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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

457隊長:2011/01/16(日) 19:48:26
『新しく戦術部隊に入った、ジャウザー…だったな。歓迎する、今日の演習は歓迎会だとでも思えばいい』
通信相手はえらく不機嫌なのか、元々このような喋り方なのか、メモ帳殴り書きされた〝新人を快く迎えるための挨拶〟でも読み上げるかのように淡々と言葉を並べた。
ジャウザーもジャウザーで通信から聞こえた不機嫌そうな声にビクつき、自分が何か悪いことでもしたのか考えたあと自意識過剰だと頬を張った。

広大な演習場に向かい合って立つ二機の巨人。大型の機械。人型を模した汎用兵器。この地上で最も優れた烏の翼。
アーマード・コアが今、何十にも重なる可動音を交えながら睨み合う。
片方は、右手にゴツい火器を携え、背中に幾つかの砲を背負う。その体躯は細身でありながら棘を感じさせ、何よりも青白い色合いの中で機体に落ちる影を紅いカメラアイだけが煌々としている姿が特徴的だ。
片方は、全体的にコンパクトにまとまった火器類、紫と赤は暗く派手といよりも毒々しい色合い。その中で堅牢さを感じさせながらもどこか線の細い四肢はなんとも掴めない印象があった。
青いAC、オラクルと紫のAC、ヘヴンズレイ。エヴァンジェとジャウザーは目前のACに目を走らせていた。
(…機動タイプ、動きに入られたらコッチが追いつけない。近距離持って行けるか?)
『良い機体だな』
突然の通信に度肝を抜かれるのは二度目だった、それに誉められたのだ。
ジャウザーは安堵を感じつつも続く言葉に耳を傾ける。
『えぇと…ガサガサッ、バランスよく詰まれた火器、数あるパーツからフレームチョイスも目の付け所が…ハッ!私から言わせればまずバランスが…おっと、気にするな』
どうやら本当にメモ片手に喋っていたようだ。
『好きに始めろ、私も好きに終わらせる』
本性が見えた。かなりの自信。ジャウザーはこれにこそ恐怖のようなものをを感じた。
ただの過剰な自信ではない、あの時の個人演習でみた光景がそれを証明している。
「では御言葉に甘えさせてもらいます」
頬に落ちる汗を拭いたい。ヘルメットが邪魔でそれもできない。
自分の言葉すらも恐怖で有言不実行に終わりそうだった。胃が締め付けられる。汗の臭いもACの可動音も掻き消える程煩い鼓動。
何か、何か開始の音を。彼は心の中で平静を求めタガを外す合図を待った。鼓動はゆっくりと、徐々に落ち着きを取り戻し。
ぼんやりと鼓膜を刺激する呼吸音。汗の通り過ぎる感覚。何でもいい、はっきりとした合図を。

はっきりとした―――

                   対に鼓膜を最大まで刺激しその身を奮わせたのは冷却排熱音だった。


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