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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

485隊長:2011/10/04(火) 20:09:27
意識がこれ程ハッキリとしているのは何時ぶりだろうか、酒気すら抜け喉を通る煙草の煙がいがいがと刺激するのがはっきりと伝わることに驚いていた。
昔を思い出せば今でも痛むものを感じる、だが、あの粘り気のある暗いものに呑み込まれるような感覚は何処へやら。
何よりも、少女のことを頭に浮かべると鼓動が早くなった。良心の呵責もあるだろうがそれとは違う別の何かも感じているのは確かだった。そして、鼓動の早さは痛みにさへ変わっていく。
胸に手を置けばあの光が、その只中に感じる躍動する熱が、抑えることのできない感情がひとつの手を跳ね除けるかのように。
強く激しく、鼓動に合わせて脈打つ。あの時から変わらぬ姿を保てるが故、こうして無様な自分を見つめ続けねばならぬ元凶を。
金属の身体を拠り所に、全てを呑み込まんとし、総てを粉砕せんとし、凡てを絶望へと歩ませんとし、その身体を突き動かし続けた破壊者の血。
「何故…気が付かなかった?」
思考もそうだが、目覚めてからというもの男の身体の調子は頗る良いものであった、それは五感も例外ではないだろう。だからこそ、あるひとつの物が感じられないこの身体に対する違和感が湧いて出るのだ。恐らくは三週間前のあの時、目覚めてからずっと、こういう身体であっただろう。
どうして今更なのか。だが確信ではない、色々と疑問を残す節もあった。だが男にとっては無下にできないものだ。どうしても確かめておきたい、もしそうであるのならば、この力を、この身体を、彼女ために遣ってやりたい。
男の想いが鼓動をひとつ早くする。
「あぁ?武装勢力?それなら西のゲート抜けた何キロも先にずぅっと駐留してるよ、ここいらの難民というか浮浪者はよ、そいつらに街焼かれて逃げてきた連中なんだよ。てっきり俺はアンタも同じ部類の人間だと思ってたがね」
男は店から飛び出すと店主の指差す方へ、店主は常連である男が酒も買わずに出て行くのに口を噤むだけだった。
街のゲートをとうに過ぎたであろう、男は未だに全力で走っていた。息を切らすことなく体温を微塵も上げることなく。いや、既に体温は高い、おおよそ50度を超えているだろうか、肌に触れるべき風の感触がなく、寒さを感じないのだ。男の身体が放つ異常な〝熱〟が風の接触を身体の冷えを阻害していたから。
男の脈は既に人のそれを超えていた、胸の内が酷く痛む。表皮に透ける血管に青の脈動。その速さは正にエネルギーの循環に等しいのだ。

金属の身体を拠り所に…金属…常人にはまず縁のない強化人間用高濃度身体強化ナノマシン、循環系統を満たすそれらは吸収用の液体金属の注入において著しく活性化し怪我の治癒なども可能とする。
そしてそれは体外からの接触による吸収をも可能とし、もしその液体金属を作業用重機などから間接接触によってこの青が掌握できるのなら或いは…、そんなことを考えていた最中、あの言葉がまたも蘇り、男は口にした。
「温かいもの…
呟きは足音に消えた。


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