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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

427LO隊長:2010/05/09(日) 22:19:50
「なんだってそんな仕事を引き受けるんだ!お前は、俺にとってもあの娘にとっても大事な存在なんだぞ?
金に困っているのなら、わざわざ土産を買ってこなくていい。金だって渡してくれる必要はない、生活が辛いのなら
わざわざそんなことしてくれなくたって良いんだ」
「お、落ち着けよ?フィル爺」
今にもテーブルを壊しかねない力で、握りこぶしを振るわせるフィルをなだめようとレイは焦っていた。
自分でも落ち着きを取り戻すよう、フィルは自分の手で顔を隠す。
「すまない、こんな偉そうなことを言える立場じゃないのにな。孫娘一人満足に食わせられない俺が
言えることじゃあないのになぁ…」
少しの間沈黙が続く、二人の呼吸の音と隙間風が抜ける音、風が壁を叩く音だけが室内を包んだ。
抑えていた手をどけ、一呼吸ついた後で、フィルは近くの棚から安酒を取り、一口煽る。
「なんでまた、そんな危ない仕事を受けたんだ?」
静寂を破ったのはフィルだった。
「言うのは恥ずかしいんだけどさ、…その、リオを学校に行かせたいんだ。それにフィル爺にももっと楽してほしい…
それには、今の俺の稼ぎと貯金じゃ少し不安で、だから依頼を受けたのかな。まぁそんなトコ」
「…断ることはできないんだな?」
「その通り、アンタだってあの娘を誰かと遊ばせたいだろ?ここじゃ友達になる子もいないし、学校はコロニーまで行かないと
ない、リオを思うなら…断らないでくれ」
とうとうフィルの皺だらけの頬を一筋の涙が落ちていった。
赤くなった鼻を啜りながら感謝と謝罪を繰り返すフィル、それを聞くのは少し恥ずかしいとレイは右手の指でこめかみをなぞった。
「ふと、思うよ。なんでお前みたいな好青年がレイヴンなんてやってるのかって…な」
「なんでだろうな?俺も不思議に思うよ」
得意気に微笑んでからレイは立ち上がる、それをお前が言うかと涙目を擦りフィルも同じように笑ってみせ、入り口まで
歩いていくレイを見送るために一緒に外へ出て行った。

ACに乗り、道路を滑走路代わり飛び立とうとするレイを見送る二人は影の下。
フィルの複雑な思いを表した目つきに気付いたレイはスピーカーの音量を上げ、二人に届くよう声を張り上げる。
『ゴメンなぁリオちゃん!次来た時はがんがん遊んでやるからな!』
そう言い残し、ブースターの出力を上げるAC。夕暮れ空に鮮やかな飛行機雲を作りあっという間に雲の向こうへと消えていった。


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