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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

487隊長:2011/10/04(火) 20:10:11
暗がりに明かりがひとつ。
それに照らされるものは皺と無精髭、疲れの浮き出た曇り眼を持つ男性の顔だった。それ以外に見れるものはなく部屋の広さも、部屋にいるのかもわからない。
深く瞬く眼は何かを見るでもなく、ただ過去を、反芻するかのように昔を見つめている。そういった目だった。
あまりにも動きの見れないその顔は瞬きと僅かな呼吸を除いてまるで死んでいるかの様に、その暗がりの中で鳴り響いたアラートに気付いた時、ピクリと顎を持ち上げたのには驚くことだろう。
『レイヴン、聞こえてる?』
突如聞こえた女性の声に、レイヴンと呼ばれた男は顔の近くで指を弾いた。弾き手の近くからは電子画面がひとつふたつ、現れれば先程の声の主である女性の顔が浮かび上がった。
少し遅れたが、この男こそが〝ラストレイヴン〟と呼ばれている者であることを加えておこう。この世界で唯一にして最後の烏とされており、他者からは最強の称号を貼られ畏怖されている存在。
そんな彼は電子画面の女性と疲れた目を摩りながら話し交えた。時折聞こえてくる『寂れた街』や『武装勢力』など、聞き覚えのあるものだ。
「全滅?」
レイヴンは僅かに声を荒げた、画面の女性も同様に少々興奮の気が見れる話し方だ。そしてまた続ける。
そこからは女性の言葉を聞くたび男の瞳からは気だるさが失われ、そして輝きが見れるまでになる。余程のことを聞かされているようだった。
それに気付いた女性も勿体ぶるように言葉を濁し、レイヴンに続きを催促されては小さく笑った。
『えぇ、現地の残骸から映像データも取れた、かなり荒いし直後に撃破されているから確信を持っては言えないわ…ただ、ここまで特徴が一致するのも偶然とは思えない、多分生き残っている、貴方以外のレイヴンがね…覚えてるでしょ?彼の名前…―――』



「エヴァンジェだ、私の名は……」

あれから、少しして男は少女を見つけた。もう戻らないだろうと思っていたあの街外れ、あのレンガの道の上に彼女は腰を落ち着かせていた。
そんな少女に近付いた際、その顔に見える僅かな警戒心に心を痛めながらその少女へと名乗ったのだ。罵倒のひとつでもあるだろうと覚悟していた男を尻目に、少女はその顔から警戒の色をなくしそのまま座っている。


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