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「vipArmoredCoreSS外伝 ヒワイナントアンテナ」

410隊長:2010/04/02(金) 12:14:57
どこか遠くから響く重低音それが一体なんなのか、MT達が気付いたのは味方が目の前で砕けた時だ。
遥か上空の天井、地平線の先の壁、先の音は未だ反響し音がどこから来たのかを探るMT乗りの耳を嘲笑う。
彼等は不運だった。
今日もいつも通りに、この水没都市で密輸される荷を確かめ、回収する。
それだけのことだった、味方のコックピットが撃ち抜かれ、砕けるまでは。
「ねぇ、グナー」
混乱しきった部隊と呼ぶには余りに少ないMTの群れ目掛け、長距離狙撃用の対AC弾頭を撃ち込む。
ビルの隙間からマズルフラッシュを覗かせぬよう慎重に選んだポジションは、見事にその光を隠してくれた。
ビルの壁から高い高い天井、そして壁、発射音が彼等の耳に届く頃には最早特定不能の反響音でしかない。
ライフル横から俳莢された空薬莢は白い蒸気と熱を纏わせ、水面に触れる瞬間ジュッと音を上げ冷えていく。
「私は魚のように静かに事を進めるべきだろうか?」
弾の直撃で破損し、自らが散らした破片と共に水の底に消えていくMTを眺めながら問う。
水に体の半分以上を浸けた状態で低くした姿勢を保つグナー、彼女が魚のようにと例えたのはコックピットにも水が入っているからだ。
ACの気密性を疑われる状況ではあるが、これは彼女が故意に水を侵入させたせいである。
彼女は狙撃時、周りの環境に馴染むことでその精神を落ち着かせているようだ。
「そろそろ消音機を使ってみるのもいいかな、と思うんの」
セミオートのライフルは射撃、俳莢、装填を繰り返し、彼女もまた射撃、反動制御、標準調整を繰り返す。
彼女はミスをせぬよう、そうは思っていなくとも長年染み付いた癖が彼女の体を動かす。
視線は一切ブレることなく、一定のリズムで繰り返し行なわれる呼吸、冷え切った鉄のような冷たい表情。
敵を確実に一撃で仕留める。機械のように同じようで少しだけ違う動作を完璧にこなしていく。
潜めた息はそのまま止まり、そのまま本当に機械になってしまうのでは思える光景だ。
時々、返事をしないグナーに語り掛けることでパクパクと動く口が彼女に生物らしさを与えていた。
死んだように暗く動かぬ目もあいまって、魚のように見える。
モニターの見つめる先には一体の敵も確認できない。
依頼は完璧に遂行されたのだ。


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