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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

445隊長:2010/10/06(水) 01:04:36
今は夜、気味が悪い程真っ白い部屋も明りが消され暗闇だった。だが少女は寝付けない、実験の後はいつもそうだ。眠れば身体を取られてしまうと錯覚していたから。
この夜もいつも通り、頭の中で必死に否定の言葉を繰り返して終るものだと思っていた。その筈だった、突然部屋の明りが点るまでは。
(誰か来た?誰?また実験?やめて…やめてやめてもういじめないで)
部屋の扉が開くのを感じたが、身体が動かせないため入ってきたのが誰なのかわからなかった。首筋に慣れた感覚が押し当てられる、圧力注射。こんな遅くに投薬されることは初めてのことで彼女は脅えていた。
奇妙な出来事だった、投薬された筈なのに身体が動かせる。まるで薬が抜けたかのようだ。身体をコントロールできると知った彼女は今しがた注射を打った相手に肘打ちを喰らわせる。手応えあり、そのまま部屋の隅へと素早く動き相手をその目で捉える。
「…おじさん、なんで?」
「ガッホゴホ、いてえな畜生!そうだよ…俺だ、まず落ち着け」
脇腹を押さえながら跪くスーツの男を少女は不思議そうに見つめた。なぜ薬を中和したのか、それもこんな時間に。なによりこの男は自分を嫌っていたようなのに、今の彼からは嫌悪感が感じられないのが不思議だったから。
それによく見れば怪我をしている。首と肩から出血していた、肩の方は特に酷い。
「時間があんまりないからよく聞けよ……お前さんを今から逃がす、そのために中和剤を持ってきた。これで何時も通り動けるだろう、実践済みだしな」
肘打ちをモロに喰らった脇腹を指さして笑ってみせた。それから2〜3度咳き込みながら話を続ける。
「この部屋を監視してる連中と格納庫までの警備兵を殺っておいた、定時連絡の時間までは15分あるからそれまでは心配いらん、勿論15分を過ぎればあっという間に事態がばれるがな。そうそう、これを持ってけ俺のマスターキーだ。
コイツがあれば各ブロックが閉鎖されても隔離シャッターを開けられるし、ACの起動準備も可能だ。…ここまでいいか?」
少女が頷くのを見ると優しく微笑んだ。今まで見たこともない表情に少女は驚きを隠せなかった。そして度々咳き込む男を見て咄嗟にやってしまった肘打ちに酷い罪悪感を憶える。
「今格納庫には明日の実戦用に武器をたんまり積んだACが用意されてる、嫌かもしれんがそれに乗ってここから逃げろ。一番安全で一番確実な方法だからだ、そして乗ったらな…いいかこれだけは忘れるな、メインコードを入れろ、音声入力式だから
神経接続の前に言うだけでいいからな、ゲホッコホ…さっきのマスターキーだけでも起動できるが、それだけじゃ研究所のシステムからACを止められちまうから、絶対に入れるんだ…いいな?メインコードはマスターキーの裏に書いてあるから」
男はシャツの胸ポケットから煙草を取り出し、一本を咥えて火をつける。未だに不思議そうに見つめてくる少女に気付き口を開いた。
「理由がききてえのか?ん?」
「うん」
「なんでだろうなぁ…正直わからんよ、家族もったこともねえし娘がいたわけでもねえからな。…まぁ仕事のわりに給料悪いからそれだと思うがね。はっはっはっ…痛っ…
ほら、もう行けよ?時間がねえって言ったろって…あぁ格納庫の警備を忘れてたわ、これ使うか?」
そう言って少女の方へ伸ばす手には少女の手には大きい拳銃が握られていた。しかし少女は首を横に振る。
「それの使い方しらないからいい」
「そうか」と呟き銃を持つ手を引っ込めた男の方へ少女は歩み寄る、怪我した場所をできるだけ触らないように気を付けながら男にとって短い腕を精一杯伸ばし、男を優しく抱きしめる。
「ありがとうおじさん」
「おう、…おまえさんも生きろよ。ACで脱出できたら適当な所に捨てて自動操縦にしとけ、あとでレイヴンに追われても誤魔化せるだろうからな」
もう一度有り難うと言って部屋から出て行った少女を見えなくなるまで目で追いかけ、その後男は部屋の床へ大の字に倒れ込んだ。
「理由か、理由ねえ。案外あのクソ女の言ってることも正しいかもしれんな。馬鹿かロリコンの二択…どっちかねえ俺は。………ゴホッケホ…しっかし流石はプラスだ、あの短い手で肘打ちされただけで
内臓破裂とはなあ、肩の出血も酷いし内出血と出血多量、どっちでおっちぬかなこりゃ、はっはっはっはっ!」


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