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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

423LO隊長:2010/05/09(日) 22:18:22
少女が開けてからバネの力で元の位置に戻ろうとする扉は、錆びた蝶番がキィキィと音立てている。
その扉の奥、影の落ちる店の中からしゃがれた老人の声が響いた。
「あんまり遠くに行っちゃ駄目だぞ!」
どうやら少女を心配しているらしい。
それ聞いた少女は振り返り、声の主へと聞こえるように声を張り上げた。
「近くにいるから大丈夫!」
そういうと彼女はにっこりと笑みを見せ、また鼻歌を響かせながら道路の方へとスキップしていった。
小さな足で駆けて数分の所、道の脇には小さな樽が置いてある。少女は樽に被った砂をその白い手で掃い落とし、腰掛けた。
そして彼女は、左手に抱えていた本を膝の上で開く。此処は彼女のお気に入りの場所らしい。
本は表紙が皮作りになっており、金の細文字で美しく、だがシンプルにその題を綴っている。

   〝アイラ〟

〜甲冑を纏う黒髪の少女〜

この年頃にしては珍しく、1ページぎっしりと埋める文章を苦とも思わずにすらすらと読んでいく。
時折彼女は空を見上げ、巨大な入道雲の向こうを透き通った瞳で見つめる。
1ページ1ページ丁寧に捲り、また空を見上げ、視線を本に戻す。
「わたしもこーひーを飲んでみたいなぁ」
ぼそりと呟いた、どうやら本の中の話のようだ。また1ページ捲る。
それから思い出すように空を見上げると、彼女は待ち望んでいた物を目にした。
瞳を輝かせ、見た物が嘘か幻でないかを確かめるように瞬きする。
それから開いていた本を閉じ、立ち上がって雑貨店に向かって駆け出した。

彼女の見上げていた空には飛行機雲が綺麗な線を描いている。

「おじぃちゃーん!レイ兄が来たよ!」
雑貨店の扉の前に少女が辿り着く頃、店の中に居た老人はその枯れ枝のような腕で扉を引いていた。
皺が刻まれた顔を白髪が飾り、目には穏やかさと厳しさを秘めている。
少し黄ばんだシャツにだぼだぼのオーバーオウルを着込み、厳ついブーツが床板を叩く。


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