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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

473隊長:2011/07/17(日) 01:54:33

「避難所の灯り」


額を流れる汗は男の肉体的疲労の現れだった。
それに混じる血は男の置かれた状況を一目で理解するに事足りる。髪の生え際から流れるそれ等は男の視界を濁らせるに充分。
けれども男は安堵の笑み、笑っているのだ。軋む骨裂けた肉背負う身体をベルトで締めながら。
片手で自分の鼓動を確かめる。強く、強く脈打つのが感じられたからか、男は声を上げた。
「生き延びた!生き延びてやった!」
ぼやけた視界に気付いた男はぴしゃりと頬を打ち、身の回りを確かめた。
片手で握る操縦桿も、狭い個室一杯に広がるモニターも、それに映る個室の外の様子も、細かなスイッチの類も…全てがはっきりと見て取れる。
幾つもあるモニタの内のひとつ、広範囲索敵機の情報を映し出すものを見やる。
周辺に熱源なし。
見た目よりも頑丈な身体と自分を包む機器類の表示する情報…或いは此処まで辿り付けた運に感謝するべくか、自身を固定するベルトを緩めゆっくりと息を吐き出す。
口の中を切ったのか少量の血が涎に混じり垂れた。その内の一滴が脚を包む強化ポリマー素材のプロテクターの上に落ちるの見る。
頭を下げたからか視界が再度ぼやけるのがわかる。
「存外キツいな…情報提示申請、周辺の所属企業が展開する施設を、システムは通常、企業用信号とアラートを発信して…あとは……オートで頼む」
『了解、システム通常モード続行。キサラギの展開する施設へ――――』
電子音声の繰り返す言葉が耳を抜けていき、男は暗い穴に落ちていくのを感じた。
視界の〝もや〟は張り詰めた緊張と疲労しきった身体の悲鳴でもあるかのように。
――――ピッ!
『避難所からの信号を受信、着陸します』
寝息をたてる男の身体は揺さぶられる。
潤朱板金の巨人〝アーマードコア〟が、傷だらけの男を労わろうともせずにその間接を命一杯使って二本脚を地面に突き立てた。


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