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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

431LO隊長:2010/05/09(日) 22:21:40
上空から降り懸かるミサイル群を引き付けるように、また追手である黒いACとの距離を開けるかのように、旧式も同じくその推力を
全開まで振り絞った。
更に増した加速度を加えた上昇は、一瞬だがミサイルを置いていく。光学照準搭載の小型弾頭ミサイルは一瞬失った目標を
再確認すると同じように上昇。その後を追うレイもまた同じく上昇した。
それからだった。旧式は更にその速度を速めていき、かなり間の開いたミサイル群に向かって1発、火を噴いたリニアライフルからもう1発
の弾頭が撃ち出され、ミサイル群を迎撃。そこからさらに大きく軌道を変え小刻みに回転しながら残りのミサイル達を撃ち落していくのだ。
「あれがトップスピードかよ、なによりあんな無茶な軌道!…くそっ!!」
実力に圧倒的な差があったのを見せ付けられた、だが引くに引けなかった。
レイヴンとしてのプライド、そしてあの二人のための高額報酬。今にして思えば何故企業がコイツを潰したいのかわかる気がした。
アレは間違いなく〝イレギュラー〟、ましてや企業の都合で動いてくれないとなると相当都合の悪い存在なのだろうと。
ただ、判断を間違えた。この時点で撤退していれば、或るいわ―――。

「コイツの売りは機動性!そして旋回の早さ!」
(OBで誘いをかけてまた雲の中に入れれば、コチラが敵の上を取って摘みだ!)
背中の装甲板が口を開けるように上下に動き、中から単発の大型推力機がその姿を覗かせる。
そこから膨大な推力を吐き出した時には、旧式との距離も限りなく狭くなっていた。旧式は距離を開けるように右下に下降、そのまま
雲へと消えていく。ここまで、レイの計算通りにことは運んでいた。
大出力のブースターを切らずにコチラも同じく雲の中に消えて行く。もの凄い速さで機体に触れては後方へと流れる雲の塊を突き進み、
旧式の軌道を予測、相手が姿を現すであろう場所へと加速していった。
然程大きな雲ではない故に、彼の予測した位置は十中八九当たっていただろう。それが今までの相手なら。
雲の壁を突き抜け、再度日の光を装甲に浴びた時、彼の中ではほぼ確信していた。眼下から確実に敵が飛び出すと、そう踏んでいたのだ。
ほんの僅かな時間だった、風のそよぎがあっちからこっちに行く程度に短い、本当に僅かな時間。
それでも雲から姿を現さない旧式、そして、時機に落ちる誰かの影。
黒の装甲に少しだけ暗さを付け足すように、時機の上空から影を落とし包む。
全てが、今までが、これからが頭を過ぎるような感覚にレイは襲われていた。
自身の視線の先に落ちる汗の玉がまるで感覚と競争するかのように、ゆっくりゆっくりと落ちていく。
鳴り響くアラームは高い音の筈なのに、まるでスローで流す茶化した音楽みたいに間抜けに耳を過ぎていった。
高鳴る鼓動すら、今は止まってるかのように静かに胸を打っているのだ。

そして気付いた。相手の上を取ろうとしていた時機の上を、奴は飛んでいる。


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