えることはできる。いや、できてたよ実際に。ほら、もうひと踏ん張りするんなら急いで、今の無理矢理に引き出した獣<パルヴァライザー>は限界が近い」

人として未完成なら、それを手本にさせればいいさ
想い ――

烏として不恰好なら、不恰好なりに格好付ければいいよ
熱い想いは ――

獣として眩しいんじゃない、あの子と居る君<僕>がそう映っただけ
この想いはもう ――

できるのなら子供同士、目一杯に笑ってあげようよ
この熱い想いはもう ――

「止まらない」

男の瞳に輝くのは、青ではない。


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